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冷たい風【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第21話】

  • 2015.3.2
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翌日、会社の帰りに鮎子に揺れる気持ちを打ち明けることにした。

日が暮れるのが早くなり真っ黒な夜がそこまで来ている。街路樹は寒そうに北風に揺れている。ふたりはコートの襟を立てながら駅に続く道を足早で歩いた。桃香は今の気持ちを鮎子に話した。

鮎子はいつもとちがってしょんぼりしているようだ。桃香はひと息ついて話しかけた。

「慎ちゃん、私のこと好きなのかな? 私は好きだけど、恋っていうのかどうかわかんないんだ。怪我で殻に綴じ込もてったから引っ張りだしてあげたかった。お世話してあげたいっていう感じ。でも冬馬はグイグイ引っ張ってくれる感じで、こんな人の奥さんになると何かあっても安心なのかなあって思うの」

鮎子は前を見て歩きながら桃香の迷いを黙って聞いていたが、だんだん顔つきがこわばり、歩くのをやめて立ち止まった。

「いいかげんにしてよ。どれだけモテ女気取ってんのよ。冬馬君がいいか、慎吾がいいかなんて、人の気持ちをもてあそばないで。それでなくても慎吾はやっと明るさを取り戻したところなの。桃香が離れて行ったら、人を信用しなくなって暗いあの子に戻っちゃう。こんなことになるなら、最初から慎吾にやさしくしないでくれたほうがよかった」

「鮎子、そんな…そんなつもりじゃ」

「うわべだけのやさしさなんて、慎吾に見せないで。あの子は私たちが思う以上に怪我で傷ついてたんだから。夢を失いかけてたけど、桃香のおかげでゆっくり元気になろうとしてるんだから。今さら突き落とすなんてひどいよ」

「じゃあ、私に無理して付き合えっていうの?」

桃香の口から、絶対に言ってはいけない言葉が出てしまった。遅かった。冷たい空気が氷点に達し、ピリっと固まったような気配。頬を冷たい風がチクリとさしにくる。まずいと思ったが鮎子は唇をキュっと結んで怒りを抑えていた。

(続く)

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(二松まゆみ)