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「私は私のままでいい」日本一美しいトランスジェンダー、vanにインタビュー!

  • 2019.10.2
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毎年タイで開催される世界最大のビューティコンテスト「ミスインターナショナルクイーン」。日本予選大会でグランプリを獲得し、日本一美しいトランスジェンダーとして、2019年3月、世界大会に出場したvan(バン)さん。シューズブランド「YELLO」のプレスを務めるvanさんに、今の日本で“表に立つ仕事”を選んだ思いや今後の夢を伺いました!

――まずミスコンに出場しようと思った理由を教えてください。

東京に出てきて、何年かヘアメイクの仕事をやっていたんですけど、自分なりの目標を達成できたところで次が見えなくなったので、スパっとやめて夜の世界に入ったんです。そこで出会った先輩が私の二つ前のクイーンで。もともとそのお姉さんから一緒に大会に出ようとお誘いをいただいていたんですけど、そのときはまだ自信がなかったし、ミスコンというものに対して興味がなくて、見に行く側なら行きたいですって言っていたんです。でもいざお姉さんが出場して、世界大会まで行ってとなったら、なんだかすごい世界もあるんだなってことを、まじまじと感じたんですよ。それで今回、そのお姉さんの推しもあって、チャレンジしてみない? って感じで声をかけていただいて、ぜひやりたいですとお返事しました。私、それまでニューハーフということを、まわりにカミングアウトしてなかったんです。

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_ "Keep smiling??" 私の宝物のことば?. . #missinternationalqueen #2019 #JAPAN #van

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――ミスコンに出ることが、事実上のカミングアウトだったということですか?

そうですね。知っている人だけ知っていればいいやって感じだったんですけど、ただ地元の子とかに会うと、絶対にバレるじゃないですか。だからいつか大きい舞台とかで、カミングアウトできたらいいなって思っていたんです。ちょうどミスコン出場とYELLOの仕事を始める時期がほぼかぶって、タイミング的にもう表に出しても全然平気! って決心がついて。まわりの子に比べたら遅かったかもしれないんですけど、メンタル面の強さが備わり、自分に対して自信が持てるようになった時期でした。夜、お店でショーに出させてもらうようになってから、自分がどういうメイクをすると評判がいいかみたいな、自分の見せ方がわかってきたこともあります。こういう系統のほうがウケるみたいな方向性も絞れてきて、それがどんどん自信に変わって、今年だ! と思って挑戦しました。

――世界に挑戦してみて刺激を受けたこと、得たものはありましたか?

日本だと、日本一のニューハーフを決めましょう! みたいな感じだけど、タイだと、世界一を決める“女の戦い“。日本でいう「紅白歌合戦」みたいな視聴率の高い国民的イベントなので、ニューハーフじゃなく、“女の子”のミスコンなんです。各国の代表が自分の生命かけるくらいの本気度なので、本当に綺麗な子しかいないですし、ダンスなどの審査もあったのですが、その力の入れ方のレベルが違ったというか。そのなかにポンと投げ入れられた感じで、正直焦りはしましたけど、ここまできたからにはもうやるしかない! 持っているものを出し切るだけだって、自分を奮い立たせて、実際に出し切れた感じはありましたね。なかなかできない経験ですし、すごく楽しかったけど、ものすごく大変だった分、得たものは大きかったです。たぶん各国のクイーン、そうだと思うんですけど、大会を乗り越えたことがまた自信につながったと思います。

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_ 1日ずーっと外ロケだったから日焼け?を 我慢しての参加だったよー????? 午後からはクルーザーで水着?撮影で もー景色、夕日が綺麗すぎてやばかった?♥️ 大好きな?海に2日連続連れてきてもらえて とってもHappy??‍♀️おまけに盛れたーっ???. . #missinternationalqueen #2019 #JAPAN #Sea #swimwear #shooting #PATTAYA

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――この経験から学んだこと、新たにできた目標などはありますか?

英語をもっとやっておけばよかったと思いましたね。今後、自分が何の仕事をするにせよ、世界を視野に入れていかないと限界があると思うし、せっかく世界大会に出た経験を生かすためにも、英語は絶対勉強しようって思いました。ミスコンにはまた力をつけて自信が持てたら、リトライしたいです。今回はトップ6までいったので、気合いを入れ直して、次は世界一を目指したいですね。その前にもう一度日本一にならないといけないですけど。今年は審査員をやらせてもらうのでティアラを渡す側ですが、いつか取り戻しにいきたいな(笑)。

――ご自身の心の声に気づかれたきっかけや学生時代のことを教えてください。

たぶんニューハーフの子はみんなそうだと思うんですけど、初恋の相手が女の子ではなかったときに、どうなんだろう? と思っていたことが確信に変わるんじゃないですかね。私は幼稚園のときでした。あ、そっか、みたいな感じだったかな。そこで男の人にどう愛されたいか、だと思うんですよ。女の子として求められたいのか、男の子のままでいいから仲良くしたいのか。私の場合は女の子側でした。それがわかってからは、ある程度の年齢になって学歴がないと絶対大人にバカにされると思って、とにかく学歴がほしいと思ったんです。学生時代は大人とどう闘うかが常に頭にあって、ずっと戦闘態勢だったので、いかに簡単なルートで高卒がとれて、手に職がつけられるか、という考えにシフトしていきました。ビジュアルを整えたのも、大人に対抗するため。大人はみんな、敵だと思っていましたね。

――ご家族やお友達との関係などはどうでしたか?

私、いまだに親にも「ニューハーフになるからね」とは言っていなくて、でもこのままで実家に帰っているし、親も親で普通にナチュラルなまま。友達関係も、あまり変わらず男友達も女友達も多いほうだと思います。いつも周りの人にはすごく感謝して過ごしていますね。いろいろ乗り切っていけているのは友達のおかげ。女の子は一緒に泣いてくれるし、男友達は飲もうよって、いやなことをパッと忘れさせてくれる、本当にいい友達に出会えたことが私の強みのひとつです。そういう存在がなかったら、ポキって心が折れていると思う。

――環境としては、過ごしやすかったですか?

まわりには恵まれているけど、自分がどうしたいかがわからない時期があったんですよ。一番苦しかったのは中高の頃。私の人生、低迷していた暗黒時代です。「なんで私って、普通に生きられないんだろう? でも普通って何? わからない」みたいな。何か辛いことがあったというよりも、今後どうしていきたいのかわからずに、不安ばかりが大きくなっていって。今思えば、何がそんなに辛かったんだろうって、覚えてもないんですけど、生きていても全然いいことないって、泣き叫んでたって親にも言われます。自分との戦いでしたね。まわりの子たちはすごく普通に接してくれるけど、自分のなかの折り合いがどんどんつかなくなっていって。 生きる希望なんて何もなくて、私なんかもう死んじゃえ! みたいな気分もありました。でも今私が死んでも何も変わらない。だったら死ぬまで戦ってやる! って決めて生きてきました。

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_ YELLO PRE-ORDER EVENT IN OSAKA? 本日よりOPENしております?限定ノベルティも ご用意して皆様のお越しをお待ちいたしております♡ vanは爆発的美脚効果のTOKYO BLACK??? 着圧タイツのような履き心地で、本当に脚が 細く長くなる夢のブーツ‼︎是非お試しください‼︎‼︎ 大人気なのでお早めにっ?? 本日も20:00までお待ちしております?. . #YELLO #yelloshoes #OSAKA #MAIDOOKINI

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――そんな暗黒時代から抜け出せたきっかけはあるんですか?

ふっきれたのは学校外の友達が増えてからですね。ずっとギャルだったので、友達は柔軟性があるというか、堅苦しいことなしで包み込んでくれる感じの子が多かったんです。みんなには地元である山口から出て、東京に行くように言われて、ただまだ自信がなかったので、とりあえず福岡に行ってみようと美容の専門学校に入りました。その頃、友達がみんなアパレルをやっていたんですけど、私も女の子のブランドで働きたいって思っても、普通に断られるじゃないですか。今とは時代も違いますし。何回も何回も断られて、どうしようと思っていたときに、たまたま憧れていて好きだったブランドからお手伝いしませんか? みたいなオファーをもらって、そのあたりからバチンと振り切れたかも。期待に応えたいと思い、メイクやコーディネートも、そのブランドにマッチするように意識して、日々出社していました。必死に働いていくうちに「私は私のままでいいんだ」みたいになんとなく思い始めていたことが、認められたというか、まわりの目とかじゃなくて、自分がやりたいようにやれば、話しが変わってくるのかも! と思えたきっかけでしたね。

――vanさんにとって「ビジュアルを整える」ことの意味やこだわりは?

中高の頃、小さいままでいたいのに、どんどん背も伸びてくるのがイヤで仕方ない時期があったんですけど、伸びちゃったものは縮められないし、それならそれも武器にしようって。だったらクール系のほうが憧れてもらえるし、自分に合っていると思ったんです。私たちってやりたい仕事があっても、偏見だけで断られるじゃないですか。私もアパレルをやりたいと思って、いろいろなところにあたったけど、本名を言った時点で切られるということが何度もあって。会って話しをさせてほしいのに、ビジュアルを見る前に断られるということに納得がいかなくて、スタート地点にもいけない。女の子と同じ土俵に立てないことが悔しかったんですよ。だから絶対に文句を言わせないと思って、自分磨きして、今がある感じです。強めっぽいファッションがタイプで、ケンダル・ジェンナーがすごく好きですね。本当にスタイルいいし、すごくクールじゃないですか。ああいう系になりたいです。

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_ 皆様からの本当に沢山のお祝いのご連絡、 心から感謝してます。本当に有難うございます? インスタのコメントまだ全部見れてないので、 すごく楽しみ‼︎‼︎本当に皆様が温かくて泣ける?♥️ もー少々お待ちください!!本当に有難うございます?. . #missinternationalqueen #JAPAN #2019 #?

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――今、ジェンダーに関して悩んでいる方にアドバイスはありますか?

いろんなタイプの子がいると思うんですけど、たとえば私みたいなニューハーフだったら、「まず先輩の話をとにかく聞け、仲のいいニューハーフの友達を作れ」と言いたいですね。気持ちをわかってもらえるのとプラス、カラダの問題もあって、日本にあるガイダンスに従っていたら、どんどん男っぽくなっちゃったりするんですよ。私が一番困ったのは、そういうことに関する正しい知識がなかったこと。早めに処置をしないと間に合わないなんてネットには出てこないから、夜の世界に入って全部先輩に教えてもらったんです。だから私も正しい知識をあげられる人間になりたい。もっと名前が売れて影響力が持てるようになったら、性転換手術などについて全部わかりやすく伝えてあげたいというのが、私的には夢のひとつです。私は胸の手術も日本で行ったんですけど、死ぬほど痛いことなんて、たぶんみんな知らないと思うんですよ。私は先輩に聞いて覚悟していったからなんとか乗り切れたんですけど、知らずにいったらビックリするどころじゃないレベル。だから正しい知識やリアルな経験をもっと出していきたくて、その発信場所をSNSからなのか、TVからなのか、今は方法を模索中です。

――いろいろ発信していこうとがんばれるvanさんのモチベーションは何でしょう?

楽しいことがまだあるから、楽しいと思える間はまだがんばれる! やっと居場所を見つけたから、ここでがんばらなきゃって感じですね。暗黒の低迷期を乗り越えて、あとは笑うだけ、上がるだけ。今、YELLOというブランドをやりつつ、夜の仕事もやっていることは、どちらも私の強みだと思っています。YELLOでは、性別や国籍、体型等関係なく、仕事でパフォーマンスを発揮してくれそうな人を採用しています。自分のような境遇の人にも、たくさんチャンスがある職場にしていきたいですし、いずれは、さまざまな業界で活躍できる場所が増えればよいと考えています。ニューハーフの子が昼間の仕事につくのは難しくて、バレないように影が薄いところで生きている子のほうが多い気がするんです。人からとやかく言われずに、昼間も普通に女の子として生活していますって言える子が増えていけばいいなって思います。「そんなの言っちゃえばいいのにー!」って笑って言えるくらい、軽いノリになればいいのになって。そういう世間の目を変えたいから、「私みたいな子もいるんだぞ!」ってことを伝えたくて、表に出る仕事を選んだ感じですね。こういう思いをもっと口にしていくことで、新しいアイコンになれたらいいなと思いますし、ありがたいことに、今までできなかったことができる環境にいるので、これを機にもっと外に出て、いろんなことにチャレンジしたいかな。昔から芸能には興味があって、今後はタレントとかマルチに活躍できればいいなと思っています。

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_ 笑ってればいいことあるって? 私は悔しいことはずっと悔しい人だから。 必ずリベンジしなきゃ気が済まないの?? もっともっと自分に自信が持てるように。 前むかなきゃ????????. . #keepsmiling #JAPAN #van #QUEEN

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――では最後に、キャリア面以外での今後の夢はありますか?

絶対結婚したいです! 30歳までにはと思っていたけど、今28歳でもう無理っぽい(笑)。でも「彼氏連れておいでよ」みたいな感じの家族なので、式はしてあげたいというのが夢のひとつです。あと、いずれはジェンダーで悩んでいる子に向けての本だったり、いろいろなものをプロデュースしたいかも。自分に余裕が出てきたのもあって、そういうお子さんを持つお母さんに会って、話しをしてみたいという気持ちも出てきました。私の場合、反抗期がすごく長くて、たぶん母は辛かったと思うんですよ。恋バナはするんですけど、重い話しは全然しないんです。お互いほじくりたくはないから。そういう私だから、当事者よりお母さんに伝えたくて、それは否定しないであげてほしいということ。急に病院行こうとか、そういうことじゃなくて、もっとラフでいいと思う。重くいくと心が折れちゃう子もいるから。タイに行ってみて思ったんですけど、みんなが普通であってほしいですね。タイでは、女の子のブランドにニューハーフがいるし、日本もこんな風に世間がもっと柔らかくなれば、ニューハーフの子も笑顔で昼間、普通に働けるのになって。だって明るく、常に笑って、死ぬまで笑っていたいじゃないですか。それも私の人生、一つの目標です!

LGBTQ+の方々が昼間も働きやすく、まわりの目を気にせずに生きていける環境を作っていきたいという想いを持って、体当たりで発信しているvanさん。葛藤を乗り越えたvanさんだからこその「みんなが普通であってほしい」という言葉は、LGBTQ+の方々だけでなく、誰もが“普通”とは何かについて、考えるきっかけになるはず。ジェンダーを超えた新たなアイコンとして、“みんなが普通でいられる、柔らかな世の中”を目指すvanさんの今後の活躍に活躍に注目していきたいですね。

text:江口 暁子

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