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自己破産したら奨学金はどうなる?機関保証と人的保証の違いについてFPが解説!

  • 2019.8.18
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奨学金を払うことができずに自己破産にいたってしまう人が急増しており、累計1万人を超えていると言われています。

労働者福祉中央協議会が2015年に行なった調査によると、奨学金借入額の平均は312万円とされており、500万円以上借りている学生も少なくありません。大学院まで行ってしまうと借りすぎてしまい、社会人になって返済に困窮する若者は決して少なくありません。

「奨学金を払うのが厳しい。自己破産をするしかないのか」と思いつめている人もいるのではないでしょうか?

しかし、奨学金をどのように借りたのかによって家族に迷惑がかかるかどうかが大きく異なります。それが、連帯保証人をつけたのか、機関保証を利用したのかということです。

奨学金を借りた人が自己破産をするとどうなってしまうのでしょう?機関保証をつけた場合と連帯保証人を立てた場合それぞれのケースについて具体的に解説していきます。

奨学金の機関保証と保証人制度とは?

奨学金を借りる場合には、学生個人の名義だけで借りることはできません。

奨学金は未成年の学生であっても本人名義で借りることができますが、経済力の乏しい学生単体へ融資をしてしまうと、奨学金を融資する日本学生支援機構のリスクが高くなってしまいます。

そこで、奨学金を借りる時には機関保証連帯保証人をつけるといういずれかの方法で、返済能力の乏しい学生に対する信用力を補完し、学生でもお金が借りられるようになっています。

奨学金における機関保証と連帯保証人制度について詳しく解説していきます。

機関保証とは

機関保証とは、個人ではなく保証機関が奨学金の保証を行うです。

銀行カードローンなどにおける保証会社と同じ役割で、もしも債務者が奨学金を返済することができない場合には、保証機関が日本学生支援機関へ奨学金の残金を返済します。

連帯保証人を立てる必要はありませんが、保証料を支払わなければなりません。

連帯保証人を立てない代わりに日本国際教育支援協会が保証を行う

後述しますが、奨学金の連帯保証人になるには一定の条件を満たす必要があります。

この条件を満たすことができる人がいない場合や、家族や親戚などに迷惑をかけたくないという人は、連帯保証人を立てずに、日本国際教育支援協会という保証機関に奨学金の保証をしてもらうことができます。

保証料が発生する

奨学金の保証機関である日本国際教育支援協会は無料で保証を行なってくれるわけではありません。保証をしてもらうためには保証料を払う必要があります

例えば利息の発生する第2種奨学金を月額5万円で60ヶ月借りた場合には月額2,603円の保証料(2019年度)が発生します。

連帯保証人制度とは

連帯保証人制度とは、保証機関ではなく個人が奨学金の連帯保証人になる制度です。

連帯保証人は債務者と同じ返済義務を負っているので、もしも返済できない場合には連帯保証人が奨学金を返済しなければなりません。

保証機関を立てて保証料を支払う必要はありませんが、連帯保証人になった親には奨学金を返済できない場合に、債務者と同じリスクを背負う必要が生じてしまいます。

連帯保証人には条件がある

奨学金の連帯保証人には誰もがなれるわけではありません。奨学金の連帯保証人となる人は原則として奨学金を借りる学生の「父母」とされています。父母がない場合には以下の条件を満たしている人しか連帯保証人になることができません。

  • 1.学生本人が未成年者の場合は、その親権者(親権者がいない場合は未成年後見人)であること。
  • 2.学生本人が成年者の場合はその父母。父母がいない等の場合は、学生本人の兄弟姉妹・叔父・叔母などの4親等以内の親族であること。
  • 3.未成年者および学生でないこと。
  • 4.学生本人の配偶者(婚約者)でないこと。
  • 5.債務整理中でないこと。
  • 6.貸与終了時に学生本人が満45歳を超える場合、貸与終了時に60歳未満であること。

基本的に奨学金の連帯保証人は親ですが、親がいない場合には4親等以内の親族であることが求められます

連帯保証人は借主が返済できない場合に返済義務を負う

連帯保証人は借主と全く同じ返済義務を負っていますが、実務上は借主が返済できている間は連帯保証人に請求されることはありません。

しかし、もしも返済が滞ってしまうと連帯保証人に請求が行われ、親などに大きな迷惑がかかってしまう可能性があることを理解しておきましょう。

機関保証を利用した人が奨学金の返済ができないと

機関保証を受けた人が奨学金の返済に遅れてしまうと、保証会社による代位弁済が行われ、信用情報はブラックになります。以後は保証機関である日本国際教育支援協会に返済を行なっていくことになります。

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保証機関による代位弁済で信用情報がブラックになる

一般的に2ヶ月返済が滞ると、日本学生支援機関は保証機関へ代位弁済請求を行います。代位弁済請求とは、借主の代わりに保証会社に対して融資金の残金の返済を請求することです。

代位弁済が行われた時点で信用情報はブラックとなってしまいます。信用情報がブラックになるとローンやクレジットカードの契約は不可能になってしまいます。

保証機関に返済の義務が生じる

代位弁済が行われると、保証機関が日本学生支援機構へ返済を行なってくれますが、これで借金がチャラになるわけではありません。

債権は日本学生支援機構から保証機関へ移るので、代位弁済以降は保証機関である日本国際教育支援協会へ返済を行なっていく必要があります

代位弁済の記録は信用情報にブラックとして記録されますが、この情報は保証機関への支払いを完済してから5年間保存されます。

したがって、完済までに10年かかってしまうと、合計15年間は信用情報はブラックのままです。なお、保証機関を利用した場合には連帯保証人がいるわけではないので、親などに請求が行われることはありません。

連帯保証人を立てた人が奨学金の返済ができないと

連帯保証人を立てた人が奨学金を返さないと、連帯保証人に対して請求が行われることになります。

5万円や10万円程度の金額であれば、親なら立て替えてくれるかもしれませんが、100万円を超えるような金額の請求が行われると、親も返済ができずに自己破産にいたってしまうケースも実在します。

連帯保証人に請求が行われる

前述したように、借主が返済に遅れると連帯保証人に請求が行われ、借主も連帯保証人も長期間返済をしないと、奨学金の残金の一括返済請求が行われ、連帯保証人になっている親の財産が差し押さえられてしまう可能性があります。

連帯保証人を立てて奨学金を借りた人は、返済に遅れると自分を飛び越えて親に請求が行われてしまうことがあるので、返済は責任をもって行う必要があるのです。

機関保証を受けた人が自己破産すると

「奨学金で一家全員自己破産」などと言う言葉を聞いたことがある人も多いかもしれません。しかし、機関保証を受けた人が奨学金を払えずに自己破産をしても家族にまで迷惑がかかることはあり得ません

機関保証においては、保証会社が保証をしているので、「本人と日本学生支援機構」「本人と保証機関」の関係しかありませんので、家族にまで迷惑がかかってしまうことはありません。

保証機関が奨学金を返済する

自己破産をする前は、弁護士などから債権者全員に受任通知という通知を送付します。

この通知を受け取った時点で、日本学生支援機構は保証機関へ代位弁済請求を行いますので、日本学生支援機構から保証機関へ債権は移ります。

保証機関への返済義務は消滅する

自己破産が裁判所から認められれば奨学金も免責になるので、保証機関への返済義務は消滅し奨学金の支払いから逃れることができます。

やはり、保証機関の保証を受けて奨学金を借りた場合には、自己破産をしたとしても家族に迷惑がかかることはありません。

連帯保証人を立てた人が自己破産をすると

奨学金借入時に連帯保証人を立てた人が自己破産をすると家族にまで大きな迷惑がかかってしまうということに十分に注意が必要になります。

自己破産をすると、本人の債務は免責されるかもしれませんが、連帯保証人に対しては請求が行われることになります。これが「奨学金の返済不能で一家全員自己破産」になってしまう最大のリスクです。

連帯保証人を立てた人が自己破産をした場合にはどのような流れで家族に迷惑がかかってしまうのか、詳しく見ていきましょう。

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親などの連帯保証人に請求が行われる

自己破産をすると、本人の奨学金は免責になりますが、親の連帯保証人としての義務は残ります。そこで、日本学生支援機構は連帯保証人である親に対して一括返済請求を行います。

自己破産して借金から逃げることができるのは債務者本人だけで、連帯保証人には債務の返済請求が行われるということは十分に理解しておきましょう。

親が返済できないと家族で自己破産になることも

債務者の自己破産後に連帯保証人である親に請求が行った時、親にも返済能力がなければ、親も自己破産するしかない事態に陥ってしまう可能性は十分にあります。

これが「奨学金の返済ができずに一家全員自己破産」となってしまうケースです。

奨学金だけではないですが、連帯保証人を立てた借金を抱えたまま自己破産をすると連帯保証人への迷惑は避けられないということはよく覚えておくようにしてください。

借金総額を減らす方法は自己破産だけではない

自己破産は数ある借金整理の方法である債務整理の中の1つにすぎません。

奨学金を返済することができない理由は様々で、もしかしたら他の借金を抱えて返済に追われている人もいるかもしれません。

このような場合には債務整理によって他の借金を減額すれば奨学金の支払いができるようになる可能性があります。

状況に合わせてどの方法が最適なのか、連帯保証人に迷惑をかけないのはどの方法なのか、ということについてはプロと相談した方がよいでしょう。

奨学金は個人再生の対象になるが・・・

個人再生とは住宅などの財産を残したまま借金を原則3年以内に返済できるように減額させる方法です。奨学金は個人再生の対象になるので、個人再生が裁判所に認められれば奨学金を減額させることも可能です。

しかし、連帯保証人を立てて奨学金を借りている人は、やはり連帯保証人への迷惑を避けて通ることはできません。

連帯保証人の保証債務まで減額されるわけではない

個人再生によって奨学金を減額させることができたとしても、連帯保証人の支払い義務まで減額されるわけではありません

例えば500万円の奨学金が100万円に減額されたとしても、連帯保証人には500万円の借金を保証する義務が残ってしまうのです。

後悔しないためにはまずはプロに相談を!

このように、連帯保証人を立てて奨学金を借りた場合には、自己破産にせよ個人再生にせよ連帯保証人への迷惑を避けることはできません

まとめ

連帯保証人を立てて奨学金を借りてしまうと、自己破産をしても連帯保証人である家族に請求が行われてしまい、一家全員で自己破産になってしまうケースもあります。

奨学金は借りる時に本当に返済することができるかどうかということまでよく考えてから借りないと、返済が始まってから大変になってしまいます。

連帯保証人を立てて奨学金を借りると、本人は自己破産や個人再生などで奨学金の返済から逃れることができたとしても連帯保証人は保証義務から逃れることはできません

奨学金以外の借金の返済で困っているのであれば、債務整理を行えば借金が減額できる可能性もあるので、まずは一度プロの法律事務所へ相談してみるのがよいでしょう。

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