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今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ

  • 2019.7.19
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ノスタルジーを伴って、甘く儚く過ぎていく季節。イラストレーター・ヤベミユキさんが、街で見かけた絞り浴衣の人から、五感で夏を満喫する過ごし方を考えます。今年の夏は、懐かしい景色に眠っている大切なものを探しに行きませんか。

街を歩いていて目を引くあの人。なぜその人に惹かれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。その人からイメージをふくらませて、素敵な生活を想像してみた。

■絞り浴衣とまとめた黒髪が美しい人

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先日、小雨の降る街で見かけた、絞り浴衣とミニマムにまとめた黒髪が印象的な人。

古典的な絞りの浴衣は、むら染めが織りなす模様が美しく、それが上質なものだということが伺える。
涼やかな藍色の配色に赤の帯がドラマチックでいい。

モスグリーンの傘や、アートな香りのかごバッグなど、モダンな小物使いが目を引き、彼女はデイリーではどのようなスタイルに合わせるのだろうと想像が膨らむ。

美しい浴衣と裏腹に、整えすぎていないナチュラルな眉や血色だけ与えたようなメイク。
ミニマムにまとめられたヘアからは一粒のパールが覗く。

その日はたしか、花火大会の予定もなく、浴衣を着ているのは彼女だけ。
彼女はなんのために浴衣を着て出かけたのだろう。

いや、もしかしたら「ちょっと浴衣でも着て行こうか」くらいの気持ちだったのかもしれない。

「いい歳して、張り切って浴衣を着るなんて恥ずかしい」
家族が何気なしに水をさした一言。

そんな一言に勝手に縛られてきた私は、浴衣も水着もここ何年も新調していない。

今年の夏は紛れもなく人生で一度きりなのだ。
彼女のように、日本の夏を楽しめたならどんなにいいだろう。

■甘く、儚く、懐かしい。日本の夏をめいっぱい楽しむ

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そう、たとえば。

風鈴の音色に耳を傾け、聴覚から「涼」を感じてみる。
閉め切ってばかりいるのをやめて、朝だけでも窓を開け、風が通る感覚を感じる。

自分自身が大きな自然の中にいることを体感すると、悩みもちっぽけに感じるかもしれません。

リネンのナチュラルなしわやシャリ感を楽しむのも、夏ならでは。
ひんやりとした質感や、肌の中を空気が通り抜ける感覚は心地よく、心までナチュラルになる。
(夏の終わりにはリネンが似合う女性になりたいものです)

ところで、夏休みは帰省しますか?

帰省できなかったら、日本の田舎町に行くのもいい。
幸福感は、ノスタルジーに結びついていることが多い。

懐かしい景色に大切なものが眠っていることがあるので、それを探しに行くのはどうだろう。

きれいなガラスの器を見つけたら、その器を眺めながら、冷えたトマトや氷菓子など、夏の食べ物を楽しむ。
夏の食べ物はどうしてこうもキラキラと美しいのだろう。

ちょうど、私の目の前にはかき氷がふたつ。
娘たちが思い思いのシロップをかけ、どちらの配色が美しいか競い合っている。

私は、一口ずつもらい、頬張る。
甘さだけを残し、あっという間に消えて行く。
甘く儚く、冷たい。

なんだか夏の恋みたいだ。
もう10年以上前の恋を思い出す。

花火のようにキラキラと輝いたその瞬間は現実と幻想が混沌としていて、だけどあっという間に過ぎ行き、心の中に小さな痛みが残る。
その痛みは、秋口には深みとなって多感な時期の私を成長させたものだ。

なんてことを考えながら、ふと現実に戻る。
今年は私にとってどのような夏にしたいのだろう。

やりたいことをやってみよう。

そう思い、帰省のチケットを取った。
旅行の計画も立てた。

そして、絞りの浴衣を着ようじゃないか。

水を差す家族を尻目に夏を楽しんでやると心に決め、何日もかけて探した、美しい薄紫の絞りの浴衣の購入ボタンを押した。

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