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ほんのりモード感を漂わせる、北欧ラヴァーのミニマル空間。

  • 2018.10.5
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Mathilde Bulteau/マチルド・ビュルトーライフスタイル・エディター

13区の住宅街に建築家の夫、20歳の長女、19歳の長男、そして猫のティエヌーと暮らすマチルド。最近はフォンテーヌブローの森に近いウィークエンドハウスで過ごす時間が増えているそうだ。自然を愛し、ガーデニングを趣味にする彼女は、広い庭を花で満たし、野菜を育てて、とカントリーライフを満喫している。もっともこの家にはひとつ問題が。昔ながらのフランス・スタイルの館の中、おびただしい量の古いオブジェで溢れかえっている。

「見ていて耐え難いほど、いっぱいなの。だからパリのアパルトマンは好きなものだけを飾って、不要品は捨てたり、知り合いにあげたり、あるいは売ったりして、すっきりとした余分のない空間を保てるように努力しているのよ。建築家の夫は私にインテリアを任せてくれていて、結果には満足しているようよ」

案内されたリビング・ダイニングは白い壁に囲まれ、 家具は木の素材が多い。その中でもいちばんのマチルドのお気に入りは、リビング・コーナーの中央に置かれた小さな丸いテーブルである。

「ノルウェーで1962年にデザイン賞をとった物で、バーなのよ、これ。綺麗な家具でしょう。上の半円が扉になっていて、中にグラスやボトルなどが入れられるの。両親のものだったのだけど、彼らはこの家具に全然執着がなくって……。それで結婚するときに譲ってもらったの」

ノルウェーのRasmus Solberg社のバー・テーブル。

蓋は半円だが、内側は回転し円形すべてが収納に使える。中央部分はボトルが収められるように深さがある。

一家が団欒するリビング・コーナー。マチルドの趣味は読書で壁一面が書棚だ。テレビはさほどこの家では大切な品ではないし、なるべく目立たないようにと書棚に組み込まれている。

フランス生まれのマチルド。父親はフランス人で、母親はノルウェー人のハーフである。北欧テイストのデザインが彼女は大好きで、それが家のインテリアにも反映されている。ノルウェーの祖父が亡くなったときにもらったという小さな木のテーブルも大切にしているし、ハビタでみつけたという収納家具もテーブルもこの空間に置かれるとまるで北欧の品のよう。

「家ではよく人を招いてディナーをするのよ。この大きなテーブルは使わないときは壁側に寄せているけれど、8〜10名が座って食事ができるサイズ。長いこと使ってるのだけど、とても重宝しているので手放すつもりはないわ」

長年愛用しているテーブルはハビタ、椅子はイケア。壁の額は父親の友人の作品だそうだ。マチルドが好んで飾るのは、百合のような洗練された花より、素朴な花。カントリーハウスから持ち帰って飾ることもある。

リビングに置かれた木製家具。ムンクの作品、ガラスの器などマチルドの好みで飾られている。

テーブルはノルウェーの祖父の遺品。その上に置かれているのは、亡くなった従兄弟が描いたカントリー・ハウスの水彩画だ。

飾られているオブジェにしても、北欧の品が少なくない。母国を代表する画家ムンクの作品の複製を額に入れ、書棚にはスウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマンの写真やムーミンを生み出したトーベ・ヤンソンの写真が。スウェーデン製の陶器のユーモラスな幽霊は、家の守り神なのだという。また、透明感と見た目の軽さに惹かれ、ガラス製のオブジェも暮らす間にアパルトマン内で数を増やしている。

家の守り神の幽霊たち。

ガラスのオブジェをコレクションするマチルド。

書棚の一角にはお気に入りのディプティックのルームパフューム、ラデュレのパッケージなどとともに、スウェーデン映画の『ファニーとアレクサンデル』のDVDも。

あまり色のないダイニング・ルームに比べ、キッチンは黄色でまとめられていて、なかなかカラフルだ。一家がこのアパルトマンに越してきた時、子どもたちがまだ小さかったので、陽気なスペースにしようと黄色にペイントし、以来、塗り替えることがあっても色はいつも同じ黄色。

最近、この黄色の壁の前に日本製のティーセットが置かれるようになった。というのも、沖縄、京都、東京と一家は去年の夏のバカンスを日本で過ごし、さまざまな品をお土産に持ち帰ったのだ。 マチルドにとって日本は、17歳のモデル時代に仕事をした懐かしい国。久しぶりに訪れた日本を、家族とともに暑さにもかかわらず大いにエンジョイした。

子どもたちが大きくなるまで毎晩7時30分に一緒に夕食。このキッチンのテーブルは彼女が子どもたちと多くの時間を過ごした場所だ。

カントリー・ハウスから持ち帰ったリンゴ。別荘の庭ではさまざまな果実が収穫できる。梨、プラム、木苺……収穫した果実で、マチルドはジャム作りを楽しむ。

ノルウェーの典型的なパン収納ボックス。祖母が使っていたものだそうだ。

昨年の夏に3週間滞在した日本から持ち帰った陶器を日常使いしている。

日本のモデルエージェンシーのコンポジットをはじめ、結婚式の写真や日本で買った天使など思い出いっぱいの品々。

マチルドはつい最近までフレンチ・ヴォーグ誌の編集部に勤めていた。カリーヌ・ロワトフェルド前編集長時代にアシスタントとして仕事を始め、エマニュエル・アルトに代が変わってからは編集長アシスタントをしながら、編集の仕事もスタート。主にキッズ系の仕事を多く手がけたが、いまはフリーエディターとしてインテリアやアートなど徐々に活動分野を広げているところだ。

彼女のアパルトマンの壁をケイト・モスの写真が飾り、エントランス・ホールにイヴ・サンローランの赤いハートのオブジェが置かれているのは、ヴォーグ誌勤務代の時代のちょっとした思い出というわけである。

カリーヌ・ロワトフェルドのオフィスに置かれていたイヴ・サンローランのハート。

黄色にペイントされたトイレに設けられた香りのギャラリー。

モードなタッチが加わったミニマルなインテリアの中で、一家は団欒の温かい時間を過ごしているのだが……。

「この2〜3年、ジェローム(夫)はよく引っ越しを口にするのよ。というのも、大柄の家系なので子どもたちが大きくなって、空間が狭く感じられるようになったからなの。広い家に引っ越すか、あるいは子どもたちが独立するか。いまのパリで広い場所を探すのはなかなか大変だから、子どもたちが出て行くのを期待してるのだけど……。親と子の仲が普通以上に良い一家なので離れ離れになるのが難しいの」

子どもたちは部屋が小さいので、寝るとき以外、ほとんどリビングで時間を過ごす。といっても、家族一緒に何か特別なことをするわけではない。同じ空間に一緒にいるだけで皆楽しい様子。夫妻の寝室には子どもたちが生まれたときの写真が飾られ、ベッドの上では猫のティエヌーがのんびりとお昼寝し……この幸福感漂うアパルトマンには確かに余分な装飾は不要。ミニマルなインテリアがよく似合っている。

長男マルタン、長女リヴと共に。仲良し親子だ。

夫妻の寝室。

日中、夫妻の寝室を占拠する恥ずかしがり屋のティエヌー。

長女の出産(中央)と長男の出産のときに撮影された写真はマチルドの宝物だ。

父方の祖母からの贈り物は典型的なフランスの絵画。ベッドサイドに愛用のプラダの香りと共に。photos:Mariko OMURA

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