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モノづくり人 岡田 知子

  • 2019.5.14
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モデルとフレンドリーにコミュニケーションを取りながら、繊細で美しいメイクをスピーディかつ完璧に仕上げる岡田知子さん。幼少期はどんな女の子だったのだろうか。

小さな頃はすごく人嫌いでした。ひとりで引きこもって遊ぶのが好きで。でも、幼稚園で「大きなカブ」を英語劇でやる機会があって、その頃から誰かに何かを披露するとか、人と一緒に何かをするということが楽しくなったんです。エンターテイメントというものに初めて触れたことが大きかったのかもしれないですね。小学生以降も、学芸会や舞台関係は、すごく張り切ってやっていた記憶があります」

舞台に興味を持ったことがきっかけで、高校卒業後は日本大学芸術学部に入学。しかし、その頃はヘアやメイクをすることに関心は高くなかったという。

「中学生のときに宝塚やミュージカルにハマったことがきっかけで、もともとは演出家になりたかったんです。だから大学では脚本を書いたり、演出やお芝居を勉強することがほとんど。でも、舞台をやっていくにつれて、“どうして舞台や演劇系のヘアメイクってダサいのかな”って思ってしまったんですよ(笑)。特に私自身が、海外のファッション雑誌やスナップ、外国人のヘアスタイル特集とかを見るのが好きだったせいもあり。“なぜこういう役に仕立て上げたいのに、そうならないんだろう”、“顔のどこが違うんだろう”、という疑問が生まれるようになって、そこからメイクを勉強してみようと思ったんです。そこでメイクのスクールに通い始めたらすごく面白くなってきて、演出よりメイクの方をやりたい!って思うようになりました」

影響を受けた写真集や切り抜きたち

「セルジュ・ルタンスの写真集は初めてのローンを組んでまで購入しました。毎日読んでいましたね。切り抜きは自分が好きなメイクを思い出せる原点。今でも大事にしています」

3年ほどメイクスクールに通い、その後は約1年間アシスタントとして修行。この頃影響を受けたことが、イマの原点になったと岡田さんは語る。

「アシスタントとしてついていた先生がコスメの商品開発などに関わっていたこともあり、よく私の顔で発色などの研究をしていたんです。今思えば、その現場を見させていただけたことって、すごく貴重な経験でありがたかったと思いますね。そこで“メイクをどのように成り立たせるか”っていうことには、理由が全部必要だということを教わったから。なぜこのマスカラを使ったのか、なぜこの子にはピンクをのせたのか。それを人に説明ができないようなメイクはしない方がいいってその時に感じて、今でもその思いは変わっていないんですよ。感覚やなんとなくで人にメイクをするというのは、私は違うって思っていますし」

繊細なメイクに欠かせない大量のメイクブラシ

「毛の種類によって粉含みが変わるのでたくさんあります。家にはこの5倍くらい(笑)。産毛を整えるときは、歯ブラシを使用したりもしています」

アシスタントを経た後はNYに渡米。知り合いもいない土地で、語学学校に通って英語を学びながら、体当たりで自身を売り込んでいったそう。

「メイクのアシスタントをやるにはどうすればいいかすら分からなかったので、作品ブックを持ちながらウロウロしていました。今思うと考えられない……と思うほどの大きなエージェンシーに電話でアポを取ったりして(笑)。右も左もわからない状況で体当たりをしていたので、そのまま仕事に繋がるなんてことはほとんどない状況で。ある日、語学学校の友達から「老人ホームでメイクをするボランティアがあるからやってみない?」という話を聞いて、メイクをしにそのボランティアに参加したんです。そうしたら、そのボランティアを取りまとめていたのが、NYでも活躍していたヘ&アメイクアップアーティストの松井里加さんで!そのきっかけがあって、色々な情報を教えていただき、たくさんの人と繋がっていくことができたんです」

その縁を無駄にせず、そこからますます必死で売り込みをしていった岡田さん。

「お金はいらないのでショーに入れてください!」と売り込んでいたら、人が足りないからとニューヨークのコレクションに呼んでいただける機会があったんです。何度か参加させていただいているうちに、少しずつ私の存在を認識してもらえるようになって、徐々に多くの依頼をいただけるようになったんです。1シーズンで23本とか、多くのヘルプもこなしていました。もちろんノーギャラで。でも、そこにはトップのモデル、ヘアスタイリスト、メイク、デザイナーの方たちがいらっしゃるわけじゃないですか。それだけでもう毎日が刺激的だったし、有名なメイクさんのテクニックも勉強できた。お金以上の価値がありましたね、その時間には。その後もしばらくNYでアシスタントをやらせていただいたり、パリコレに連れて行っていただいたりと経験を積んで、日本に帰国しました。海外での経験は今でも大きいと感じますし、本当に貴重な時間でしたね」

必ず持ち歩くカバンの中身

「手帳、お財布、スマートフォン、加熱式タバコ。休憩にタバコは必須です」

日本に拠点を移してからは、主にファッション雑誌のヘアメイクとして活動。今では数多くのメディアに出演し、活躍をし続けている彼女だが、挫折したことはないのだろうか。

「不思議なんですけど、一度もないんです。ヘアメイクの仕事を辞めようって思ったことが一度もない。もちろんアシスタントのときは寝る時間もほとんどなくて肌もボロボロだし、毎日きつかったです。失敗もたくさんしましたし。ただ、本当にメイクをするのが好きなんだろうなって自分でも思っています。あとは、気持ちの切り替えが上手な方なのかもしれないですね。集中して仕事をしているときも、ひとつのメイクが終わったらタバコで一息ついてリセットするし、程よく息抜きできているのがいいのかもしれないですね」

岡田さん愛用の加熱式タバコ

ブルーム・テック・プラス。「フレーバーはメビウスのクリア・ミントがお気に入り。軽くて爽やかなのでスッキリします」

忙しい合間の息抜きとしてタバコは必需品という岡田さんだが、職業柄モデルさんとの距離も近いはず。日頃気をつけていることを伺ってみた。

「吸うときは洋服に匂いがつかないように何かを羽織ったり、口臭ケアのアイテムは必須。現場の雰囲気で、ブレイクするタイミングも気にしますね。もともとは紙巻きタバコを長く吸っていたので、喫煙後には手の臭いを消すために必死になって洗っていたりもしていました。加熱式タバコに変えてからは、手や髪に臭いが付きづらくなったので有難いですね。そういった意味でも、今までよりも撮影中でも気軽に吸えるようになって、本当に助かっています」

どこかカッコいい生き様にぴったりとも言える遊び、サーフィンやウィンドサーフィンも、岡田さんはプライベートでの息抜きとして楽しんでいる。

「昔は仕事命だったんですけど、だんだんアウトプットとインプットのバランスが取れなくなってきて。仕事ばっかりしていると良くないなって思ったときにサーフィンと出会ったんです。今では忙しすぎて干からびそうになったときには、1週間くらい休んで波乗りに行きます(笑)。完全にリフレッシュですね。ちなみに今一番好きなのは、奄美大島かな」

プライベートのサーフィングッズ

「シードワーカー(Instagram / @seed_worker)にオーダーメイドで作ってもらったボードケースと、お気に入りのワックス、フィン」

“ 好きなものに順番をつけた途端、しんどくなると思う。 メイクが好き、サーフィンも好きなんです“

舞台もメイクも、興味を持ったものはとことん追求していく岡田さん。信念のままブレずに突き進み、挫折や苦労を理由に何かをやめることはなかった。

「このお仕事って、自分の中では自然な流れの中でやってこれたような気がしてるんです。だから、もしも仕事のオファーがなくなったり、メイクをさせていただく機会がなくなったりしたら、私は辞めてもいいかなと思っています。その上で、他の仕事をやれって言われたら、それはそれで全然一生懸命できると思います。でも、絶対自分からは辞めようとは思わないですね。仕事を休んで遊びに行ったり、サーフィンをしたりも好き。ただ、メイクをすることも、舞台を観ることも本当に好き。どれが一番好き、とか順番をつけた途端にしんどくなっちゃうと思うんです。だから仕事もプライベートも、それぞれ好きなものは全くの別物として考えています。こんなラフなスタンスが、自分にはバランスが取れていると思うし、クリエイティブなことを発信するにはちょうどいい塩梅なんじゃないかと。これからも流れに身を任せながら、与えられた環境を頑張っていきたいと思っています」

CYANでも多くのカバーのヘアメイクを担当

4月30日に発売する最新号ISSUE 021をはじめ、CYANでも多くのカバーのヘアメイクを担当。「岡田さんにお願いしたい!」と、CYANモデルたちからも指名が毎号必ず入るほど、そのクリエイティブ力だけでなく、大らかで真っ直ぐな人柄にも、絶大な人気を集めている。

Photography YUYA SHIMAHARA
Text NATSUMI TAKAHASHI

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