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俳優「青木崇高さん」が大切にする家族観と人生観について

  • 2018.11.30
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映画「かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-」で、ヒロイン有村架純さんの夫役で、キーパーソンとなる修平を演じた青木崇高さん。ご自身の思う家族観や人生観について語ってくれました。

自分が家族の中にいたらわからないけれど、人の家族のことはすごい見える

――この映画は、家族をテーマにしていますよね。青木さんにとって家族とはどんな存在ですか?

「家族って自分が家族の中にいたらわからないものだと思うんです。この映画の面白いところは、それぞれが家族という認識がなくても1日1日を一生懸命生きてる人たちの集合体がはたから見ると家族になってるってことだと思うんですよね。血が繋がらない家族の再生物語がテーマなので。僕自身も家族の中にいたらどんな存在なのかわかりにくい。でも不思議なもんで人の家族のことはすごい見えるんですよね。だからこの映画は、他の家族像を見ることによってちょっと立ち止まって自分や自分の家族のことを考えることができるのかなと思います」

――修平(青木崇高)との思い出が、家族を一体化させるような気がしています。

「“思いのら旋”というんですかね。この家族は修平への思いが交錯しあった集合体だと思うんです。修平が死に、肉体的にはいなくなったけど、修平がいたという記憶がある以上、やっぱりその糸は生きているわけで、そういう思いを共有しあえるのが家族かもしれないですね」

――映画を見るときに、この家族の誰に感情移入するかによっても見方が変わってきそうですよね。

「そうですね。老若男女、いろんな人がいろんな角度から感情移入できるので、僕くらいの年齢なら自分の親は実はこういうことを思ってたのかもということを感じたりする。そういう各年代の鏡的な存在の映画になっている面もあるので、ちょっとした日常において優しくなれる瞬間があったらいいねということを、父親役の國村(隼 )さんがおっしゃっていたと思います」

青木崇高さん×TRILL

表現者としてカメラの前での立ち方としては本当に父親でありたいと思っていました

――息子役の歸山竜成さんと青木さんとの関係づくりはどのようにされましたか?

「半成人式の撮影の時、僕はすでにクランクアップしてたので(吉田康弘)監督にふたつのメッセージを託したんです。ひとつは竜成くんの役者の先輩という形で、『もし感情につまずくことがあったら監督に全部話せばいい。お前の中にちゃんと気持ちはあるから待ってもらえばいいし、落ち着いてやればできるよ』っていうもの。もうひとつは父親としてのメッセージで、『今までありがとな、ずっと楽しかったよ。一緒にカレー食べたよな、一緒に電車に乗ったの楽しかったよな。いろいろあるけど楽しくやってくれてると嬉しいよ』っていう、実際の感情からのアプローチを後押しするもの」

――監督はどちらを渡したんでしょう?

「もし駿也(歸山竜成)が撮影で気持ちが突っかかるようなことがあったら、監督の判断でどちらか渡してくださいって頼んだので僕はどちらの手紙を渡したのかはわからないですけど、本番では感情がバーンと出てきたそうです。竜成くんはその時、僕があげたNゲージをずっと握りしめていたらしいです。後日、竜成くんから手紙をもらったんですけど、僕の手紙について書いてあってすごく嬉しかったです」

――本当にお父さんのようですね。

「表現者としてカメラの前での立ち方としては本当に父親でありたいと思っていました」

社会で生きている以上、自分の価値観だけで生きている人はほぼ皆無なんじゃないかな

他人の価値観に引っ張られることはあるけど、それも自分なんだと思う

――映画の中でシングルマザーの先生が保護者の方に嫌味を言われるシーンがありました。TRILLのユーザーの中にも、社会の一般常識や他人がどう思うかということを気にしてしまうという意見があります。そのような悩みに何かアドバイスはありますか?

「難しいですよね。社会で生きている以上、人に影響されないわけがないから、そういうことは誰にでもあることだと思うし、全く他人と混じり合うことなく、自分だけの基準や価値観だけで生きている人なんてほぼ皆無なんじゃないですか。僕も他人の基準で生きてたりしますよ。他人軸とか自分軸とかいろいろありますけど、それを混ぜて総合で考えたらいいと思います。それが自分らしい生き方だという認識ができれば、それだけでいいんじゃないかな」

――特別に悩む必要はない?

「そうです。人の価値観の中で生きていたって楽しければいい、自分が納得さえしていればいいんです。他人の言葉にがんじがらめになっちゃってるんだったら、そんなことはサッサとやめてしまった方がいいと思いますけど、突き詰めていったら実は中身もないような言葉だったりするので、そういう妙な言葉や概念に縛られずに、気楽にやっちゃいなっていう感じですね。僕だって他人の価値観に引っ張られるなんて大いにありますけど、それが自分なんじゃないのって思っています」

――例えば社会的なべき論、“男ならこうあるべき”とか“役者ならこうあるべき”みたいなことは、青木さんは気になりますか?

「あまり気にならないですね。自分に“べき”をつけるとしたら、“そういうこだわりは持つべきでない”っていうくらい。だって他人が思う“べき”をしたからって自分の人生、誰かが最後まで面倒見てくれるわけじゃない。ただ、その“べき”というところを歩むことで安心できるという気持ちもわかります」

言葉なんて真正面に受けなくていい

――自分は常識から外れてないと思える安心感というか。

「そうです。そうするとちょっと楽になるというか。自分らしくという概念もよくわからないですけど、自分の納得する道を歩くことは覚悟もいるしパワーも使いますから、“べき”という言葉も自分に都合よくうまいこと使えばいいんじゃないですか(笑)」

――なるほど。

「結局は言葉に過ぎないですから。単純に言葉とか概念とかで自分を苦しめたらもったいない。言葉なんて真正面に受けなくていい。もっと楽になって、どんな状況になったとしてもよっぽどじゃない限り笑えたりすると思います。しんどい事実であっても、考え方や見方で変わるっていうこともあるじゃないですか。考え方や見方を変えるにもパワーが必要ですけど、命を取られないくらいだったら何とでもなるんじゃないですか。概念に縛られる必要なんてない。深呼吸すればいいです」

“らしい”というのは人が押し付ける概念じゃないですか。占いと一緒でいい言葉だけすくえばいいと思う

自分の血となり骨となるような経験なら喜んでしんどい道を選ぶ

――“自分らしい”もよくわからないとおっしゃいましたけど、まさに青木さんらしさとはどんなところなのかお聞きしようと思っていました。

「“らしい”というのは人が押し付ける概念じゃないですか。例えば着ている服を誰かに『それ似合ってるね、あなたらしいね』って言われたら、ああ、そういうもんかなあって、そういうふんわりしたもんだと思うんですよね。“らしい”と言われることで気持ちがシャキッとするならいいですけど、“らしさがない”とマイナスに思う必要はない。占いと一緒でいい言葉だけすくえばいいんです。結局、言葉なんていいものだけすくって(笑)。マイナスになるようなことは蹴とばせばいいんです」

――例えば人生で何かに迷って選択しなければいけないときに、何を基準にして選びますか?

「もちろん、茨の道の方ですよね。って言えたらかっこいいですよね(笑)。でもしんどい道の方がいいっていうのは先輩からいろいろな話を聞いていて実際思うことです」

――人間、楽な方に流れがちじゃないですか?

「楽というのは、瞬間的な楽か総合的な楽かということにもよりますよね。今、苦しくないけど、後で苦しくなることもある。だったら今、苦しくなった方がいいのかなと。その後が楽になると思ったら、今が苦しくても楽しいじゃないですか。自分の血となり骨となるような経験だったらもう喜んでしんどいことしますね。それは苦労ではないんですよ。あえて頭をバカにしてしんどい方に飛び込んじゃったらいいんです(笑)」

――話は変わりますが、青木さんの理想の女性像を教えてください。

「それは自分の奥さんしかありえないですね」

――理想の夫婦という憧れの目で見られることも多いと思いますが、仲良くいられる秘訣はありますか?

「まだ数年ですし、そんな人に言えるほどではないですが、この人とずっと歩んでいこうと思った人を選んだことを実感しているので、1日も長く楽しい日々を過ごせればなと思っていて。ただそれだけですね」

皮膚感覚を大切にして楽しく過ごしてほしい

――最後にTRILLのユーザーにメッセージをお願いします。

「女性にはそれぞれの年代に起きるターニングポイントがいろいろありますが、今は情報が手に入りやすいようで実は情報が氾濫しすぎて入りにくい時代だと思うんです。だからこそ自分の経験値を増やしていった方がいいと思います。もしいざというとき、誰かを頼るとしたらちゃんと心で伝えてくれる人の言葉が信用できると思いますが、そういった皮膚感覚で得られることを大切にして楽しく過ごしていってください。って、僕なんかが言うとえらそうですけど(笑)」

映画『かぞくいろ―RAILWAIS わたしたちの出発―』

Movie Director:Yohei Takahashi (f-me)
Writing:Mayuko Kumagai
Edit:TRILL編集部

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