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サラリーマン特有の鬱!? “こころの定年”を克服できる転身のススメ3選

  • 2015.3.25
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【女性からのご相談】

40代の主婦です。公務員の夫がうつになり、精神科を受診したところ、「はやりの言葉で言うところの“こころの定年”状態」だとのことでした。 主治医の説明では、「現市長の方針に賛同できず、もう市庁舎に登庁する意味が見いだせない」といった精神状態だとのことです。

でも、夫に公務員を辞められたらわが家の家計は破綻です。ここまでの退職金は出るにしても、高校生と中学生の子どもたちの教育費のことを考えても大変不安です。精神科では抗うつ剤を処方されましたが薬で本質的に解決するとは思えず、夫にはどのようなアドバイスが有効なのでしょうか。

●A. “こころの定年”克服には、後半の人生を楽しむために“過去の夢”を復活させる力がある。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

“こころの定年”とは、元関西大学非常勤講師の評論家で現役サラリーマンでもある楠木新(くすのき・あらた)さんが提唱した概念で、サラリーマンが(60歳とか65歳とかの)実際の定年を迎えるより前に会社で働く意味を見失い、意欲を喪失する状態のことです。提唱者の楠木氏によれば、40代の男性が特に陥りやすいとされています。

楠木氏は延べ150人を超える“こころの定年によるうつ状態”から脱却した人たちへの取材を通して、こころの定年状態を克服するには“過去の夢”を復活させて“もう一人の自分”をつくり、会社や組織といったものを客観的に見れるようになることこそが、最も有効な処方箋であるとしています。

以下、都内でメンタルクリニックを開業する精神科医師に伺ったお話を参考にして、記述をすすめさせていただきます。

●“こころの定年”が来てしまうのはサラリーマン特有の“交換可能性”に気づいたとき

『19世紀の末から20世紀初頭にかけて膨大な業績を残したドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、私たちが生きている近代という時代の大きな組織のサラリーマンや公務員の仕事は、どれも“交換が可能”“代替が可能”であることを指摘しました。同時にウェーバーは、組織を構成する“アパラート”(装置のこと)としての一人ひとりのサラリーマンや公務員には現状を本質的に打破して新たな方向性を指し示すことは不可能で、それができるのは唯一、頂点にたつ“ヘル”(いわゆる“トップ”のこと)のみであることをも指摘しています。

理想を持って公務員になられたご相談者さまの旦那さまは、その理想ゆえに、最初から冷めていた同僚の人たちと違い40代にして、ご自分が“代替可能”な“現市長の装置”であることに気づいてしまい、“こころの定年”が来てしまったと言うことができます』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医師)

●収入は減少しているのに“いい顔”をしている転身者たちの共通点

精神科医が指摘するように、大きな官僚制組織の一歯車では、女性に比べて日常生活そのものを楽しむことが下手な男性は、“こころの定年”に陥りやすいと言えます。

楠木新さんはある時期、サラリーマンから他の世界に転身して活躍している人たちが、収入はサラリーマン時代より減っているのに“いい顔”をしていることに気づいて、転身した人々にインタビューしているうちにその多くが、“こころの定年”を迎えてそこから脱出するために、“昔好きだった世界”で“一国一城の主”に転身しているという共通点を発見したといいます。

つまり、“装置”から、小さくても“ヘル(一国一城の主)”に転身したというわけです。

延べ150人を超える取材で楠木さんが出会った実例としては、次のようなものがあります。

・公務員→耳かき(竹細工)職人

・鉄鋼会社社員→蕎麦屋開業

・NHK記者→落語家

・製薬会社の営業→釣具店開業

・NTT職員→提灯(ちょうちん)職人

・小学校の先生→市会議員

・市役所職員→大道芸人

・ゼネコン社員→社会保険労務士(独立開業)

●過去の夢を実現させてお金を稼げるようになれば、組織は辞めないでも“いい顔”になれる

そうはいっても、「転身して“いい顔”になってくれるのはうれしいけれど、今いる組織を辞めてほしくはない。辞めるのはリスクが大きすぎる」という気持ちは、世の奥さまがたに共通した思いでしょう。

まったくその通りであり、“もう一人の自分”に転身し、会社勤め・お役所勤め以外のことでお金を稼げるようになれば、『自分が世の中に認められたことを実感できる』(楠木新氏)ため、組織で働く意味が見出せなくなってしまったとしても、冷めた目を持って出勤を続けることができるようになります。

『転身を果たせば、ご相談者さまの旦那さまも、現市長の考え方に賛成はできなくても許容をすることはできるようになります。「自分の本業は役所仕事の方ではない」という気持ちで、お役所の職務を没主観的に黙々と、淡々と、定時が来るまで遂行することができるようになります。

公務員を続けている以上は、現市長をヘル(トップ)とした行政“装置”の精巧な一歯車であらねばなりませんから、こうした態度で“本当の定年”が訪れる日まで、勤めつづければよいわけです。それでも現市長に対する闘志が燃えてやまず、旦那さまが考える市政を実現なさりたいのであれば、旦那さまご自身が市長選挙に立候補して現職の市長さんと直接戦うしかありません』(50代女性/前出・精神科医師)

●誰にでもあった“若いころの夢”から見つける“もう一人の自分”3選

それでは、こころの定年を迎えてしまった人におススメの、誰にでもあった“若いころの夢”からたどって見つける“転身例”を3つほどご提唱させていただくことにしましょう。

●(1)キャラクターデザイナー・ロゴマーククリエイター・挿絵画家

まるで絵心のない方には無理ですが、若いころ、美術的な技能で生計を立てたいと考えて真剣に取り組んでいた時代があったかたには、おススメです。今、いわゆるクラウドソーシングのサイトを開けばこのような仕事の案件はたくさん載っています。

●(2)作曲家

これも、まるっきり音楽と無縁で生きてこられたかたには難しいですが、業務委託の仕事の求人サイトを開けば校歌の作曲やゲームのBGMの作曲などの仕事の依頼情報が目白押しです。こころの定年を迎えて、「俺、本当は音楽で身を立てたかったんだよなあ」と思ったかたは、今からでも遅くありません。チャレンジしてみましょう。

●(3)コピーライター・フリーライター

(1)や(2)に比べれば専門性が低く、“好き”でさえあればどなたでも転身可能な分野です。長編の小説やルポルタージュを書き上げる自信はなくてもちょっとした思いつきやアイデアを短い文章にすることを楽しめる人なら今すぐにでも収入につなげることができます。

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私の場合、“こころの定年”とはちょっと違いますが、これまでの人生で大きな組織を二度脱退し、自分で運営していた組織を一度解散した経験を持っています。

そうして“完全フリーエージェント”の状態になったとき、上記でいう(3)のような“短文書き”の仕事である程度の収入を得ることができて経済的にも助かると同時に次のステップに踏み出すうえでの大きな自信につながりました。

ご相談者さまの旦那さまも、ご自分がいちばん好きだったことを思い出し、行動に移してみれば思ったよりも早く収入につながることがおわかりいただけるかと思います。それをコツコツつづけて行くうちに、「お役所の仕事は家族の生活のため。自分の本業はクリエイターで、俺は一国一城の主」といった自信が持てるようになるはずです。

多少なりともご参考になれば、うれしく思います。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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