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呼吸が脳と体を変える新パフォーマンス論① 約90%の人は正しい呼吸ができていない!

  • 2018.11.16
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Women's Health

「あなたは正しく呼吸していますか?」。こう聞かれて、「呼吸ならいつも通りしているけれど……」「そういえば呼吸が浅くて、もしかして酸素不足かもしれない」と思ったら、ちょっと待って。実はどちらも、グレーな回答。現代人は満足に呼吸できていないと言われる昨今、しかし呼吸の実態についてきちんと知る機会は少ない。私たちヒトの生命をつなぐ基本であり、日々の行動や運動のパフォーマンスも左右する呼吸のチカラ。海外と日本で活躍する、気鋭のアスレチックトレーナー近藤拓人さんを迎え、その可能性と正しいケアについて伺う「新・呼吸論」。第1回目は呼吸の基本について。

ヨガやマインドフルネスなどの瞑想、筋トレなど「呼吸」に着目するワークアウトが増えている。実際に、一流アスリートたちもマインドやパフォーマンス強化に「呼吸」を意識したメソッドを取り入れているという。

「安定したパフォーマンスをしているアスリートたちは、みな呼吸も安定しています。安定した呼吸は、けがや肩凝り、腰痛、不眠といったパフォーマンス低下の原因にもなりえます。それだけではありません。体だけではなく、生活の質の向上の観点からも呼吸は今、世界的に注目されているのです」と言うのは、アメリカの大学でアスレチックトレーナーの資格を取得し、現在は国内外問わずプロアスリートのアスレチックトレーナーも務める近藤拓人さん。

現代人は“呼吸過多”状態になっている!?

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Women's Health

ただこの呼吸、生まれてから意識することなくできてしまうが故に、長年の間違ったクセが染みついてしまっている人が多いと近藤さんは指摘する。

「今まで、さまざまな方の呼吸法を見てきましたが、およそ90%の人は正しい呼吸を行っていません。呼吸というと、新鮮な空気を深くたくさん体内に入れ込むことが大事と考えている人が多いと思います。

深呼吸が体にいいというのはその代表的な例です。でも、多く酸素を取り込めばいいというわけではありません。正しい呼吸ができてない90%の人は、適切な呼吸よりも約2~3倍は多く呼吸していると言われています。簡単に言えば、空気を吸いすぎている“呼吸過多”な状態にあるのです」

深呼吸や胸いっぱいに空気を吸い込むことはいいこと、と思いがち。しかも、最近は、酸素カプセルや酸素スプレーなどもあって、酸素を取り込むこと=健康的という印象があるが、一体どういうことなのだろう?

「酸素が薄い高地や心肺機能に疾患がある場合以外は、酸素摂取量を増やす必要はありません。健康な人が、1気圧の平地で酸素を過剰に吸っても酸素飽和度が上がることはないですし、脳への供給量は増えません。

逆にぜんそくなど疾患がある人ほど、息を多く吸う傾向があります。他にも、心疾患や糖尿病、高血圧や睡眠障害などにも呼吸過多が影響していると言われています」

呼吸過多だと体にどんな影響があるの?

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簡単にメカニズムを解説すると、こんな流れになる。

呼吸量が増えると、体内に酸素が多く取り込まれる→酸素が体内に多くなると、二酸化炭素量が体内で低下する→血液がアルカリ性に傾くと体は二酸化炭素不足になる→血液中のヘモグロビンと結びついた酸素がうまく細胞に運ばれなくなる→酸素供給がうまく働かず、不調が現れる。

二酸化炭素の重要性にも目を向けるべき、と近藤さんは指摘する。「みなさん酸素ばかりに着目し、二酸化炭素はいらないものと思いがちですが、体内で重要な役割を果たしています。

酸素を全身に運ぶには血液中のヘモグロビンが不可欠ですが、そのヘモグロビンから酸素を切り離して細胞一つ一つに送り込む働きは、二酸化炭素が行っています。

一時的に二酸化炭素の量が少し変わる程度なら問題ないのですが、常に酸素を多く取り込むと体は二酸化酸素不足になり、酸素を多く吸っているにも関わらず全身への酸素供給がうまく働かくなってしまうのです」

慢性的な呼吸過多によって体に現れる症状としては、下記のようなものが挙げられるという。

●首や肩周りの筋肉が過剰に働いて、姿勢の乱れや体を支える能力が低下する ●免疫力が低下する ●交感神経が優位になり、緊張状態、不安感、恐怖感が増える●疲れがとれにくくなる

呼吸はヒトの生命線で日々のパフォーマンスを司る重要なファクター。まだまだ知られていない呼吸の正しい知識について、これを機会に学んでみて。

次回は、呼吸過多のセルフチェックについて、近藤さんにさらに深いお話を伺う。

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