A.ジャコメッティとP.リンドバーグ展。【展覧会とお宅拝見 2】

アルベルト・ジャコメッティ(1901〜1966年)とピーター・リンドバーグ(1944〜)。彫刻家と写真家のふたりは実際には会ったことがないけれど、それぞれの仕事にはリアリズムの追求ということ、モノクロームの世界という共通点がある、ということで、14区のジャコメッティ・インスティチュートで『アルベルト・ジャコメッティ ピーター・リンドバーグ/不可視を捉える』展が開催されている。

昨年初夏に開館したジャコメッティ・インスティチュート。もと個人宅だった会場は広くないので、入場には予約が必要。サイトで簡単にできる。

ジャコメッティ・インスティチュート内に再構築されたアトリエ。photo:Marc Domage, Succession Alberto Giacometti(Fondation Giacometti, Paris + Adagp, Paris)

ピーター・リンドバーグはジャコメッティの仕事と人物に魅了されていて、ある雑誌のために彼の作品を撮影した。それがきっかけとなって、ジャコメッティの作品の撮影がインスティチュートから彼に依頼されたのだ。90年代のトップモデル時代を代表する写真家リンドバーグはファッションフォトグラファーとして知られるが、彼のモノクロ写真は服を見せるというより女性のポートレートといった印象が強い。それが彼の写真の個性となっていて、とりわけ注目すべきは被写体たちが放つ強い視線。この展覧会の最初の部屋ではその視線に注目した展示で、リンドバーグのアーカイブから選ばれた写真と、ジャコメッティの人物デッサンが小さな空間で対峙している。写真の中で、デッサンの中で、モデルたちが偶然にも似通ったポーズをとっていることにも注目しよう。

このジャコメッティのデッサンを見て、スーパーモデルが10名強集合したピーター・リンドバーグのモノクロ写真を思う人もいるのでは?その写真も展示されている。Alberto Giacometti 『Têtes』(1950年以降)。Fondation Alberto Giacometti ©Succession Alberto Giacometti(Fondation Giacometti, Paris + Adagp, Paris), 2019

女優のポートレートといえど、レンズは老いのサインを容赦なくとらえている。肌の質感はジャコメッティの彫刻のようでもある。Peter Lindbergh『Jeanne Moreau、le Kremlin-Bicêtre』(2003年)。© Peter Lindbergh(Courtesy Peter Lindbergh, Paris)

ジャコメッティの『Femme accroupie』(1959〜60)。このデッサンに見られるしゃがみこんだ女性のポーズに似たポーズを、カレン・エルソンがとっているピーター・リンドバーグの写真も展示されている。Fondation Alberto Giacometti ©Succession Alberto Giacometti(Fondation Giacometti, Paris + Adagp, Paris)

上のフロアの4つの空間がメインの展示会場で、ここにリンドバーグが撮り下ろしたジャコメッティの作品の写真と彫刻が展示されている。弟のディエゴを始め、ジャコメッティの彫刻のモデルたちの呼吸が感じられるような、リンドバーグの写真。どこまでも細い線で表現された彫刻『歩く男』は、まるで移動しているように3点の写真が並べられている。展覧会は小規模である。写真の前に立ち、彫刻の前に立ち、じっくりと鑑賞する時間を持ちたい。

ジャコメッティの妻だったアネットの胸像をリンドバーグが2017年に撮影。©Peter Lindbergh(Cortesy Peter Lindberh, Paris)©Succession Alberto Giacometti(Fondation Giacometti, Paris + Adagp, Paris), 2019

メインフロアではリンドバーグの写真でジャコメッティの仕事を見せるだけでなく、実際に何点か彫刻も展示している。Alberto Giacometi『Grande tête mince』(1954年) ©Succession Alberto Giacometti(Fondation Giacometti, Paris + Adagp, Paris), 2019

ジャコメッティの『歩く男』をリンドバーグが撮影。歩く男性を撮影したリンドバーグの写真も展示している。©Peter Lindbergh(Cortesy Peter Lindberh, Paris)©Succession Alberto Giacometti(Fondation Giacometti, Paris + Adagp, Paris), 2019

インスティチュートは昨年の6月に開館した。初回に開催されたのは『ジャン・ジュネがみたアルベルト・ジャコメッティのスタジオ』展だった。インスティチュートの1階では、入り口すぐ右手にガラスに囲まれてアトリエが再現されている。ジャコメッティが1926年から40年近く製作を続けた小さなアトリエそのまま、ベッド、椅子、パレット、レインコート……さらに吸いかけのタバコを置いた灰皿までそのままに、まるでちょっと中座したジャコメッティがいまにも戻ってきそうな雰囲気だ。

ジャコメッティの名がついた建物であるが、インスティチュート設立の場として選ばれたのであり、ここは生前の彼とは無縁の場所である。1912〜14年に建築された美しい建物なので、その歴史を知っておくのもいいだろう。この個人邸宅を建て、そこに暮らしていたのはポール・フォロ(1877〜1941年)というデコレーターで、ウエッジウッドやクリストフルなどのメゾンのためのデザインもしている。デパートのボン・マルシェのための室内装飾アトリエの責任者でもあった。20世紀前半のスター・デコレーターといっていいだろう。

展示会場では目を上に向けることも忘れずに。

いたるところに20世紀初頭の装飾が見られる。

晴天時に美しく輝くステンドグラス。

展示会場内。ジャコメッティの鳥とお気に入りのモデルのアディを撮影したマン・レイによる写真がテーブルに展示されている。

この扉は日頃閉じられているので、美しい階段を見ることができないのが残念だ。

外壁のモザイクタイルもポール・フォロの作品だ。

インスティチュートが入るにあたり、建築的特徴やボリュームなどをリスペクトすると同時に、公に開かれた場所としての安全面を満たす改修が行われた。展示によっては白い壁で覆われてしまうものもあるが、修復されたポール・フォロによる壁の装飾やステンドグラスなど随所に見いだせる。

カルティエ財団の近くにインスティチュートはある。どちらも最寄り駅は地下鉄駅Raspaille。駅の向かいには、マン・レイを始め1920年代に大勢のアーティストが暮らしていたカンパーニュ・プルミエール通り31番地の有名な建築物(1911年)が建っているので、眺めるのを忘れないように。

カンパーニュ・プルミエール通り31番地の建物。アンドレ・アルフヴィドソン(1870〜1935)による建築だ。

外壁を飾るのは、アレクサンドル・ビゴのセラミック。これも要チェックだ。

「Alberto Giacometti  Peter Lindbergh/Saisir l’invisible」展会期:開催中〜2019年3月24日Institut-Giacometti5, rue Victor-Schoelcher75014 Paris開)10:00(火 14:00、金 14:30、土 13:30)〜18:00休)月見学は要オンライン予約。www.institut-giacometti.fr

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提供元: madame FIGARO.jpの記事一覧はこちら
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