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【男から見た結婚のリアル】第26回 この人と結婚してよかったと心底思えた時

  • 2018.8.19

多くの人って、大人になったら「それはなぜなのだろう」という疑問を持たなくなるのか、持ったとしてもそういう疑問を上手に忘れてしまえるのか、僕から見たら「うまくオトナをしているように」見えます。

たとえば誕生日のお祝いについて。この歳になると、みんなそれなりにお金を持つようになるのか、高価なレストランでシャンパンを開けたり、どこかに旅行に行ったりしている写真がインスタに踊っているじゃないですか。それがいけないとかそういうことではなくて、それはそれでいいのだけれど、ぼくは心のどこかで「それは誕生を祝うことのほんの一部であって、根本的にはなにかもっと別のことをやる日が誕生日だろう」と常々思ってきました。

誕生日って「この世に生まれてきてくれてありがとう」と「1年無事に生きてこられておめでとう」の日だと僕は思っています。したがって誕生の根源を考慮したことをすべきだと思っていて、ではそれは具体的にはなにをすることなのだろう?と、ずっと考えていたのでした。

いや、今やっと、そういうことを考えてきたというのを言葉にできたのであって、それまでは漠然と「なぜ誕生日をことさら豪勢にお祝いをしなくちゃならないのだろう」と思っていました。でも、そんなことをおおっぴらに人に尋ねると、屁理屈を言ううっとうしい人みたいに思われるとイヤだなあと思って、誰にも言えないでいました。

「誕生日の日は会いたい人に会いに行きたい」と言ったのは妻でした。結婚して最初の妻の誕生日祝いをどうしようかと考えていたら、妻のほうからそう言ってきました。

言われた瞬間、これまでひそかに悩んでいたことのすべてが理解できました。

「この世に生まれてきくれてありがとう」と「1年無事に生きてこられておめでとう」の日に、誕生の根源を考慮した行いって、たしかに「会いたい人に会う」、これしかない。妻天才。

妻がどういう思考ルートで「誕生日の日は会いたい人に会いに行きたい」という結論にたどり着いたのか、妻にわかりやすい言葉で質問できる自信がないから聞いていないけれど、妻もきっと、大人になっても「それはなぜなのだろう」という疑問を持っていて、それに対する答えをぼくより早く発見したのでしょう。でないと、こういう答えはきっと出てこないから。

ほかの多くの価値観が違っていたとしても、こういう、いろんな意味で言語化しづらい疑問を妻も持っていたのだと確信できた瞬間、それがこの人と結婚してよかったと心底思えた時なのでした。

(ひとみしょう/文筆家)

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