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女優・松岡茉優さんに聞く「演じる」とは何か?

  • 2019.10.4
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国際ピアノコンクールを舞台に4人の若きピアニストたちの戦いがテーマの恩田陸の傑作『蜜蜂と遠雷』が映画化。再起をかけてコンクールに挑む主人公を演じるのは、今注目の女優松岡茉優さん。
演じるということを職業にした、俳優としての覚悟と自分軸という芯を大切にしている、松岡茉優さんの今をインタビュー。

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――今回の映画は演奏シーンがとても濃密で躍動感がありました。松岡さんはキャストが発表された際に「これは戦いだと思った」というコメントをされていますが、それはどんな思いだったんでしょうか?

「原作との戦いというと語弊があるんですけど、原作は後世に語り継がれるであろう素晴らしい名作なので、映画はどこまでそこに近づけるのか、映画としてどこまで昇華できるのか。それが戦いだったと思います。主演として亜夜を演じていたプレッシャーもありました」

――今は、どんなふうに思われていますか?

「今回、取材でいろんな方に、本当に面白かったと言っていただくことが多くてすごく幸福です。そして、何よりも一番楽しんでいただきたかった恩田陸先生が予告編でも使われている素敵なコメントを下さったんです。大好きな恩田先生が納得して下さったことは私の中でとても大きいですね。皆さんにもこの映画を通して、クラシックの素晴らしさや面白さを感じていただきたいです」

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――亜夜は天才と言われていながら、一度、表舞台から姿を消して、そして再起をかけてコンクールに挑戦します。それはすごく勇気と努力が必要ですよね。TRILLのユーザーの中には、毎日の忙しさに追われ、自分の気持ちややりたいことにふたをしてしまうという現実もあります。

「私はすごく負けず嫌いでやりたいことを諦めたことがないので、答えになるかわかりませんが……。この作品の中で亜夜は、演奏することも、音を届けることも、自分が音を感じることもひとりじゃ何もできないんだということに気付くんです。だから働く読者の皆さんがお忙しいのは承知していますけど、気持ちとして他の人に頼ったり甘えたりしてもいいのかなと思うんです。そうすると生きる上で少し楽になって助かるんじゃないでしょうか」

――やりたいことを諦めたことがないってすごいことだと思います。松岡さんご自身も他の人に頼ってしまうことはありますか?

「私自身、今回、とても余裕がなく頼りない主演だったと思うのでが、そんな中で松坂(桃李)さんが現場を盛り上げて下さって、森崎(ウィン)くんが和やかにして下さって、初めてのお芝居だった鈴鹿(央士)くんの現場で駆け回っている雰囲気にみんな癒されていて。3人に甘えたからこそ私は今回、最後まで演じられたと思っています。日常の中で誰かを頼ったり甘えるって難しいかもしれないんですけど、今日は手抜きメイクでもありかなとか、ちょっと自分を甘やかしてあげれば何かのタイミングで、再びやってみようとか挑戦してみようって思えるんじゃないでしょうか。私自身も最近、自分へ許すことが得意になったと思います。例えば、頑張ってるご褒美にバッグ買おうとか(笑)」

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――話は変わるのですが、松岡さんにとっては、演じることはどんな意味合いがありますでしょうか?

「最初は怖かったです。演技できない、怖い、できない、怖い怖い怖いって避けていたし。でもその裏返しは大好きなんだって気付いたんです。その後、18歳になって大学に進学しないでお芝居をしてご飯を食べていくと決めた時、私は歌も歌える総合職じゃなくて専門職を選択したんだという意識に変わりました。俳優で食べていくって覚悟を決めてからは「私は対価をいただいて私の全力でお芝居をして、私の100%を出しているんだから」と、周りから何を言われても、気にしなくなりました。

――そう思えるようになったのは何かきっかけがあったんですか?

「そっくりそのまま先輩の女優さんが私に言ってくれたんです(笑)。俳優という演じるお仕事をただ、全力ですればいいんだって気付きました」

――今までの人生の中で、何かを選択をするということも多かったと思います。松岡さんの中での、判断基準はどんなものでしょうか?

「そうですね、私の中で明るい方の相談は全部母に意見を聞きます。でも本当の困難というのは人には頼らないかもしれませんね。たまに相談するときは、あえてかなり遠い存在の人に聞きます。友達のお母さんとか。事情は知らないけど、その件に関しては知っているみたいな人に聞いた方が、相手も無責任でいられると思うんです。母とか友人とか近い人に聞くと私と一緒になって悩んじゃいそうというか。ただ、最終的に決めるのは自分ですね。人に決めてもらった選択は何かあったとき、人のせいにしちゃいますから」

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――では、今後松岡さんが目指したい女性像などはありますか?

「心穏やかな女性になりたいですね。三谷幸喜さんに『君は本当に性格が悪い子だな』と言われたことがありまして(笑)。まあ、自分のダメさは自分でも承知しており。刺々しいし、説教くさいし自分を棚に上げるし……。これ、最近の私の悪いところランキング上位なんですけど(笑)。だから私が憧れるのはちょっとのことでは気持ちが乱れない、いつも心穏やかな女性になりたいです」

――身近にそういう女性はいらっしゃりますか?

「そうですね、共演する作品には必ずひとりはいるなと思います。『万引き家族』だったら安藤サクラさんの穏やかさに憧れたし、『蜜蜂と遠雷』では斉藤由貴さんの女性としての強さに憧れたし、最近では白石和彌監督の『ひとよ』(11月公開)という作品で田中裕子さんのことをなんて神々しいんだと思いました。そういうありがたい先輩がいてくれるからこそ、我々後輩たちが恐れず前に進めるような気がします。とはいえ、最近は私にも後輩ができ始めているので、ちゃんと良い背中を見せていきたい。自分という軸をしっかり持って、お芝居に全力で向かっていきたいと思います」

 

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photography:Norikazu Hashimoto
Design:dely
Writing:Mayuko Kumagai
Edit:TRILL編集部