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スクリーンの中の「美」が意味すること。

  • 2018.11.17
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スクリーンの中の「美」が意味すること。
2018.11.17 08:00
『紳士は金髪がお好き』(53)のマリリン・モンローや『キャバレー』(72)のライザ・ミネリ、『アメリカン・ハッスル』(13)のジェニファー・ローレンスetc.。誰にでも、忘れることのできないスクリーンの中の女性たちが存在するはずだ。その女性像を作り上げるビューティーの意義にフォーカスする。

脳に焼きつくそのキャラクター。

【全13カット】映画における女優のビューティールックをもっと見る。


『アメリカン・ハッスル』(13)では、ジェニファー・ローレンス演じる豪快な妻ロザリンが、友人たちに彼女の爪の匂いを嗅ぐよう頼むシーンがある。


「トップコートって、香水のようだけど、どこか腐敗したような匂いもあるのよ」と。


欠けた赤いマニキュア、ゴールドのアイシャドー、そしてこんもりとしたビーハイブヘア。それは、彼女の心の荒廃と高揚が混在する心の内の象徴だ。エイミー・アダムス演じる夫の愛人、シドニーと対峙する際、ロザリンは、「夫は決して私のもとを離れることはない」と告げる。そして前述のトップコートについての言葉を発するのだ。


「彼はそれを求めていつも戻ってくるの。お気に入りの香水のように、嗅がずにはいられないの。たとえ酸っぱい匂いがしたとしても」


そのロザリンの魅惑的な容姿は、役柄に付け足されものなどでは決してない、彼女の人物像を描く上で最も重要な要素となっている。


『紳士は金髪がお好き』(53)のマリリン・モンローのセクシーなレッドリップや、『上海特急』(32)のマレーネ・ディートリヒのペンシルで描いた細い眉毛など、映画に登場する印象的な美は、時代を特徴付けるものだ。


そしてそれは、トレンドを反映する文化のバロメーターでもある。『スター・ウォーズ』シリーズのレイア姫のシニヨン、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)でマーゴットを演じたグウィネス・パルトロウのボブカットと強めのアイメイク。『ブルーベルベット』(86)でイザベラ・ロッセリーニが魅せたレッドリップとパウダーブルーのアイシャドウなど。数多くのポップカルチャーのアイコンを生み出してきた。

内面の変化=容姿の法則。


容姿の変貌は、登場人物の人格形成における重要な要素である。『麗しのサブリナ』(54)でオードリー・ヘプパーンは、内気で純情な少女の時にパリへ旅立ち、洗練された女性として戻ってくる運転手の娘役を演じた。彼女のメイク---キャットアイ、手入れの行き届いた濃い眉毛、赤いリップ---は、服装と同様、内面の変化を示す大きな役割を果たしていた。


ヒッチコック監督の『めまい』(58)で、ジェームズ・スチュアート演じる悩める刑事スコティが、新しい恋人のジュディを、亡くなったかつての恋人であるマデリンのような姿に仕立て上げるシーンがある。髪をアイシーブロンドに染め、口もとにはペールピンクのリップを。ジュディは彼の狂気じみたリクエストに答え、服からヘアスタイル、メイクと何もかもをマデリンと同じように似せていくのだ。

演技を超えて物語るもの。


また、映画のヒロインにとって、メイクは世の中の苦しみから身を守る鎧のようなものだ。『キャバレー』(72)でライザ・ミネリが演じるサリー・ボウルズは、自身の生活が崩壊していく時でさえも、派手なまつ毛、エメラルドグリーンのマニキュア、ペンシルで描いた魅力的なほくろを付けることを欠かすことなく登場している。


日本でも公開中のジェシカ・チャステインが主演する『モリーズ・ゲーム』は、トップアスリートがポーカーゲームの経営者になった女性のストーリーだ。


ジェシカ演じるモリー・ブルームは、ポーカーゲームで男性陣に軽視されないようにするには、ブロードライした滑らかな髪とスモーキーアイによる美しい容姿を武器にする必要があることに気付く。彼女にとって、美しさとは、自分を改革するための最も強力なツールだったのだ。

Text: Radhika Seth

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