1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 加速する「クリーン・ビューティー」ムーブメント、完全ガイド。

加速する「クリーン・ビューティー」ムーブメント、完全ガイド。

  • 2019.3.28
  • 955 views


加速する「クリーン・ビューティー」ムーブメント、完全ガイド。
2019.03.28 19:00
サスティナビリティ、ヴィーガン、ナチュラル、オーガニック……。いまビューティー業界で話題のこれらのキーワードは、すなわち世界の消費者トレンドを代弁している。注目の気鋭ブランドから革新的な新成分、コスメが与える環境負荷、消費者の意識変化まで、ビューティー業界の新潮流を徹底的に分析した。

グウィネス・パルトロウが率いるライフスタイルメディア&ブランド『グープ(GOOP)』などが推進してきた「クリーン・ビューティー」と呼ばれるムーブメントは、かつてはニッチな市場だけのトレンドとされていた。しかし、次第にその勢いを増し、ついにはメインストリームにまで達している。イギリスの土壌協会が2019年2月に発表した最新レポートによると、ミレニアル世代とZ世代がリードする意識の高い消費者の増加によって、同国のオーガニックビューティーとウェルネスの市場規模は、過去最大を記録している。


「サステナブルビューティーとウェルネスへの風向きが変わったことは、間違いありません」


こう語るのは、土壌協会CEOのマーティン・ソーヤーだ。イギリス土壌協会からオーガニックコスメの世界基準コスモス(COSMOS)認証を取得したヨーロッパの美容関連商品は、昨年倍増し、その数は794ブランドの1万品目を上回った。同部門は、8年連続で成長を続けている。

クラランス(CLARINS)は、ヴィーガンスキンケア製品ライン(ヴィーガン、パラベンフリー、サルフェートフリー、フタル酸フリー、持続可能な方法で管理された森林からのリサイクル素材を利用した包装)をデビューさせ、ウエラ プロフェッショナル(WELLA PROFESSIONALS)は、植物由来のヘアカラーを発表。こうした流れを考えれば、「クリーン・ビューティー」ムーブメントの勢いは明らかだ。

クリーン・ビューティーの定義。


とはいえ、実のところ、クリーン・ビューティーの定義はまだ存在しない。植物由来の美容製品の先駆者で、スキンケアブランド、デ・マミエール(DE MAMIEL)創設者のアニー・デ・マミエールは以下のように説明する。


「ナチュラル、クリーン、エコ、低刺激性などの宣伝文句には、どれもまだ明確な線引きがありません。基準設定なしでは誤解を招き、誤用される可能性があります。中には、ケミカルフリーなど、おかしな用語もあります。天然成分も合成成分も、すべての成分は化学物質(ケミカル)なのに」


オーガニック化粧品の代表的ブランド、アールエムエス・ビューティー(RMS BEAUTY)の創設者であるローズ・マリー・スウィフトも同意する。


「当初、『ナチュラル』と『オーガニック』という用語は、天然由来成分で作られた製品を表すために使用されていました。消費者が化学合成成分フリー系製品を好むことをマーケティング担当者が気づくとすぐに、その種の宣伝文句の真偽に関係なく、あらゆる種類の製品に使われはじめたのです」


フューチャー・ラボラトリ(FUTURE LABORATORY)で将来動向を研究するシニアアナリストのヴィクトリア・ブキャナンは、2019年に美容ブランドが信用を得るには、「ナチュラル」であるだけでは不十分だと言う。


「自分の肌に直接つける製品の成分を詳しく調べるという消費者トレンドは、これからも続くと予想されます。となると、『刺激ゼロ』であることがナチュラル・ビューティーの新基準になるでしょう」

ムーブメントの背景。


プロダクト選びにおける消費者たちの目は、どんどん洗練されている。知識も豊富だ。非営利団体グローバル・ウェルネスインスティテュートが毎年発表している「グローバルウェルネス」が発表した2018年の報告によると、ウェルネス市場は世界の経済成長率(3.6%)のほぼ2倍の規模で拡大しているという。事実、2015年に3.7兆ドル(約395兆円)規模だった世界のウェルネス産業は、2017年に4.2兆ドル(約500兆円)規模に達し、12.8%もの成長を遂げた。


ブキャナンによると、最近の変化を推進した要因は2つある。


「一つには、食事やプロダクトにもウェルネスやデトックス効果を求める消費者ニーズが、コスメにおける余分なものを取り除いた『クリーン』成分への需要を高めていると言えるでしょう。消費者は、フレグランスや防腐剤に含まれる合成成分が、刺激や炎症を引き起こすことを知っています。だから彼らは、スーパーマーケットで食品を買うときと同じように、商品の品質表示ラベルを以前よりも注意深く確認しているのです」


2つ目の要因は、環境変化による敏感肌の増加だ。


「ますます悪化する大気汚染やストレス、デジタル製品に囲まれた生活が原因となり、敏感肌が増加しています。その結果、最近の消費者の興味関心は、アンチエイジングよりも敏感肌に向くようになりました。それが、純粋成分を調合した自然派スキンケアへのシフトを促しています」


アメリカの環境保護団体エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)の報告によると、現在、化粧品や食品、清掃用品、そして大気汚染から女性が毎日触れる化学物質の種類は、平均126にも及ぶそうだ。また、グローバル市場調査会社ミンテルによると、アメリカの消費者の21%は、可能な限り成分数の少ないスキンケア製品を欲しているという統計もある。

避けるべき成分は?


品質や成分に対する消費者の関心が高まっているとはいえ、実のところ、成分の有毒水準は世界各地で異なる。例えば、ヨーロッパでは1,300種類以上もの成分が化粧品への使用を禁じられている。一方のアメリカでは、禁止されている成分はたったの30種類ほど。アメリカの美容業界は、もっとも規制が緩い業界のひとつで、アメリカ政府唯一の化粧品成分に対する監視力は、連邦食品医薬品化粧品法のみ。しかもこの法律は、1938年の施行以来、内容はほとんど更新されていない。そのため、クリーン・ビューティー業界は独自のルールを自らつくりあげる必要があったのだ。


クリーン・ビューティー支持者の多くは、刺激の強い原料や化学合成物質を心配している。アメリカの美容ブランド、カリ・グラン(KARI GRAN)が2016年に実施した「グリーン・ビューティー・バロメーター」調査では、同国の女性の55%とミレニアル世代の62%が、特定の成分を避けるために美容製品の成分ラベルをチェックしていることがわかった。


しかし、基準や根拠はそれぞれのブランドによって異なるため、どの種類の成分を避けるべきかを自ら学び、正しい情報に基づいて購買決定することが重要だという。ラベルを確認する上で知っておきたいのは、含有量が1%を超える成分は、すべてラベルに表示する義務があるということ。そして、もっとも含有率が高い成分から順に表示される決まりになっている。一方、1%未満の成分の表示はどんな順序でも構わず、バランス ミー(BALANCE ME)の共同創設者、クレア・ホプキンスは、各ブランドは製法をコピーされないよう、意図的に順序を変更することもあると教えてくれた。

世界の代表的な認定
英国土壌協会(SOIL ASSOCIATION)、コスモス(COSMOS)、エコサート(ECOCERT)、米国農務省(USDA)、ネイトゥルー(NATRUE)、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)、デメター(DEMETER)

ナチュラルとオーガニックの違い。


では、「ナチュラル」と「オーガニック」を分かつものとはなんだろうか? スウィフトは、その違いを次のように説明する。


「ナチュラル製品は植物や天然由来の成分を含み、最小限の加工しかされていません。一方のオーガニック製品は、『ナチュラル』をさらに進めたものです。つまり、化学除草剤や農薬、殺菌剤、抗生物質を使用せずに、栽培、飼育、収穫、製造、保存された遺伝子組み換えでない成分だけを用い、できる限り不純物を取り除いた製品です。そのため、『ナチュラル』よりあらゆる面でさらに費用がかかるため、オーガニック製品の方が値段が高い傾向にあります」


さらにスウィフトは、ラベルに「〜由来」と書かれた商品はなるべく避けるべきだと勧める。


「『由来』というのは、天然成分が何らかの加工によって、天然ではないものに変えられたことを示しています。アールエムエス・ビューティーでは、ありのままの生命力エネルギーを完全に保った状態の原料だけを使用しています」


過度に加工された成分を避けることで、酵素、ビタミン、ミネラル、酸化防止など、植物が本来持っている自然治癒特性を100%活用できるというわけだ。

ヴィーガンなビューティー・ルーティン。


正真正銘のヴィーガン製品には、蜂蜜、コラーゲン、卵白、カルミン、コレステロール、ゼラチンなどの動物由来の成分は一切含まれていない。調査会社ミンテルのグローバル新製品データベースによると、市場におけるヴィーガン製品は、2013年7月から2018年6月までの約5年間で175%も増加している。


こうしたヴィーガンブランドの中でも熱狂的なファンを持つアメリカの新ブランド、ミルクメイクアップ(MILK MAKEUP)の製品は、パラベンフリーかつクルーエルティーフリー(動物実験を行わない)の100%ヴィーガンだ。同じく100%ヴィーガンのスウェーデン発ヘアケアブランド、マリア ニラ(MARIA NILA)も、動物愛護団体PETA、ヴィーガン・ソサイエティ(THE VEGAN SOCIET)、リーピングバニー(LEAPING BUNNY)のクルーエルティーフリー認証を取得している。


マリア ニラのマーケティング責任者のヘダ・ミロウによると、多くのヘアケアブランドが、髪の強度と修復のためにケラチン(動物の皮や骨から得られるタンパク質)、髪の柔らかくするためにラノリン(羊脂肪)とラノリンシルクプロテイン(シルクバタフライ由来)、そして、潤いとホールドのために蜜蝋(ミツロウ)を使用するのが一般的。しかし、同社はこうした成分の代替として、植物性タンパク質やバター、オイルだけを使用し、修復には小麦プロテインや藻類、ホールドにはシアバター、栄養補給にはモリンガオイル、軟化にはアルガンオイルなどを使用している。

注目すべき最新の代替成分。


現在、市場で話題になっている活性炭トレンドの先駆的ブランド、ボウシャ(BOSCIA)の共同創設者であるラン・ベリンキーは、これから期待される成分について、次のように語る。


「私たちが注目するのは、凍結療法にアイデアを得た、紅藻などの持続可能な原料成分を含む『CRYOSEA』配合です。氷のような冷たさでリフトアップ効果、引き締め効果、ふっくら感をもたらし、代謝を上げてくれるのです」


そのほかにも、マメ科のオランダビユの種子に含まれる植物由来のレチノール代替成分であるバクチオールも見逃せない。パクチオールはビタミンA群に分類され、コラーゲンとエラスチンの育成を促進すると言われている。ベリンキーは、この代替成分に高い期待を寄せているのだ。


「バクチオールはレチノールと同じように作用する、素晴らしい代替品です。皮膚を刺激し、色素沈着を引き起こす可能性があるレチノールとは異なり、副作用はありません。年齢による衰えを感じさせない、画期的な天然成分です。肌を明るくしながら、小じわ、しわ、毛穴、シミに効果を発揮します」

あなたの愛用コスメの環境負荷は?


自身が使うプロダクトに気を配るなら、製品が与える環境負荷にも注目したい。世界の化粧品産業では、昨年一年間で、1200億個ものパッケージが生産されているが、これらの大半はリサイクルできない。100%合成成分フリーのオーガニック認証スキンケアブランド、タタ ハーパー(TATA HARPER)の創設者で、「グリーン・クイーン」として有名なタタ・ハーパーでさえ、エコパッケージは難題だと認めている。


「業界全体とタタ ハーパーの両方にとっての最大のハードルは、包装だと思います。持続可能性の観点からクリーンな化粧品パッケージを実現するには、まだ時間がかかります。ラグジュアリーな外見と持続可能性を両立するのは、容易ではないのです」


そこで、ハーパーのブランドでは、持続可能性を向上するためのこんな工夫を取り入れている。


「タタ ハーパーのパッケージの大部分は、リサイクルしやすくなんども再利用できるガラス製です。プラスチックは、包装機能として不可欠な場合にのみ使用し、できるだけ環境にやさしいものを選んでいます。チューブに使っているプラスチック樹脂はトウモロコシ由来で、石油由来の代わりに再生可能な資源から作っています。さらに、印刷には大豆ベースのインクを使っています」


特定の成分が環境に与える影響も懸念されている。 デ・マミエールは、肌の柔軟性を高める成分として、テンサイとココナッツオイルに由来するイソアミルココエートを使用していると言う。


「一般的に使用されているシロキサン(シリコン)と比較すると、生産に必要なエネルギーとCO2排出量は60%少なくすみます。かつ、べたつかない軽やかな肌触りを実現できるのです」


自分が使っている製品の環境負荷が気になる人は、ぜひ、EWGの「SKIN DEEP」、OFFICINEAの「CLEAN BEAUTY」、「THINK DIRTY」のバーコードスキャンアプリをダウンロードして、成分を調べてみよう。

Photos: Getty Images Text: Ellen Burney

元記事で読む
の記事をもっとみる