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「ディオール」メゾンコード研究 第6回 お守りみたいなジュエリー“ローズ デ ヴァン”

  • 2019.6.13
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歴史あるブランドはアイコンと呼ばれるアイテムや意匠を持ち、引き継ぐ者はそれを時代に合わせて再解釈・デザインする。アイコン誕生の背景をひもとけば、才能ある作り手たちの頭の中をのぞき、歴史を知ることができる。この連載では1946年創業の「ディオール(DIOR)」が持つ数々のアイコンを一つずつひもといてゆく。奥が深いファッションの旅へようこそ!

人は誰でも進むべき道に迷い指針を求めることがあるが、それは偉大なデザイナーや起業家といったリーダーでも同じだ。むしろ道を切り開く先駆的な人ほど、自分の背中を後押ししてくれる存在を必要としているとも言える。クリスチャン・ディオール(Christian Dior)もまた縁起を担ぐことに熱心なデザイナーだった。そもそも「ディオール」のオートクチュール・メゾンを開くことを決意したのも、パリの路上で神秘的な星のチャームを拾ったことで運命の導きを確信したからだと聞く。今回取り上げるジュエリー&ウオッチ“ロー ズ デ ヴァン(ROSE DES VENTS)”は、そんな一面に結びつくストーリーを持つ。

“ローズ デ ヴァン”の話はムッシュが幼少期を過ごしたフランス・グラン ヴィルの館に始まる。かつて船主が所有していたというその館は断崖の上に、海に面して建ち、海岸線のすぐそばをアメリカ大陸行きの船が通る。庭園にはバラが咲き、裏手の庭の池の底にはフランス語で“ローズ デ ヴァン”と呼ばれる風配図のモザイクが描かれていたという。ムッシュはとてもロマンチックかつ冒険心をかき立てる環境で創作の心を育んだのだ。“ローズ デ ヴァン”はフランス語で風配図を意味し、直訳すると風のバラとなる。放射状に広がる風配図がバラを連想させたためと言われている。

現在の「ディオール」のファインジュエリーのアーティスティック・ディレクターであるヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌ(Victoire de Castellane)は、新作ジュエリーにこの“ローズ デ ヴァン”を取り入れた。「風配図は旅のシンボルですが、このメダイヨン(メダル状のモチーフ)にはクリスチャン・ディオールのお守りであった星だけではなく、彼がことに愛したバラも折り重なっています。メゾンの歴史の全てがほのめかされているのです」とヴィクトワールは言う。アイテムはブレスレット、ネックレス、ピアスなど多彩。イエローゴールドやピンクゴールドのチェーンでつないだ繊細なメダイヨンは、マザーオブパールやピンクオパール、ラピスラズリ、ターコイズなどで作られ、人の動きに合わせて反転をする。あるときはストーンが、あるときは“ローズ デ ヴァン”が現れるジュエリーは身に着ければ、まさに人生の航路を示すコンパスような存在となるだろう。「創作することは探し求め、あれこれ考え、それから方角を示す目印を見つけ、旅に出ること。クリエイションはそこにいながら体験する旅の軌跡なのです」とヴィクトワール。ムッシュもまた、そのように考えたからこそ、このモチーフを好んだに違いない。

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