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国内外のアートファンを魅了する、毛利悠子の個展。

  • 2018.11.20

転がる石の力を昇華する、オーケストレーション。

『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』

2018年、パレ・ド・トーキョーで開催された『Childhood』の展示風景(参考画像)

『パレード』11~17年。リヨンのポンピドゥ・センター・メッス『ジャパノラマ』展より(参考画像)

この数年、ヨーロッパやアジア、キューバまで世界各都市でひっきりなしに展覧会に招聘され、いま最も注目されるアーティスト、毛利悠子。そんな彼女の、初の美術館での個展が開催される。普段は目に見えないが、地上に存在する電気や磁力、重力などの微弱なエネルギーを抽出し、身近な日用品やありふれた物質を媒介に循環させる毛利の作品は、無機質な物体が生き物のように呼吸するライブインスタレーションだ。ハタキやスプーン、電球やふいごが奇天烈な運動を見せ、微かな音を発する展示空間の背後には、壮大にして緻密なオーケストレーションの技術とセンスが介在している。

本展のため、天然記念物である名勝・奥入瀬渓流を散策した毛利は、約20万年前の噴火で崖から落下した岩が、何百年もの歳月をかけて、いまもなお超スローモーションで転がり続けていることを知った。そして、岩と水という自然界の物質同士の抵抗によって生まれた奇跡的な現象に、強いインスピレーションを受けたという。

これまで流動するエネルギーと「永遠の運動体」について考察してきた彼女が、ここでは、アンモナイトの化石からケーブルのより線にいたる、さまざまな渦や回転体、螺旋運動にフォーカスする。いままでになかった方法論による装置空間や、音響を使った大規模な新作彫刻に挑もうとしている。さらには個人を超越した、社会の変動や天体の運行といった大きな力を巡る、独自の文明批評的なコメントを含む展覧会となりそうだ。また十和田市内の街中にも展示が飛び火するというから楽しみ。いま、乗りに乗っている毛利が、アートや音楽、科学といった領域の境界を超え、まさに転がる石のように運動し続ける活動の中で見出した、新たな自然観に期待したい。

『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』会期:開催中~2019/3/24十和田市現代美術館(青森・十和田)営)9時~17時休)月(12/24、1/14、2/11は開館)、12/25~1/1、1/15、2/12一般¥1,200●問い合わせ先:tel:0176-20-1127http://towadaartcenter.com

※『フィガロジャポン』12月号より抜粋

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