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芸術とは人と人を繫ぐもの。ふたりのアーティストのウィットに富んだ冒険。『顔たち、ところどころ』【今月のプロ押し映画!】

  • 2018.9.28
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芸術とは人と人を繫ぐもの。ふたりのアーティストのウィットに富んだ冒険。『顔たち、ところどころ』【今月のプロ押し映画!】
2018.09.28 17:00
年の差54歳。映画監督アニエス・ヴェルダと、写真家でアーティストのJRの凸凹コンビが、フランスの田舎街を旅しながら育んだ、ハートウォーミングな友情ドキュメンタリー。

(C)Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016.

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1950年〜60年代にはヌーヴェルヴァーグの紅一点として活躍し、『5時から7時までのクレオ』(61)や『幸福』(65)などの名作を遺したフランス映画界の重鎮アニエス・ヴァルダ。最新作『顔たち、ところどころ』は、今年90歳になるアニエスが、気鋭のアーティストJRとともに田舎町を旅するロードムーヴィースタイルのドキュメンタリーだ。


JRは巨大ポートレイトを壁や建物などに貼るストリート・アートで注目されたアーティストだが、その場で人々の巨大ポートレイトを撮影し即座にプリントアウトできるJRの特製“フォトトラック”に乗って、ふたりはフランスの田舎の街を旅する。さまざまな人に出会い、写真を撮って大きくのばして貼り出すプロジェクトは、まさに人生における一期一会の素晴らしさの象徴のようでもある。写真やアートを通してなにを物語るのか。ふたりのアーティストの真の交流を通して、私たちは多くのものを感じ取ることができるだろう。


映画の最後には、年配者を気遣ってくれたJRへの御礼として、アニエスは映画界の“巨人”であり、アニエスにとっては旧友でもあるジャン=リュック・ゴダールと引き合わせるために、スイスのゴダールの家を訪問することを企画する。その顛末は映画を見てのお楽しみだが、54歳差のふたりのアーティストの友情もこの作品の大きな見どころ。心がふわっと温かくなる。


この作品は、2017年のカンヌ国際映画祭でドキュメンタリー賞を受賞後、フランス語作品ながら、米国でもヒットし、アカデミー賞ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。同時にアニエスはアカデミー賞名誉賞を受賞したが、『顔たち、ところどころ』が彼女の晩年の代表作となることは間違いない。

『顔たち、ところどころ』

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http://www.uplink.co.jp/kaotachi

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