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女王蜂「こんなバンド、世界中探してもどこにもいない」結成10年を振り返る

  • 2019.5.22
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「アルバムタイトルの『十』は、はじめて楽器を持ってバンドを結成してからの“10年”でもありますし、前作『Q』に対する“十”でもありますね。『Q』が完成したとき、私たちへの風向きがかなり変わってきたと感じました。そのひとつが、女王蜂を好きと言ってくれる人がとても増えたこと。『Q』で広がったものがさらに発展して、今回は、私たちの決定打になるアルバムが作れたと思っています」

紆余曲折あっても音楽活動を握りしめ、生きてきた。

そう話すのは女王蜂のボーカル・アヴちゃん。どこにも似た人がいない独特のカリスマ性を持ち、常にスタイリッシュで妖艶で、発する言葉はインテリジェンスに溢れたアーティストだ。約2年ぶりにリリースされたアルバム『十』は、映画『貞子』にTVアニメ『どろろ』『東京種喰(トーキョーグール):re』というダークファンタジー3作への提供曲と新曲で構成される。すべてのサウンドや歌詞の端々から感じるのは、圧倒的な情熱がほとばしる人間賛歌のナンバー。聴いていて心臓の鼓動が速くなる感覚を何度もおぼえたほど、アヴちゃんのソングライターとしての力量に改めて驚かされるアルバムだ。

「貞子は両性具有的な存在だし、どろろも東京喰種も、半分人間という存在であったりと、それぞれに戦っているキャラクターたちの作品。自分自身そういう作品に引き寄せられることが多いし、私にとってはまったく無理のないアプローチでした。ただ私は職業作家ではないので、作品の意図を汲むことはできません。書き下ろしではなく、女王蜂として歌い続けていきたいと思って作った曲を、提供させていただきました」

この『十』の中で、個人的に心揺さぶられたのがタイトル曲の「十」だ。家族や郷里に別れを告げ、遠くの町に旅立つ、というテーマは普遍的なものだけど、独創性豊かな言葉で綴られるリリックに、胸が痛むほどの痛烈なセンチメンタルを感じる。

「バンドがないと生きられないというか、紆余曲折あって当たり前というか……。当然いろいろあったんですけど、乗り越えなければいけないと思って生きてきました。クリスチャンの方が苦難に遭ったとき十字架を握りしめるように、私はこの10年、音楽活動を握りしめることで、生きてこられたと思う。『十』は十字架の十でもあるし、この曲は泣くほどの悲しみを正直に込めないと、出してはいけない曲だと思っています。こんなふうに私が作った曲を、メンバーが具現化してくれることに感謝しています。前からうすうす感じていたけど、こんなバンド、世界中探してもどこにもいない。そう、胸を張って言いたいな」

New Album『十』【初回生産限定盤CD + DVD 】映画『貞子』主題歌「聖戦」など10曲入り。DVDには女王蜂主催「蜜蜂ナイト4~:re~」を収録。¥4,500 【通常盤CD】¥3,000(Sony Music Associated Records)

じょおうばち メンバーはアヴちゃん(Vo)、やしちゃん(Ba)、ルリちゃん(Dr)、ひばりくん(Gt)。2011年、『アルバム『孔雀』でデビュー。7月まで“「十」‐火炎‐”ツアー中。8/18に行われる「SUMMER SONIC 2019」に出演。

※『anan』2019年5月29日号より。写真・井手野下貴弘(HITOME) インタビュー、文・北條尚子

(by anan編集部)

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