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思い出がいっぱい! つい見入ってしまう「小学校の卒業アルバム」の魅力

  • 2015.3.18
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【ママからのご相談】

11歳(小学5年)の男の子をもつ40代のママです。今度35年ぶりに小学校5・6年のときのクラス会が開かれることになり、今から楽しみです。 タンスの奥から卒業アルバムを引っ張り出して当時の写真を見ていると、ついつい時の経つのも忘れて見入ってしまいます。中学校や高校の卒業アルバムにはさほどの思い入れがないのですが、小学校の卒業アルバムに見入ってしまうのはどうしてでしょうか。来年は息子も小学校を卒業しますが、彼もやはり卒業して何年も経ってから、同じように卒業アルバムの写真に見入るのでしょうか。

●A. それは、多くの人が“初恋”を経験する時期のアルバムだからだと思われます。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

ライフネット生命が2012年に行った“初恋に関する調査”によると、恋をしたことのある20~59歳男女のうち、初恋が小学校時代だった人が全体の47.0%と圧倒的に多く、小学校入学以前の27.7%、中学生時代の15.6%、高校生時代の5.2%、高校卒業以後の4.5%を断然引き離していることが明らかになっています。つまり、だいたい2人に1人は小学生のときに初恋を経験するということです。

小学校の卒業アルバムに誰でもついつい見入ってしまう理由にはいろいろなものがあるとは思いますが、「初恋の思い出がそこにあるから」というのも間違いなく理由の一つであると思われます。

以下、思春期の少年少女の問題に詳しい、都内でメンタルクリニックを開業する精神科医師に伺った話しを参考にしながら、記述させていただきます。

●中学・高校は“女子校”“男子校”だった人でも、小学校は男女共学だった人がほとんど

『わが国の学校教育制度においては、中学校や高校に関しては、「女子校でした」「男子校だっと」という人も多いのですが、こと小学校ということで見ると、一部の歴史の古い女子大学の附属小学校で女子のみの学校があったり、やはり歴史が古く男性しかその職に就くことができないような古典芸能の世界の人材を多く輩出しているような私立小学校で男子のみの学校があったりする以外は、ほとんどが男女共学です。

女子のみの小学校や男子のみの小学校に通ったという人は、割合からいったらとても少なく、この事実からしても小学校時代というのは“万人にとって初恋のステージだった場所”だと言うことができるでしょう』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医師)

●“ふと初恋を思い出すとき”は3割の人が、「当時の写真・アルバムを見たとき」

同調査では初恋の相手についても尋ねていますが、この相談に対する回答は75.3%が、“同級生”で、圧倒的多数を占めました。第2位が、“上級生”で7.8%、第3位が、“先生”で2.8%であるところを見ると、“初恋は、その多くが同級生どうしの間で生まれる感情”と捉えるのが一般的かもしれません。

『47%の人が初恋を経験した小学校時代ですが、さらに詳しく調べると“高学年時代(11~12歳)”が19.5%でトップ。“中学年時代(9~10歳)”が17.4%でそれに次ぎ、“低学年時代(7~8歳)”は10.1%と低い数値を示しています。

「初恋は小学校入学以前(6歳以下)だった」と答えた人が27.7%いたということですが、この場合、そう答えた人たちの考える“初恋”の概念が、「ほんのりとした好意を持った」という感覚であろうと思われ、早ければ女子で7歳から、男子で9歳から始まる“思春期”との相関性を考えれば、「初恋は小学校の中・高学年時代だった」と答えた人が“ある程度異性として好意を持った”経験を指して“初恋”としているのに対して、初恋という言葉の解釈の範囲がやや広すぎるような気はします』(50代女性/前出・精神科医師)

また、調査では、初恋をふと思い出すのはどんなときか質問したところ、「当時の写真・アルバムを見たとき」と回答した人が29.4%と約3割にのぼり、それに次ぐ回答の、「当時の友人と再会したとき」(15.5%)、「思い出の曲を聞いたとき」(14.9%)、「初恋相手に似ている人を見かけたとき」(11.1%)などを大きく引き離しました。この結果を見ても、卒業アルバムや写真が持つ“初恋を思い出させる効果”は、大きなものであると言うことができるでしょう。

●初恋だけではない小学校時代のステキな思い出の数々が詰まっているから見入ってしまう

このように、初恋を思い出させる効果抜群の小学校の卒業アルバムではありますが、小学校時代のステキな思い出は何も初恋の思い出ばかりではありません。

遅刻しそうな朝、一緒に全速力で学校まで走った友だちの必死な顔や、勉強は苦手でも野球をやってるときだけは生き生きと輝いていた乱暴者の瞳。図工の成績がいつも悪かったのに、描いた絵を先生からほめられたときの、やさしかった彼の照れ笑い。

転入してきた日から隣の席に座り、学校のことをいろいろ教えたら、「お礼に」とハングル文字を教えてくれた女の子の微笑。

真面目で、いつもクラスの和を保たなければといった責任感がものすごく強くて、毎日さぞかし気疲れしたろうなと思える学級委員だった女子のちょっと物憂い顔。

そんな友達一人ひとりのステキな表情がしっかりとそこに記録されているからこそ、小学校の卒業アルバムには見入ってしまうのだろうと思います。

●SNS全盛の時代のクラス会こそアルバムの中で笑う“そのままのきみ”でありたい

そんな魅力にあふれた小学校の卒業アルバムですが、その後の35年の歳月は友達一人ひとりにさまざまな運命の悪戯を与えたはずです。今はフェイスブックに代表されるSNSが全盛の時代ですから、「見てもらいたい、知ってもらいたい」ことがたくさんあるような、総じて“うまくいってきた”人ならSNSにそういった情報や画像を公開して、旧友の目に触れる機会も多かったでしょう。

でもそんな情報が目に入ったとき、「俺なんか(あたしなんか)恥ずかしくて、こんなにうまくいってそうなあいつになんて、会えない」と、友人に思わせるようなことがあってはいけませんね。

人生には“勝ち”もなければ“負け”もありません。人の価値とは手に入れたお金の額で決まるものでもなければ手に入れた肩書の立派さで決まるものでもありません。あの日の彼の“照れ笑い”や、あの日の彼女の“微笑み”。それこそがその人が生きていることのかけがえのない意味であり価値なのです。

ご相談者さまには“釈迦に説法”ですが、SNS全盛の今の時代であるからこそ、クラス会ではあの卒業アルバムの中の一人ひとりのように、そのままの笑顔で明日を見つめて笑っている仲間でありたいですね。男子は髪の毛が薄くなっていようと、女子は目尻の皺が増えていようと、集まった人がみんな写真の中のあの表情に戻れる、飾り気のない会にしたいものです。

ママがそんなふうに懐かしそうに卒業アルバムを見、楽しそうにクラス会から帰ってきたならば、息子さんもきっと大人になったとき、小学校の卒業アルバムにやさしい目で見入ってるおじさんに、なられていることでしょう。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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