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正解のない「どうして?」答えが一つではない「なぜ?」…親は子どもにどう答える?

  • 2019.1.18
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小さな子どもは、大人が当たり前と思っていることに対しても、一つ一つ「なぜ? どうして?」と聞いてくるもの。でも、子どもの好奇心には丁寧に向き合ってあげたいものの、「なんで? なんで?」の質問責めを、時には面倒に感じてしまったり、適当にあしらってしまったり…そうしてしまうことも少なくないのでは?

「ここできちんと、子どもの『なぜ? どうして?』に向き合うことはとても大事なのです」と力説するのは、国立大学法人お茶の水女子大学附属小学校の藤枝真奈先生。

「子どもの好奇心をしっかり受け止めることで、考える力や学ぶ力をグンと伸ばすことができるのです」(藤枝先生)

そんなお茶の水女子大学附属小学校の先生たちが、子どもの好奇心に徹底的に寄り添う視点で、百科事典のような児童書『頭のいい子を育てる なぜ? どうして? ふしぎ366』(主婦の友社)を監修しました。掲載項目は、生活の中からわいてきた身近な疑問がいっぱいで、なかには、答えがないような問いも。

そこで、藤枝先生に、この本に込めた思いをうかがって来ました。


国立大学法人お茶の水女子大学附属小学校

「自主協同」の精神を養い、自分で判断し、他者と関わり合って主体的に学んでいく子どもを育てている。公共性を育む「シティズンシップ教育」や、人間性・道徳性や思考力を育む新教科「てつがく」など、今日的な教育課程に対応したカリキュラムを編成。140年に及ぶ長い歴史と伝統とともに、未来へ拓かれる最先端の教育実践の場は、毎年行われる「教育実際指導研究会」などで、全国の多くの先生方に公開されている。



■「答えは一つではない!」全国の子どもたちから集めた「なぜ? どうして?」

――この本に掲載されている「なぜ?」の疑問は、「どうしてパンツをはかなくちゃならないの?」や「サッカーボールはどうやってまるくなっているの?」など、子どもたちの目線に近い疑問が多いように感じましたが、そこは意識して作られたのでしょうか?

藤枝真奈先生(以下、藤枝先生):多くの子どもたちは年齢が上がるにつれて、「勉強しなくちゃ!」というシーンが増えてくると思うのですが、低年齢のうちは、そういった気持ちにとらわれることなく、普段の生活の中から関心事を見つけて、没頭できる時期だと思います。


この本は、子どもたちが生活している日常での「ふとした疑問の声」を拾い上げて作られています。掲載疑問は、全国の子どもたちから編集部に寄せられたアンケート回答のなかから、声の多かったものを中心に構成されています。

――なかには、「友だちって何?」というような答えが一つではない疑問や、「死んだら何も残らないの?」というような、大人でもちょっと答えにつまってしまうような疑問もあります。こういった疑問を入れた意図は、どんなところにあるのでしょう?

藤枝先生:答えが一つではない問いや正解のない問いは、世の中にたくさんありますよね? 自分が思う答えと他者の思う答えは違ったり、似ているところがあったり…そういった経験を繰り返すことで、子どもはいろいろな発見をして自分の考えを作り、自己を見出していくのだと思います。

正解のない問いについて、この本には、考えるヒントがちりばめられています。「あなたはどう思う?」「お母さんはこう思うよ」などと対話を楽しみながら、子どもと一緒にページをめくってもらえればと思います。





■「本っておもしろい?」子ども発信の疑問を話し合う「てつがく科」

――他者の意見との相違を学びながら、自分の考えを作り出していくのですね。

藤枝先生:そういった学びのために、当校には「てつがく科」という教科があります。この時間では、子ども自身が問いを作り、みんなが輪になって顔が見えるように座り、発言者は次の発言者を指名して、対話をつないでいろいろな意見を出していきます。

そして、お互いの意見の違いを学んだり、違う意見をすり合わせたりして自分の意見を作っていきます。

――例えば、どんなことを話し合うのでしょう?

藤枝先生:私は今、3年生の担任をしていますが、この本にも掲載している「友だちって何?」という問いで話し合ったことがあります。この問いに関しても、「友だちといると楽しい」「いろいろ相談できる」「大切」という意見から、「いなくてもなんとかなる」「一人でも平気」というような意見まで、さまざまな答えが出ました。


また、「友だちっていなくちゃいけないの? 一人じゃダメなの?」という新しい問いも展開していき、非常におもしろい授業となりましたよ。

――公立の小学校でいえば、道徳の授業のようなものでしょうか?

藤枝先生:道徳の授業との違いは二つあります。一つは、道徳には教科書がありますが、「てつがく科」は子どもたちが問いを作る点です。もう一つは、道徳は落としどころがあって、教師が子どもたちをそこに導くものですが、「てつがく科」では落としどころは決めていないという点です。

ただし、単に「みんな違ってみんないい」で終わるのではなく、「私が考えていることと〇〇さんが考えていることはここが一緒だ」などと他者との共通点を探したり、考え方の違いについて話し合ったりすることで、異なる意見を自分の中に受け入れた上で自分の意見を持つこと、自分の中に多角的な見方を持つことをとても大事にしています。

――ただ自分の意見を言って終わるのではなく、他者の意見を受け入れたうえで、改めて自分の意見を考えるのですね。

藤枝先生:「本って、そんなにおもしろい?」という疑問を持っている子がいて、「本はおもしろくない!」という意見からはじまったこともありました。

「どうしておもしろくないの?」と、みんなが聞き出していくのです。この時大切なのは、否定するのではなく、まず問いを立てること。なぜなら、社会の中で他者と共存して、答えのない問いに関して自分が働きかけていくには、最初は「問う」ということがとても大切ですからです。

――確かに、「そんなことないよ。本はおもしろいよ」とただ否定するだけでは、その子には何も響かないでしょうし、こちら側も、なぜつまらないと思っているのかわからないままで、そこからは何も広がりませんよね。

藤枝先生:いろいろ聞いていくうちに、その子は「本の中に、わからない言葉があるとおもしろくない」と言いました。

そこで、今度は「わからない言葉があったらどうしたらいいか?」という話になり、ある子は「だいたいの話がわかれば、わからない言葉は飛ばしてしまってもOK」という意見を出し、ある子は「お母さんに聞く」という意見を出しました。

そして最終的に、「本がおもしろくない」と言った子は、対話しながら読み方や考え方の選択肢が増えたのか、以来、本当に本が好きになったのですよ。


――この姿勢は、学校の授業だけでなく、家庭でも同じですね。

藤枝先生:もちろんです。子どもの考えに対して親が「それ、違うんじゃない?」と否定してしまうと、それで終わってしまいますけれど、「どうしてそう思ったの?」と一言引き出してあげると、ぜんぜん違う方向に広がっていくと思います。

私自身は、これからの世の中に大切な力は、自分の頭で考えて、他者と対話することができる力だと思っています。そして、子どもたちのその力は、きっと、より良い社会を作る力につながっていくと思います。

親としてできることは、親自身が自分の頭で考えて、より良い社会を作っていく姿勢を見せることだと思っています。難しいことではなく、身近なことで良いのです。

例えば、落とし物が落ちていたら、だまって見過ごすのではなくて、きちんと警察や駅の係の人に届けるなど、ごく普通のことで。そういった姿を子どもに見せることが大事なのだと思います。そういう当たり前のことに気づくヒントも、この本の「こころ」のジャンルにたくさん紹介されています。





■子どもの言葉や疑問「まずは全部受け止めて」


――一般的に、大きくなるにつれて、物事に対しての純粋な疑問は減っていくことが多いように思いますが、それを損なわないために、親としてできることは何でしょう?

藤枝先生:子どもって、小さいうちは思った通りのことを言いますよね?

例えば、小さい子が丸い月を見て「お皿!」と言った時に、お母さんが「月がお皿のワケないでしょう?」と返してしまったら、その子は二度とそんなことを言わなくなると思うのです。

でも反対に、「本当だ。お月さま、丸くてお皿みたいだね」と返してあげれば、子どもは自分が言ったことを受け止めてもらえたうれしさと、「本物じゃない時は『〇〇みたい』」と言えばいいんだ」というふうに適切な表現を学ぶこともできます。

そうやって子どもが感じたこと、表現したことを、親が一つ一つきちんと受け止めてあげることがとても大事だと思います。

――ここでも、否定はNGということですね。

藤枝先生:少し大きくなると、知りたいことや疑問に思うことを、子どもの方からどんどん聞いてくるようになると思います。その時に「どうしてだろうね」と受け止めて、「私も知りたいから調べてみようか」と一緒に考えたり調べたりすることを手伝ってあげたらいいと思います。

そこで親が調べる姿を見て、子どもは、「何か調べる時は図鑑や本の目次や索引で探せばいいのか」などと学ぶこともできるでしょう。そんな時に、この本を役立ててもらえればうれしいですね。

他者の意見が自分と違う時に、単に否定するのではなく、なぜそう思うのか問う姿勢。一見当たり前で簡単なことのように思えますが、本当にそれができている大人って、意外と少ないのではないでしょうか? 子どもが感じたこと、表現したことをきちんと受け止め、それを大人が広げてあげることの大切さを、改めて学ばせていただいた取材でした。

参考図書:
『頭のいい子を育てる なぜ? どうして? ふしぎ366』(主婦の友社)


お子さんからの「なぜ?どうして?」に毎日ひとつずつこたえることで、好奇心を育て、モノの考え方や見方など、学ぶ力をグングン伸ばす。「ことば」(国語)、「かず」(算数)、「しぜんかがく」(理科)、「よのなか」(社会)、「おんがく」(音楽)、「アート」(図工)、「せいかつ」(家庭科)、「からだ」(体育)、「せかいのことば」(外国語)、「こころ」(道徳)と、小学校での学びのきっかけになるコンテンツが満載!写真やイラストが満載で、ひと目でわかりやすい構成。

取材・文/まちとこ出版社N


(まちとこ出版社)

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