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サイコパスかも? アルバイト先の「上から目線」な社員との付き合い方

  • 2015.2.24
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【ママからのご相談】

40代の主婦。大規模小売店でアルバイトをしていますが、直属上司にあたる社員の男性が、“上から目線”なのがストレスになっています。その男性は正社員ではありますが、やっている仕事は私たちとそれほど違うわけではありません。 勤務が夜遅くにまで及ぶことや管理・指導業務があること以外は私たちとほとんど一緒ですが、月収は私たちの3倍も4倍もあります。そんなに恵まれているのに何かにつけて、「社員の言うことは黙って聴くように」と言ったり、“雇ってやってるんだ”的な態度なのです。同僚の50代・60代のアルバイトの男性たちの方がよっぽど尊敬できます。その方たちは親の介護や定年が理由で今の立場はバイトですが、皆さん人格者です。仕事なので我慢して働かざるをえませんが、少しでもストレスを軽減する方法をおしえてください。

●A. 今は社員より非正規の人の方が人格者であったりする。仕事と割り切ること。

ご相談ありがとうございます。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

ご指摘の通りで、今は昔と違って“社員”よりもアルバイトのような“非正規”の人の方が人格面で優っているケースが珍しくありません。その理由としては、昔のアルバイトは社会経験の少ない学生などが空いた時間にする“小遣い稼ぎ”的な労働の意味合いが大きかったのに対し、今のアルバイトは50代・60代になるまで前の職場で指導的な立場で仕事をしていたり、自分で会社を経営していたけれど何らかの事情(親の介護・早期定年制度・業界の構造変化に伴う廃業など)で前職を退き、状況が落ち着いたため社会復帰していたりする人の割合が増えているからです。

たとえ社員であったとしても、そういった人たちと比べて見劣りしてしまう上司が少なくないというのは、今の企業社会の構造上、仕方のないことなのかもしれません。

以下の記述は、都内でメンタルクリニックを開業する精神科医師に伺った話を参考にしながら、すすめさせていただきます。

●悪意がないのであれば、「この程度の人なんだ」と思って諦めましょう

アルバイトで一緒に働く人たちの中に尊敬できる人が何人もいる時代というのは、逆に“上から目線”の社員の立場からすれば、“やりにくい”時代になったとも言えます。

同じ会社に20年も30年も居る社員の人は、その会社に固有のルールやシステム、企業風土などについては精通しているでしょう。けれど、全然違う世界で、その人よりも長い年月にわたって社会経験を積み、しかも何らかの事情で一旦現場から離れ介護や家事などに従事した経験のある人には、人間としての“深み”や“優しさ”がある場合が多いため、“上から目線社員”さんは人格的な魅力という点では相対的に、見劣りしてしまうおそれがあるからです。

でも、その会社のルールやシステムについて、上から目線社員さんが詳しいのは紛れもない事実ですから、そういう事柄について聞く相手だと思えばいいのです。聞きにいったら、「そんなことも知らないんですか」と言われるかもしれません。そのときには、「ああ、やっぱりこの程度の人なんだ」と思って諦めましょう。どのみち生活費のプラスアルファ分を稼ぎに来ている場所ではないですか。無駄な亀裂を生じさせることはありません。

●部下に対する思いやりが全く感じられない場合は要注意

『単に横柄・偏屈といった感じの“上から目線”であれば、気にする方が馬鹿馬鹿しいので割り切ってしまってください。ただ問題は、ご相談者さまの上司にあたるその社員の人に、「部下であるアルバイトの人たちに対して、“思いやり”や“愛情”といったものが全く感じられない」場合です。どんなに横柄で偏屈な人であっても、毎日毎日一緒に汗を流して働いていれば、一定程度の仲間意識やチーム愛のようなものが普通は生まれてきます。それが少しも見られず、部下に対して冷淡で共感を全くしないとなると、精神科の医師としては少し気にかかるものがあります。

ご相談者さまは“精神病質(サイコパシー)”という言葉を耳にされたことはおありでしょうか。犯罪心理学や生物学的精神医学などの領域で使われている概念で、誤解を恐れずに簡単に言うなら、「人を支配することそのものが自己目的になってしまっている、良心や思いやりが完全に欠如した人格」のことです。国内外の心理学・精神医学研究者たちが積み重ねてきた研究によると、こういった人たちは、みんながみんな凶悪な犯罪を犯すわけではなく、私たちの身近にも一定の割合で存在し、普通の生活をしているという学説があるのです。

この病質の人すべてが独裁者や犯罪者になって人を支配したり傷つけたりするわけではなく、統計的には政治家・経営者・企業の管理職・金融商品仲介業者・軍人・弁護士・教師・警察官・(広義での)商売人などに比較的多く見られる傾向があるとされています。逆に、ギャングの親分のようないかにも冷酷・非情のように見える人であっても、自分の息子のことだけは溺愛していて息子が立派にギャングの跡を継げるかどうか思い悩んでいるといった場合には、この病質にはあたりません。

このようなお話しをしたのは、ご相談者さまの上司である“上から目線社員”さんの態度が、万が一こういった病質に起因したものだと仮定するならば、その上司にはなるべく近づかないことが一番だと申し上げたかったからです。“触らぬ神にたたりなし”といったことわざは、このようなケースでこそ引き合いに出されるべきなのかもしれません』(50代女性/都内メンタルクリニック院長)

●“惻隠(そくいん)の情”は、あるのが普通。あれば認めてあげましょう

戦国時代の中国の儒学者である孟子は、“惻隠”という教えを説きました。惻隠とは他者を見ていたたまれなく思う心のことで、例えば幼い子どもが井戸に落ちそうなのを見れば、どんな人でもあわれみの心が起こってくるわけですが、そういった自然な感情のことを“惻隠の情”といい、人間らしい心の基本中の基本として重要視したのです。

ご相談者さまの上司の“上から目線社員”さんですが、よく見ればそういう情を、ちょっとだけもっているのではありませんか? あなたが仕事中に紙で指を切ってしまい血が出たとき、上から目線のその人が、「これ、使いなさいよ」と救急キズテープを手渡してくれたことが、一度くらいはあったのではありませんか? そうであるとしたら、上から目線社員さんにも多少の“惻隠の情”があるのだと認めてさしあげましょう。

横柄で偏屈で尊敬できない人だとしても、ほんのちょっとだけでもいいところがあるのならいいではありませんか。家に帰れば、あなたにはすてきな旦那さまがいるのですから。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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