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ファッションとアートの関係に一石を投じる、NYホイットニーの注目展。

  • 2018.8.21
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ファッションとアートの関係に一石を投じる、NYホイットニーの注目展。
2018.08.21 17:00
前衛的な現代アメリカンアートを扱う、ニューヨークのホイットニー美術館で、21年ぶりとなるファッションブランドの展覧会が開催中だ。その審美眼に叶ったのは、新進気鋭のブランド「エクハウス ラッタ(ECKHAUS LATTA)」。ファッションを現代アートとして捉えたとき、そこにどんな意味が生まれるのだろうか?

21年ぶりのファッション展は、ミレニアル世代のデザイナー。


ニューヨーク在住のマイク・エクハウスとLA在住のゾーイ・ラッタが手掛けるブランド「エクハウス ラッタ(ECKHAUS LATTA)」による展覧会『Possessed』がホイットニー美術館で始まった。彼らは今年、世界の新進デザイナーを支援するLVMHプライズのファイナリストにもなった注目株。2011年のブランド設立以来、そのアーティなアプローチがファッション業界に新風をもたらしてきた。


ファッション関連の展覧会といえば、メトロポリタン美術館のコスチュームインスティテュートの企画が毎年話題になるが、ホイットニーでファッションをとりあげるのは実に21年ぶりとのこと。しかも、今回、一般には知名度が低いと思われる彼らをフィーチャーするのはかなりチャレンジングとも思える。


これについてキュレーターのクリストファー・Y・ルーは「ファッションデザイナーとしてはもとより、時代をとらえるヴィジュアルアーティストとしての彼らの視点、思考が抜きん出ていると感じました。リアルカップルをモデルとし、そのセックスシーンをとらえた2017年の春夏キャンペーンに代表されるように、既存のシステムを打ち破るようなイメージ構築は現代アートに限りなく近い」と解説する。

展示作品を販売する、商業とアート作品の関係性。


今回の展覧会は美術館のエントランスフロアに位置し、入場券を持たないビジターにも無料開放されている。展示作品のほとんどすべてが購入可能、というのも大きな特徴だ。


ラッタによれば「商業とアートはどう関わっていくべきか?というのが展覧会の大きなテーマ。ショップと美術館、それぞれの空間において“作品”というオブジェクトをビジターはどのように認識するのか? そのオブジェが購入できるということになったとき、作品よりインパクトを持ってくるはず」だという。そして「試着したり、買い物したりすることで“作品”とビジターによりインティメートな関係性が生まれるんだ」とエクハウスは続ける。


キュレーターであるルーは、その意図をこう説明する。「どうやったら服という作品をライブに見せることができるか? ということを考えたとき、ビジター自身のボディを使って作品を体験してもらえばいい、そして気に入ったら買って貰えばいい、ということを思いついた。従来の服飾展のように、単にマネキンが着た服を鑑賞するだけのものにしたくなかった」

ファッションを媒介に、12人のアーティストとコラボレーション。


会場に並び、展示されているのはすべて今回の展覧会用に特別に製作されたもので、“SPECIAL MUSEUM EXHIBITION PRODUCT”というタグが付けられている。ハンドクロッシェ編みのタペストリーのようなドレス($7,000)から、ヴィンテージTをリメイクしたシルクスクリーンのTシャツ($60)など価格帯もさまざまだ。


そして試着室のカーテンや壁のミラーはデザイナーふたりとも親交が深いスーザン・チャンチオロが製作するなど、フロアの随所にアーティストとのコラボレーション作品がインストールされている。「ファッションはコラボレーションのプラットフォームとしては最適。今回は12人のアーティストたちと一緒にこの展覧会をつくりあげました。立体作品から映像など、私たちがいつもスタジオでやっている実験的な試みが、よりダイナミックに表現されたような空間です」とラッタは言う。


エクハウスは「僕らはどちらもアートを学んできた。僕らにとってファッションはクリエーションの言語であり、常に自分たちのアイデアを試行錯誤しながらその可能性を追及してきた。ファッションとは着ることによって、パフォーマンス性が生まれる、世界とどう関わっていくかというアイデンティティの表現でもある」と話す。


ファッションとアート、そして小売のあり方にも一石を投じるといっていい企画。服が売れない時代といわれて久しいが、だからこそ、作り手のコアなメッセージが込められたクリエーション、そして着る人とスピリットをシェアできる服が求められているのではないだろうか?

「エクハウス ラッタ:ポゼスト 」展 (Eckhouse Latta: Possessed )

期間/開催中〜2018年10月8日まで

場所/ホイットニー美術館(Whitney Museum of American Art)

住所/99 Ganseveoort Street, New York, NY10014
https://whitney.org

Photos & Text: Akiko Ichikawa

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