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人身事故で電車が運休しても乗り換えできる「通勤サブ・ルート」8選

  • 2015.2.17
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【女性からのご相談】

首都圏に住む30代の主婦です。毎朝夫と一緒に家を出ますが、9時半始業の自分にとっては少し早め。にもかかわらず、よく起きる“人身事故運休”のために大幅に遅刻してしまうことがしばしばあります。 人身事故による運休は30分や1時間では復旧しないからです。こんなことを伺うのは当事者のかたにたいしては不謹慎な気もするのですが、現実にかなりの頻度で起きている人身事故運休に遭遇しても最小限の遅刻で済むような通勤のサブ・ルートとか、乗り換えの抜け道を知っておきたいのですが。

●A. ナビゲーション・アプリも便利だが、足でしか得られない情報もある。

こんにちは、エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

『鉄道ピクトリアル2014年6月号』掲載の『都市鉄道における輸送トラブル発生時の対応に関する研究』という論文によれば、自殺などの人身事故が首都圏で突出して増えているようです。

東洋経済の独自調査でも、首都圏における2012年の電車の運休・遅延件数は6,143件で5年前の1.9倍に達しており、特に湘南新宿ラインや京浜東北線においては終日平常運行できた日の方が少ないという調査結果が出ています。

たしかに事故の当事者やそのご家族の方々には不謹慎な話題になってしまうのかもしれませんが、“それでも極端には遅れられない”人たちのために、ナビゲーション・アプリを検索するだけでは見落としてしまいがちな、“足で得た乗り換え情報”のごく一部をご紹介させていただきます。

なお、人身事故の原因となる“自殺”についての医学的な記述に関しては、都内でメンタルクリニックを開業する精神科医師にお話しを伺ってあります。

●大遅刻を避けられる!? 通勤サブ・ルートの情報8つ

●(1)京王線武蔵野台駅から西武多摩川線白糸台駅まで歩けば武蔵境でJRに乗り換えができる

東京西部でも多くの乗降客数を有する京王線の府中以西にお住まいの方であれば、万が一人身事故などで京王線の新宿寄りの一部エリアが運休していたら、武蔵野台の駅から歩いて白糸台駅で西武多摩川線に乗れば、武蔵境でJRに乗り換えることができ、吉祥寺にも荻窪にも中野・東中野にも新宿にも出られることを覚えておくと便利です。

●(2)下高井戸から新宿方面に行けなくなったら世田谷線で山下で降り豪徳寺から小田急に乗れ

新宿方面に向かう京王線が明大前より東のエリアで人身事故運休した場合、下高井戸駅に近づいていた電車だと特急・急行でも駅まで進めて停車させ、車掌判断で全ドアを開けてくれる場合があります。この場合は遅刻しないで済む大チャンス到来ですので、東急世田谷線で山下で降り、徒歩1分の豪徳寺駅から小田急線に乗り換えて新宿に出ましょう。

●(3)狛江から武蔵境はバスで行ける。途中の国領・調布で京王線にも乗れる

成城学園前や喜多見といった人口の多い小田急線の駅周辺にお住まいの方で小田急線が止まった場合、自転車でも何でもいいので狛江駅に出て(自転車の場合だったら市営駐輪場に置くといいでしょう)京王線の国領や調布を経由してJRの武蔵境駅に出られるバスがあります。

●(4)調布・狛江・喜多見からはバスで二子玉川にも渋谷にも出られる

1本のバスで出られます。覚えておくと京王線・小田急線が止まったときに便利です。都営新宿線の岩本町駅は、秋葉原駅まで徒歩でも楽々行けてしまう距離です。

駅名が全然違うので意外に思われる方も多いかもしれませんが、都営地下鉄新宿線の岩本町駅は、JRや東京メトロの秋葉原駅まで徒歩でも楽々行けてしまう距離にあります。使い道が幅広い乗り換え方法ですので大いに活用してみてください。

●(5)上級編ですが、代々木上原駅から幡ヶ谷・笹塚までは、歩ける

これもあまり知られていないルートかと思いますが、東京メトロ千代田線や小田急線の代々木上原駅からは、1回の山超えで京王新線の幡ヶ谷駅にも京王線の笹塚駅にも歩いて出ることができます。ただし初めてトライする方にとっては道順はちょっと複雑ですので、トライする可能性のあるかたは事前に調べておかれるとよいでしょう。

●(6)武蔵野線の新小平から西武国分寺線・拝島線の小川までは、楽に歩ける

これもまた、普通は“乗り換え駅”としては扱われておりませんが、JR武蔵野線の新小平駅から西武国分寺線・拝島線の小川駅までは、歩けます。青梅街道から府中街道へ入るだけの単純な道です。

●(7)JR横浜線の片倉から京王片倉まではよほどの体力自慢の人以外、歩くのはやめた方がいい

逆に、駅名から想像すると楽に乗り換えできそうだけれど、よほどの体力自慢の人以外やめておいた方がいいのは、JR横浜線の片倉駅から京王片倉駅まで歩いて乗り換えようとすることです。距離的にはさほどでもありませんが、道が山道で2次元の地図上ではわからない険しさがあります。便利な選択肢ではありますが、おすすめはしません。

●(8)やろうと思えばできるのが、蕨から戸田までの徒歩乗り換え

これも体力に自信のない方にはけっしておすすめはしませんが、やろうと思えばできるのがJR京浜東北線の蕨駅からJR埼京線の戸田駅への徒歩乗り換えです。いずれかの線が運休した場合に使える方法です。蕨市役所通から中山道、戸田市役所南通と距離はありますが比較的平坦な道で移動できます。

●日本の40代・50代男性の自殺率は世界トップレベル

『ご相談者さまが指摘されるように、首都圏では非常に高い頻度で自殺を原因とする人身事故運休が起きています。わが国の自殺者数は10万人あたりでOECD平均の12.4人の約1.7倍である20.9人と多く、特に40歳代および50歳代(いわゆる“働き盛り”)の男性の自殺率は世界トップレベルとなっています。多くの国々で、自殺が多いのは主に60歳以上の層であり、原因は言うまでもなく“病苦”です。

40・50歳代の男性に自殺が多いのは日本の大きな特徴であり、“事業不振”“過重労働”“職場の人間関係の不寛容化”“倒産”“失業”“介護疲れ”“近親者の死”“喪失感”“経済的困窮・借金”“家庭内・親戚内での人間関係の悪化”“不安”“絶望”“うつ”といった自殺の要因となるような諸要素が、わが国のこの世代の男性には集中してあります。通勤電車の利用客の中核部分をなすのはまさにこの層ですから、人身事故運休が多いことも頷けなくはありません』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医師)

私も電車に乗っていて、「また人身事故かよ」という言葉を何度も聞いたことがあります。たしかに大勢の人が仕事に向かうために利用する公共交通機関である鉄道で自殺するというのは、迷惑なことであるのは間違いありません。ただ、「迷惑だ」と感じる心ばかりが増殖して、人間の命が一つ失われたことに対する神妙な思いが私たちの気持ちの中から消えていってしまうことも、どうかと思います。

ここでご紹介したような“通勤サブ・ルート”と“知られざる抜け道”は、私自身が仕事の必要上から何年もかけて自分の足で見つけてきたものばかりです。このような情報をご紹介することで、「迷惑をかけてしまった人を憎む心」が緩和されることに少しでも役立てるのであれば、うれしく思います。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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