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悲しい映画に惹かれる理由と、忘れられない悲恋映画をもう一度チェック!(Mihoko Iida)

  • 2019.3.14


悲しい映画に惹かれる理由と、忘れられない悲恋映画をもう一度チェック!(Mihoko Iida)
2019.03.13 22:30
『VOGUE JAPAN』3月号に「なぜ、人は悲恋に惹かれ、その物語を記憶するのか?」というテーマの企画を担当。きっかけは今シーズンのファッションテーマでもある「Innocence (イノセンス)」という言葉から連想する悲恋映画『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき事情』(1993) でした。本誌では行動生態学を専門とする人類学者の長谷川眞理子先生にも取材。「名作」として記憶される悲恋映画をピックアップしてみました。

ウィノナ・ライダーのイノセンスに惹かれた『エイジ・オブ・イノセンス/ 汚れなき事情』。


作家イーディス・ウォートンの名作小説の映画化で、ウィノナ・ライダーがアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた『エイジ・オブ・イノセンス/ 汚れなき事情』(1993)。舞台は19世紀のニューヨークの上流社会。主人公のニューランド(ダニエル・デイ・ルイス)は若くて初々しいメイ(ウィノナ・ライダー)という婚約者がいるにも関わらず、幼馴染の伯爵夫人エレン(ミシェル・ファイファー)と再会し、不倫の恋に落ちる。その悲恋の結末にあったものとは......。1990年代を代表する名女優たちの共演は必見です。アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した作品でもあるので、ファッションもチェック! 


監督:マーティン・スコセッシ 出演:ダニエル・デイ・ルイス、ミシェル・ファイファー、ウィノナ・ライダー

ファッションも伝説と化した『ある愛の詩』。


「愛とは決して後悔しないこと(Love means never having to say you're sorry)」という名セリフを映画史に残した悲恋映画『ある愛の詩』(1970)。大富豪の御曹司であるオリバー(ライアン・オニール)が父親の反対を押し切って、あまり裕福ではないジェニー(アリ・マッグロー)と一緒になる。親の財産を受け継ぐことができなくなった二人は、貧しくも幸せに暮らすが、ジェニーが突然、不治の病に冒されてしまう。当時、ヴォーグ誌の表紙なども飾った人気モデルであり、女優でもあったアリ・マッグローと、人気俳優ライアン・オニールが映画の中で着こなしたファッションは、プレッピー・ファッションのお手本でもある。 


監督:アーサー・ヒラー 出演:ライアン・オニール、アリ・マッグロー

引き離されてしまった恋人たちを追う『つぐない』。


作家イアン・マキューアンの名作を映画化した『つぐない』(2007)は、その年の作品賞を含むアカデミー賞7部門にノミネートされた名作。英国アカデミー賞の作品賞と美術賞を受賞した。13歳の少女ブリオニー(シアーシャ・ローナン)の妄想によって引き裂かれてしまった若き恋人たちセシーリア(キーラ・ナイトレイ)とロビー(ジェームズ・マカヴォイ)の運命は、第二次世界大戦によってさらに大きく変わってしまう......。イギリスの階級社会から、人生の不条理まで、あらゆる悲しみが忘れがたい作品だ。 


監督:ジョー・ライト 出演:ジェームズ・マカヴォイ、キーラ・ナイトレイ

「悲しみ」を理解できるのは人間だけ。


今回の企画で取材をさせていただいたのは、総合研究大学大学院学長の長谷川眞理子先生。人類学者で、ご専門は行動生態学、自然人類学。近著に『世界は美しくて不思議に満ちているー「共感」から考えるヒトの進化』(青土社)があります。長谷川先生に伺ったお話しの中でとても印象的だったのは、悲しみのようなネガティブな感情は、エピソード記憶になりやすいこと。つまり、悲しい映画ほどずっと忘れずに心に刻まれるようです。この背景には、「悪いことは避けなくてはいけない」というある種の防衛本能が働くから。「悪いこと」をたくさん覚えている方が避けられる確率が高まり、生きていくうえで有益だからだそうです。そして、映画や小説を通して経験を拡張していくことで、他人への理解を深めることができる。共感する能力に影響をするうえ、さらに驚いたことは、共感力のカギを握る前頭葉前野は、経験するほど回路の通りがよくなるとは!なので、年齢を重ねるにつれて、共感する力を上げることができるのです。ならば、10代の頃に観た悲恋映画を、30代や40代で再び観てみると、より深く理解することができるかもしれない?今回ここでピックアップしてみた「名作」をもう一度、チェックしてみてください。

Mihoko Iida

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