1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【GLAMなオトコ】Vol.22 ヒュー・ジャックマン、訪れた役者人生最大のチャレンジ「僕はラッキーな男」と語るワケ

【GLAMなオトコ】Vol.22 ヒュー・ジャックマン、訪れた役者人生最大のチャレンジ「僕はラッキーな男」と語るワケ

  • 2019.1.30
  • 1789 views
GLAMなオトコ01

『X-メン』や『ウルヴァリン』シリーズ、『レ・ミゼラブル』など、日本でも高い人気を誇るハリウッド・スターのヒュー・ジャックマン。大ヒットを果たした『グレイテスト・ショーマン』の次なる出演作に選んだのは、実在した大統領候補者、ゲイリー・ハートの転落劇を描く『フロント・ランナー』です。

46歳の若さで民主党の大統領候補になったカリスマ政治家のゲイリー・ハート。ジョン・F・ケネディの再来と言われた彼は、1988年の大統領予備選で最有力候補“フロント・ランナー”に一気に躍り出る。しかし勝利を目前にして、あるスキャンダル報道によって、ハートの輝ける未来は一瞬にして崩れ去っていく……。

いつでも太陽のようなハッピー・オーラを身にまとい、ハリウッドきってのナイスガイとしても知られるヒュー・ジャックマン。その彼がなぜ、失脚した政治家を演じたいと思ったのか。来日したヒューを直撃し、「ダントツで今までで一番大変なチャレンジだった」という役柄への想い。そして「もし、政治家への要請があったらどうする……?」との質問に答えてもらうと共に、彼にとっての“GLAM(魅力的・幸せ)”な時間をうかがいました。

GLAMなオトコ02
Q.ゲイリー・ハートの失脚までの数日間を、彼だけにスポットを当てるのではなく12人の視点から描いたサスペンスです。この作品に出演することにした決め手はなんだったのでしょうか?

2つ、理由があるんだ。1つ目は、大好きなジェイソン・ライトマン監督とぜひとも仕事をしたかったこと。彼は、非常に複雑なキャラクターを描く監督。作品ごとに違ったチャレンジをしているし、観客にいろいろな感情を呼び起こす作品を撮り続けている人だと思うんだ。

2つ目は、なによりこのストーリーに引き込まれたこと。大統領候補の“フロント・ランナー”と目されていた人が転落するまでの3週間を描く作品だけれど、ゲイリー・ハートは、これまでに僕が演じた役柄とはまったく異なるものだと思う。ゲイリーは非常に謎めいていて、知性もある。そんな彼を演じることにチャレンジしてみたかった。この作品を観ると、観客は様々な疑問を持つと思うんだ。そういったはっきりとした答えを提示しないところが、とても気に入った。アメリカだけではなく、世界中にも言えることで、“今の時代”だからこそ考えさせてくれる作品になっていると思うよ。

Q.ゲイリー・ハートを演じることは、どんな経験になりましたか。

僕に話をしてくれた人たちがゲイリー・ハートを表現するのに一番よく使っていたのが、“とらえどころがない”という言葉で、役者にとってはちょっと厄介だった。演じる人物がどんな人なのか、深く理解したいからね。ハートのように、自分に近づくことを許しながら、突然扉を閉ざしてしまう人を演じるのは……。このことについては、ジェイソンともよく話し合ったんだ。観客にも、このキャラクターを理解するところまで、どんどん近づいてきたと感じてほしいけれど、完全に理解するところまではもっていなかないようにしようってね。それが、僕が苦労した点だ。自制心が必要だったし、ジェイソンがいてくれて助かったよ。ちゃんとできているかどうかの判断を、ジェイソンに頼らなければいけなかったからね。

Q.とてもチャレンジングな機会になりましたね。

ものすごく大きなチャレンジだったよ。ダントツで今までで一番大変なチャレンジだった。彼の腹筋が6パックに割れていなくて助かった。もしそうだったら、大変すぎるからね(笑)。

Q.ジェイソン・ライトマン監督の演出で、サプライズだったことはありますか?ゲイリー・ハートが会見をするシーンは、アドリブも多かったとうかがいました。

サプライズはたくさんあったよ。あるシーンをやっていると、アドリブで予定になかった人が入って来てしまうこともあった(笑)。そういった演出もすべて、人生をリアルなものとして描きたかったからなんだ。例えば記者会見のシーンでは、急にコーヒーを運んで来てくれる人がいたり、耳元でなにかを囁いてくる人もいた。すべてがサプライズさ。さらにジェイソンは、あのシーンでエアコンをわざと消したんだよ。それによって、みんな汗をかき出したりもしたね。とてもリアルなシーンになったと思う。

GLAMなオトコ03
Q.役作りのために、たくさんの資料を読んだそうです。ゲイリー・ハートという人物について、印象深かったことはどんなことでしょうか。

実はあまりゲイリー・ハートという人について、よく知らなかったことに気づいたんだ。彼の不倫相手とされたドナ・ライスという女性も有名だけれど、ゲイリー・ハートの転落劇というのは、みんなからちょっとしたジョークのように語られていたと思うんだ。しかし資料を読めば読むほど、先見の明のある人物だと思った。彼は1981年には、まだガレージでコンピューターを作っていたスティーブ・ジョブスと一緒に、ランチをしているんだ。「これからはコンピューターの世界だから、すべての教室に導入しよう」という発言もしている。もしこのような人がリーダーになっていたら、今と違った世の中になっていたと思うんだ。

Q.複雑なキャラクターを演じる醍醐味を、どのように感じていますか。

僕自身は、すごく退屈な男なんだよ(笑)。結婚して、子どもが2人いて、仕事が大好きで。だからこそ、今までに聞いたことのないようなストーリー、キャラクターに惹かれるところはあるかもしれない。あと、挑むことにちょっとした“恐怖”も感じたい。「これ、僕にできるのか?」という恐怖だね。「毎日、なにかちょっと怖いことに挑戦しろ」という格言を聞いたことがあるんだ。僕はとてもラッキーなことに、いつもチャンレジできる仕事に就いたなと思っているよ。

Q.学生時代にジャーナリズムを専攻されていたヒューさんは、ジャーナリストへの道も考えたことがあるそうですね。

そうなんだ。今思うと、演劇はいろいろなストーリーを語ることで、世の中を見ることができる。一方、ジャーナリズムは、真実をあらわにすることで、世界を知ることができる。結果的には、どちらもこの世の中を知るための手段であることに変わりないと思うんだ。ジャーナリストたちには、とても尊敬の念を抱いているよ。プレッシャーのかかる仕事だし、デッドラインがあって、昔よりももっと大変な仕事になっていると思う。聞きたくない質問だって、しなきゃいけないときがあるしね。他の俳優たちよりも、僕はジャーナリストのみなさんに理解のある人物だと思うよ(笑)。

Q.俳優というお仕事をとても楽しんでいらっしゃるように感じます。もし、政治家への要請があったらどうしますか?

答えはノーだね。とてもいい質問だし、よく聞かれることでもあるんだ。今、政治の世界でもっとも重要なのは、マーケティングとブランディングを理解し、確立することだと思う。つまり、自分の政策や資質よりも、SNSへの対策が大事になってきている。もちろん、俳優にとってもイメージ作りというのは大事だけれど、人気がある、有名であるということは、政治家になる理由にはならないと僕は思っているよ。僕は、経済、税金の問題、教育、世界情勢、政治のシステムなど、そういったことを把握できているわけではないしね。例えば、1960年代に、ケーリー・グラントやキャサリン・ヘプバーンに対して「大統領選に出るか?」と聞く人はいなかったと思う。レーガン後に、状況は変わったんだ。知名度がある人、100万人のフォロワーがいる人が、当選するかもしれない世の中にね。

ゲイリー・ハートはものすごく知識人で、僕以上にオーストラリアのことについても詳しいんだ! 政治や教育、すべてをよく知っている。でも誰も彼の言葉に耳を傾けず、100万人のフォロワーがいるブロガーに注目するような世の中だよね。それはとても悲しいことだと思っている。

GLAMなオトコ04
Q.新たなことにチャレンジし続け、役者業を邁進されています。そんなあなたにとっての、“GLAM(魅力的・幸せ)”な時間とはどんなものでしょうか。

家族と一緒にいる時間が、もっとも幸せだよ! 今回の来日も、娘と一緒に来ているんだ。つまり娘は今、学校をサボっているんだけどね(笑)。彼女は7歳のとき以来の来日になるんだけれど、世界で一番好きな国が日本なんだよ。たくさんのことが学べると言っている。僕は今年、「The Man. The Music. The Show」というワンマンショーでワールドツアーに出る予定なんだけど、日本にもぜひ来たいと思っているんだ。歌ったり、踊ったりするんだけど、そういった時間も、僕にとってとても幸せな時間だね。

【プロフィール】
ヒュー・ジャックマン/1968年10月12日、オーストラリア・シドニー生まれ。西オーストラリア演劇学校を1994年に26歳で卒業し、独立系作品でキャリアをスタートした。『X-メン』(2000)で、初めてアメリカ映画に出演。同シリーズでは2017年の『LOGAN/ローガン』までウルヴァリンを演じた。『レ・ミゼラブル』(2012)で、主役のジャン・ヴァルジャンを演じ。ゴールデングローブ主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)に輝いたほか、映画俳優組合賞のアンサンブル賞と主演男優賞にノミネートされた。この作品では、初めてアカデミー主演男優候補にもなった。 実在の興行師P・T・バーナムを演じたミュージカル『グレイテスト・ショーマン』(2017)でも、ゴールデングローブ主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネートされた。


『フロント・ランナー』
2月1日(金)全国ロードショー
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ヒュー・ジャックマン、ヴェラ・ファーミガ、ケイトリン・デヴァー、J.K.シモンズほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト


Writer/Orie Narita

元記事で読む
の記事をもっとみる