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立田敦子が選ぶ、愛について問いかける映画3本。

  • 2018.12.21
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恋愛映画が豊作だった今年。去年に始まった#MeTooムーブメントなどの影響もあり、ジェンダーやダイバーシティなどを意識した作品もヒットした。今年公開になった映画を振り返って、映画ジャーナリストの立田敦子さんがベスト3本を解説コメントとともに紹介。立田さんが選ぶ、愛とは何かを問いかける恋愛映画とは?

ダイバーシティへの意識を高める恋愛映画。

「2018年は、音楽映画やホラー映画などジャンル映画が盛り上がった年でしたが、久々に恋愛映画が豊作な年でもありました。2018年の恋愛映画ということで、ベスト3を選んでみました。昨年始まった#MeTooムーブメントの影響も反映され、映画界ではさまざまな意識改革が進行中です。アカデミー賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』にいたっては、もはや性別や人種どころか異生物間の愛。ダイバーシティを象徴するようなラブストーリーです」

『シェイプ・オブ・ウォーター』

冷戦下の1962年アメリカ。政府の研究機関で南米アマゾンで捕らえられ、残酷な扱いをされている異生物と清掃員の女性イライザとの愛を描く。

ハリウッドでも活躍するメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督は、スペインの内戦下を舞台に『デビルズ・バックボーン』、『パンズ・ラビリンス』など抑圧された人々を主人公にダークファンタジーを撮ってきたが、本作はそれらの作品の集大成でもあり、かつ、大人の愛という新しい領域に踏み込んだ野心的な作品。とある理由から声を発しないイライザと言語を持たない異生物が、お互いを理解し、心を通わせ合う姿は愛の本質に迫るもので美しく、涙を誘う。映画史に残る傑作。

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●監督・脚本/ギレルモ・デル・トロ●出演/サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、オクタヴィア・スペンサー、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、ローレン・リー・スミス、ニック・サーシー、デヴィッド・ヒューレット●2017年、アメリカ映画●Blu-ray¥2,057●販売元/20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 

 

『ファントム・スレッド』

1950年代のロンドンを舞台に、有名オートクチュールデザイナー、レイノルズと若いウェイトレス、アルマの愛憎を描く。レイノルズから見初められ、愛人、ミューズ、妻と上り詰めたものの、完璧主義で仕事中毒の夫に満たされないアルマの“秘策”がスゴイ!泣き寝入りせず、コントロールフリークの男を逆にコントロールするために手段を選ばない女の執念。“闘い”にも見えるが、まんまとアルマの手に落ちたレイノルズの顔に浮かんだ安らぎの表情に、理屈では語れない男女の愛の深淵を見ました。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』という大傑作を生んだポール・トーマス・アンダーソンの人間洞察力は半端ではありません。主演のダニエル=デイ・ルイスはこの作品をもって引退を表明。残念です!

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●監督・脚本/ポール・トーマス・アンダーソン●出演/ダニエル・デイ=ルイス、レスリー・マンヴィル、ヴィッキー・クリープス、ジーナ・マッキー、ブライアン・グリーソン、ハリエット・サンソム・ハリス●2017年、アメリカ映画●Blu-ray+DVDセット¥4,309●発売元・販売元/NBCユニバーサル・エンターテイメント

『君の名前で僕を呼んで』

1980年代のイタリアの田舎町を舞台に17歳の少年エリオのひと夏の初恋体験を描く。それなりに女の子たちとも“青春“している彼だが、大学教授の父の下で夏の間だけ助手を務めるアメリカの大学院生オリヴァーに出会い、感情を揺さぶられる。思いがけない自分にとまどいながらも、思いをぶつけていくエリオの姿を繊細に演じたティモシー・シャラメになんといっても釘付けになる。初恋を体験したすべての人に、一度しかない感情体験のきらめきと美しさを思い出させてくれる。同性愛に対して今日ほどに社会が寛容ではなかった時代で、それがふたりにとって大きな障害だけれど、素直に自分の気持ちに向き合うことの大切さを説く父親、青春の通過儀礼に傷つく息子を包み込むように見守る母親のあり方にも感動。

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●監督/ルカ・グァダニーノ●出演/ティモシー・シャラメ, アーミー・ハマー, マイケル・スタールバーグ, アミラ・カサール●2017年、イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ映画●配給/ファントム・フィルム

 

Atuko Tatsuta / 立田敦子大学在学中に編集・ライターとして活動し、「フィガロジャポン」のほか、「GQ JAPAN」「すばる」「キネマ旬報」など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ国際映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

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