1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. HISTORY of SUQQU

HISTORY of SUQQU

  • 2019.5.14
  • 676 views

ブランドのはじまり

SUQQUは2003年の9月に誕生した。ブランド名の由来は、「すっくとまっすぐな立ち姿」。凛と自立したしなやかな女性のイメージを縦書きのロゴにも重ね合わせている。また丸みを帯びた文字にも女性らしさが投影されており、このような欧文の縦書きというロゴデザインは、当時とてもセンセーショナルなものだった。名前からも分かるように、❝自立した大人の女性❞に向けられた先駆け的コスメブランドであり、大人の女性の美という、それまであまり謳われてこなかったコンセプトを大々的に打ち出した。
立ち上げ当初のクリエイターは田中宥久子氏。映画や映像の世界で活躍するメイクアップアーティストだった田中氏は、マイク前の俳優や女優にマッサージを施していたが、そこから生まれたのが顔筋マッサージと専用マッサージクリーム「マスキュレイト マッサージ&マスク クリーム」である。それまでの常識を覆す顔筋マッサージはデビュー当時から話題を呼び、数々のメディアで紹介された。
映像の世界にいた田中氏だけに、彼女は❝動いたときに美しいかどうか❞という判断基準を持ってクリエイションを行っていた。日常は静止画ではない。つまり、女性が日々生活を送る自然な動きの中で輝きを放つこと、そこを目指したのだ。この意思は、当時から現在に至るまでSUQQUのDNAとして受け継がれている。リップやアイシャドウなどすべてのアイテムは静止画ではなく、女性が纏ってこそ輝く。自然な動きがついたときにこそ、その真価を発揮するのである。

 

伊勢丹新宿の第1号店(当時の写真)。SUQQUの第1号店は、2003年に伊勢丹新宿店にオープンした。オープンからクローズまで人が途絶えることなく、当時の動員記録を作るほどだった。

高品質なツール類

ツール類のクオリティの高さもSUQQUの魅力のひとつとして挙げられる。絶頂期には全国で1万人以上待ちとなった伝説のアイラッシュ カーラーは、もともと顧客向けのタッチアップで使用されていたものだったが、カウンターでの評判から急遽商品化に至ったという逸話がある。90度の角度でまぶたに押し当てることで、使うたびに二重のクセがつくため「二重まぶた矯正ギブス」という異名を持ち、より美しくありたいと願う女性から熱烈な支持を受けた。また上質な灰リス毛を使用したフェイス ブラシも、口コミで広がり大ヒットとなった。ブランドデビューからわずかな時間しか経ってないにもかかわらず、これらは数多くのメディアで取り上げられた。

マスキュレイト マッサージ&マスク クリーム

“7年前の顔になる”と話題になった顏筋マッサージで使用されるクリーム。今でもスキンケア商品売上No.1を誇る大ベストセラーアイテム。

バランシング アイブロウ 01

日本人に似合う“モスグリーン”をキーカラーとし、自然な陰影をつくるノーズシャドウと、色と濃さを自在に調整できるアイブロウ2色をセット。

第2次クリエイターによる陰影メイク時代

2007年になると、ブランドクリエイターとして新たに井川成子氏が就任。彼女も田中氏と同様、映像の世界で活躍していた。マスククリエイターとして立体美を追求していた井川氏は、光に焦点をあてていた初代の田中氏と対照的に、陰影バランスをとても大切にしていた。そこで提唱されたのが❝陰影効果❞。黒よりも日本人の髪色や目の色になじむグリーンを影色としてフォーカスしたのだ。具体的には、モスグリーンをキーカラーとしてセットしたアイブロウパレット(バランシングアイブロウ01)など、独特の切り口でカラークリエイションがなされた。グリーンは苦手意識を持っている女性は多いのだが、SUQQUのグリーンは顔から浮くことなく肌になじむ。大人の女性が使っても、決して肌がくすんだりしないため、海外のビューティジャーナリストからも高い評価を得ている。このように井川氏のクリエイションは初代とはまた違った魅力をブランドにもたらし、多くの女性の支持を得た。

クリエイター発信からブランド発信へ

2010年になると、SUQQUはクリエイターを立てず、チームでクリエイションを行うブランド発信へと体制を変換。大幅なリブランディングを行った。当時の世相として、30代40代の女性の社会進出が目覚ましいものだったため、忙しい彼女たちに向け、時間をかけずに美しくなる❝時短メイク❞の提案をすることが要された。その結果生まれたのが、下地いらずでプロのような仕上がりを実現するファンデーション、❝フレームフィックスシリーズ❞である。またアイシャドウも、ワンパレットで素早くメイクが完了するように計算された。この頃は時代的に消費が停滞ムードだったこともあり、❝堅実に行儀よくメイクを施す❞ことに意識が向けられていた。そのためメイクの表現としてはどちらかというとコンサバティブで消費者のニーズを汲んだ発信がなされた。余裕と遊び心を持ってメイクを楽しむと言うよりは、美しさを簡単に手にいれるというミニマリズムビューティが体現され、❝効率❞がキーワードの時代だったとも言える。もちろん、当時発表された❝クリーミィグロウ リップスティックモイスト❞がリップブームの先駆けとなるなど、高品質な製品開発を軸とした革新的な挑戦が続けられていたことも確かである。

SUQQUを支える名品

アイラッシュ カーラー(左)は、独特のカーブが日本人のまぶたにしっかりフィット。手作業でひとつひとつ丁寧に作られているため、大量生産ができず、未だに品薄状態が続く。フェイス ブラシ(右)は熟練した職人が毛先だけを束ね、丸いフォルムに仕上げている。肌あたりが柔らかく刺激が少ないのが特徴。その品質の高さから、海外でもベストコスメを受賞している。SUQQUは、パウダーやアイシャドウの付属品としてセットされるブラシやチップにも決して手を抜かない。ツールのクオリティが、メイクの仕上がりを大きく左右するからだ。これはSUQQUが譲ることのできないこだわりであり、立ち上げ当初からのポリシーである。

ブランドリフレッシュで現在のスタイルに

2016年のAWシーズにSUQQUは改めてブランドリフレッシュを行い、今のスタイルとなった。2010年頃は時短メイクがもてはやされていたが、時を経た今、大人の女性はより自由なアイデアとゆとりを持ってメイクを楽しむようになった。強さを秘め、自分らしさを追求し始めた現代の女性に対し、SUQQUはメイクをより大胆に楽しんでもらうための後押しを始めた。大人の女性が普遍的に持つフェミニンで知性溢れる魅力に、旬やモードの要素をプラス。「大人のビューティを更新し続けるブランド」というミッションを掲げ、常にアップデートを繰り返している。
それまでのSUQQUはどちらかといえば理論が先立っていた。しかし現在は、アイシャドウパレットにおいても❝どこにどの色を塗ってもいい❞というスタンスに変化。もちろん大人である以上、多少なりともメイクの概念には社会性が含まれてくる。しかしSUQQUというフィルターを通せば、どのようにつけても失敗することはない。なぜなら、大人も安心してクリエイティビティを発揮できる質感で全商品が統一されているからだ。理論に感性が加えられたことにより、その表現はさらに豊かなものとなった。また手に取りやすい価格のリップスティックの登場など、製品ラインナップにメリハリがついたことで、感度の高い20代の女性からも、憧れのブランドとして支持を得るようになった。

2019年SSコレクション メイクアップビジュアル

パッケージデザインの変化

2016年のブランドリフレッシュ以降、プロダクトパッケージも徐々に変化を遂げた。それまではミニマリズムという日本らしい美意識の表現としてブラック1色のパッケージだったが、そこにゴールドといカラーコードをアクセントとして加えたのだ。これにより、シンプルなデザインのときにはなかった手にしたときの高揚感や、感性に訴える余韻が生まれた。

和名の採用

SUQQUのカラーメイクアップ製品には和名が付けられていることも印象的だ。語感や漢字の持つ意味でイメージが広がるため、それぞれが好きなように行間を読んで楽しむこともできる。実は2003年のデビュー時からすでに和名は採用されていたが、当初は日本の伝統色をそのまま再現していた。現在は開発者が創作した新しい色彩に、美しい色名が付けられている。

SUQQUの目指す大人の女性像

今では想像もつかないが、SUQQUのデビュー当時、世の中には❝アラフォー❞という言葉もなく、40代の女性が社会で活躍するという風潮もなかった。そんな中でSUQQUは、❝大人には大人の美しさがある❞という概念をいち早く世の中に提示してくれた。そして現在、女性たちの生き方は、大きな変化を遂げた。年代を問わず、輝きたいと思った時に、その人らしく光を放つことができる時代になったのだ。SUQQUがデビュー当時から提案し続けてきた大人の女性の在り方が、今ようやく現実のものとなったのである。
SUQQUがターゲットとしている❝凛としてしなやかな大人の女性❞とは、アンビバレントなバランスを持ち、多面的な魅力を放つ女性。つまり、❝大人の女性❞の定義を、年齢で区切ってはいない。本質的な美しさを求めていること、そして本質を見極めるだけの経験値があること。そんな知的好奇心のある女性を、SUQQUはプロダクトを通じて全面的にサポートし続けてくれるはずだ。

2019年SSベースメイクビジュアル「着飾るヌード。」

SUQQUのこれから

SUQQUは現在、イギリスやアジア各国でも展開され、熱烈な支持を獲得している。しかし決してグローバルに迎合しているわけではない。あくまでも日本のブランドというアイデンティティを強く持っており、その独自の美意識が高く評価されているのである。今後ますます加速していくであろうJビューティの波。その勢いに乗り、SUQQUはこれからますます、世界中の大人の女性を魅力し続けていくことだろう。

Text SHIHO TOKIZAWA
Photography YUYA SHIMAHARA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 020』に掲載されたものを再編集したものです。

元記事で読む
次の記事
の記事をもっとみる