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鉱石マニアに捧ぐ、ロックハウンディングのススメ。

  • 2018.8.21
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鉱石マニアに捧ぐ、ロックハウンディングのススメ。
2018.08.21 17:00
アメリカでは今、岩石や鉱石を拾い集めてリサーチする「ロックハウンディング」が若者たちの間で大流行中だ。数年前、石の魅力に目覚めてジュエリーデザイナー兼ロックハウンディングのプロに転身したアリソン・ジーン・コールが、装備から心得まで、初心者のための基本ルールを教えてくれた。


「人生最高の経験だったわ!」


ジュエリーデザイナー、アリソン・ジーン・コールは、人生で初めて石細工を体験した時の感動を今も鮮明に覚えている。地元ポートランドの岩石クラブで開催された石細工ワークショップで、想定外の天職と出会ってしまった彼女は、まもなく仕事を辞めることを決意。それから6年経った今、彼女は、ラピドリー(宝石細工や宝石細工技術のこと)のプロとなり、フィールドトリップで自ら採掘した岩石や鉱石を用いたジュエリーブランドを運営しながら、女性向けのロックハウンディング・ツアーを開催している。


ロックハウンディングとは、今、アメリカでブーム再燃中のホビーであり、興味深い岩石や鉱石を見つけ、それが形成された場所でリサーチを行うこと。アメリカ西部で行われていた採掘が、50年代後半から60年代前半にかけて国民的な娯楽となり、全米で岩石クラブが結成されるに至った。今では、主婦からジュエリーデザイナー、ビジネスオーナー、シティーガールまで、あらゆるタイプの岩石・鉱石マニアが集まり、デジタルデトックスを兼ねて自然と再び繋がろうと、ロックハウンディングに高じているのだ。


「ここ数年のうちに、私のクラブも2倍の規模に成長したわ。私が最初に参加したときは、保守的な世界観に生きるリタイア後の白人の年配者ばかりだったのに! 今ではリベラルな若者が増え、面白いムーブメントになりつつあるの」


こうした若者がソーシャルメディアを通じて世界に発信したことで、コールが「世界で最も簡単なスポーツ」と呼ぶロックハウンディングに世界的注目が集まりはじめた。では、どうすればロックハウンディングを始められるのだろう? 初心者が心得るべき基本手順を、以下にコールが指南してくれた。

ロックハウンディング場所を選ぶには?


ロックハウンディングはアメリカ特有の趣味に聞こえるかもしれないが、ほぼ世界中で実行可能。コールに言わせれば、「岩石が露出している場所があれば、どこでもできる」そうだ。たとえば、岩石が侵食により崖から自然に剥がれ落ちていたり、砂に打ち上げられているビーチや、岩が多いハイキングコースなど。一方、森やジャングルは、地面がほとんど土壌と木で覆われていて、その下にある自然の宝石を見つけるのは難しいので避けるのがベター。


近くで立ち入り可能な採掘現場を探すのも一手だが、特に興味深い場所を特定するには、やはりプロに聞くのが一番。現地の岩石クラブや地質ガイドに連絡したり、地域の地質学者を探し出して助言を求めるという手も。ただし、くれぐれも私有地への不法侵入には気をつけよう。

必要な装備は?


実際のところ、必要なのは拾い集めた岩石を入れるバケツだけ。ロックハウンディングは、地表に落ちている岩石が対象で、崖や山から削り取ったりはしないからだ。ピックやスレッジハンマーのような、硬岩用の掘削道具は必要ない。強いていえば、小さなスコップやガーデニング用の熊手などがあれば、地表から顔を出している岩石を掘り出すのに便利だろう。


コールが主催している女性向けのロックハウンディング・トリップは、たいてい週末にかけて開催される。彼女の必携ギアは、荒野での野営や、砂漠の日差しの下での徒歩移動に備え、つば広のハットや、重ね着のできる薄い衣類を数枚、それに、ひざ下まであるブーツ(ガラガラヘビとの遭遇に備えて!)。それに、十分な水と軽食があれば準備完了。せっかく大自然に触れられるチャンス、携帯はご法度だ。

紙の地図と仲良くなろう。


石探しの冒険は、地質学の本を手にすることから始まる。アメリカでは、ファルコンガイド(Falcon Guides)やロードサイドジオロジー(Roadside Geology)シリーズといった手引書が人気だが、それぞれの国には、それぞれの本がある。書店で探してみよう。重要なのは、探す場所の地史を知り、そこでどんな標本を見つけることができるのかを調べること。コールのツアーでは、鉱石が形成される背景となる地質作用や、化石層の歴史についても説明してもらえる。


もう一つ大切なことは、荒野に出た途端に方向を見失ってしまわないよう、紙の地図を読めるようになること。事前に探索プランを十分に検討しよう。コールのオススメは、一般的な道路地図ではなく、娯楽用のハイキングマップ。未舗装の道や小道、荒野地域など、道路に関するあらゆる情報が載っている。


「デジタルの地図は、行きたい場所に導いてくれるだけ。一方、紙の地図は、より広範なエリアを探検するきっかけを作ってくれる。紙の地図を使って調べると、デジタルマップでは決して見つからないような発見があるの」

「良い」標本とは?


ロックハウンディングで集めた標本のうち、良いものを見分ける基準は目的によって異なる。コール曰く、初心者にとっては、興味深そうに見える岩石はすべて「良い標本」。もし、本格的なコレクションを作りたければ、まず自分の好みをはっきりさせよう。そして、どこでどうやってその特定の標本を見つけられるかを勉強し、戦略を立てよう。


コールの場合は、あえて模様や質感の少ない同じ色の岩石に狙いを定めるという。伝統的な工芸技法である象眼細工(色のついた岩石の小片を繋ぎ合わせて模様を作る細工のこと)のジュエリーを作るのに、完璧な材料だからだ。

辛抱強く、荒野に敬意を払おう。


コールがトリップで最初に教える基本原則は、なるべく足跡を残さないこと。そして周囲に注意を払いながら、毒蛇や有毒植物といった荒野を歩く上での危険に気を付けることだ。険しい小道は、特に注意が必要だという。美しい石は、そう簡単には見つかるものではない。辛抱強く探しながら、ゆっくり歩いて周りの景色を楽しもう。

Text: Annachiara Biondi

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