久々の再会【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第11話】

「冬馬キャプテン! 元気そうだね! 今日は慎吾君連れて来たのでよろしくお願いします」

ペコリと頭を下げる。冬馬の胸の高鳴りは激しくなる。メイクのせいか? 目元がやけにきれいだ。くっきり描かれたアイライン、意思の強さを感じる。まばたきするたびにパチンと音がするような愛らしいまつげ。冬馬はしばらく見つめてしまった。数秒おくれて慎吾が

「初めまして。田所慎吾です。よろしくお願いします」

と小声で言う。冬馬は我に返って

「うわ、イケメンだな。こりゃ、うちのチームにファンがつくぜ。よろしくっ」

男らしいゴツっとした手のひらをを慎吾に向けて差し出した。慎吾はとまどいながら、冬馬と握手をした。チームのメンバーが続々集まってくる。

「ウィーっす。おっ? 女子マネージャーついに来たるってか?」

「やった。ついにチームのプリンセスが現れた」

みんなが歓迎してくれた。

久しぶりに桃香の姿を見た冬馬は動揺してぼーっとしていた。チームの連中とはしゃぐ桃香の笑顔はあの日のままだが、社会人になり、周囲に気をつかう大人っぽい仕草にハっとさせられた。外は冬が近づいていて冷えているのに、桃香の周りだけポっと暖炉であっためられているような不思議な世界だ。

桃香のほうも冬馬の成長ぶりに戸惑った。何年かの時を経て、子供っぽいニキビヅラの少年がシュっとした勇ましい顔つきの男になっている。腕も脚もほどよく筋肉がつき、ドキリとする。

「冬馬、なんかオトナーって感じになった」

「お前もだよ。勉強の合間によく歌ってたけど、プロになれそうなのか?」

「うん、ぼちぼちね。今は時々いろいろな音楽プロデューサーさんの仮歌をうたっているんだ。アーティストが曲を選ぶのに歌が入ってなきゃ困るでしょ? 曲が決まったら私の歌った歌がアーティストによって歌われる仕事なの。プロデューサーさん達は私の声を気に入ってくれてるんだ。だからといってすぐデビューできるとかじゃないけどね。なんてったって厳しい業界だから。でもあきらめないでしぶといの。私。めげないんだ。歌ってるとその世界に入り込めて楽しいから。今は、会社員と平行してやってるけど」

「桃香らしいよ。何ごとにもへこたれない。コンテスト落ちても何クソって思うんだろ。気が強かったよな、昔から」

歌でデビューする夢を捨てていないと言ったのが冬馬にとっては単純に嬉しかった。自分の夢は何だったっけと思い出そうとしたが、きっとあの頃の夢なんか大学受験合格程度のものだったのだ。

「俺も、こうなりたいって夢、持とうかな」

「ええ? 冬馬、夢なし男? つまんない奴だね」

桃香がひやかす。ふたりは昔のままの居心地のよさを感じ合った。慎吾がチラリとその様子を見たのを桃香は気づかなかった。

(続く)

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(二松まゆみ)

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