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美しきアイスダンサー、テッサ・ヴァーチュがヴォーグに登場。

  • 2018.6.16
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レースのドレス ¥350,000 中に着たブラトップ ¥27,000 ショーツ ¥40,000/すべてBURBERRY(バーバリー・ジャパン)左手の薬指と小指のリング 各¥1,580,000/すべてSPINELLI KILCOLLIN(サザビーリーグ)
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---まずは、平昌オリンピックでの2つの金メダル獲得、おめでとうございます。競技生活の集大成を最高の形で終えることができましたね。

テッサ・ヴァーチュ(以下 T)ありがとう! 本当に素晴らしい経験ができたし、応援してくれた全ての人に感謝の気持ちでいっぱいなの。

---2つの銀メダルを獲得したソチオリンピックの後、一度競技から引退して、また平昌オリンピックに戻ってきましたね。あなたたちを競技にカムバックさせた一番のモチベーションは何だったのでしょう?

T 2014年のソチオリンピックを終えて、競技生活から一旦離れてみると、私たち2人の心に「また大会に出たい」という気持ちが燃えているのを感じたの。規則正しく練習をして、ひとつの大きな目標に向かって、コツコツ努力する……そういう生活が恋しくなってしまったのね。そしてもちろん、もっと技を磨ける自信もあったし。自分たちの能力を試したい、アスリートしてさらなる高みに達したいという熱い思いが押さえられなくなった感じだったわ。

---復帰にあたっては、コーチングスタッフも入れ替えましたね。

T そうね、コーチ陣に関しては、より自分たちでコントロールできるようにしたかった。新たなヴィジョンと目標をもって復帰のシーズンに臨んだので、そこはすべて自分たちがやりたいようにできる体制を整えたかったの。すべての決断は、私たちの気持ち、そしてアーティストとしてのヴィジョンに従ったものでなくてはならない、というのが大原則ね。競技復帰してからの数年間は、私たちのキャリアの中でも、一番大変な時期だったけれど、それだけに収穫も多かったと言えると思う。

---競技復帰を決めた時は、パートナーであるスコットとはどんな話をしたのですか?

T 私たちの間では、数カ月間くらいの間、冗談交じりに「ねえ、復帰しちゃう?」というような感じで話していたの。たぶんあれは、お互いがどのくらい真剣に復帰を考えているのか、本心を探り合っていたんだと思う。そしてある日、あれは中国で万里の長城に向かう車の中だったかしら、今後の「夢のシナリオ」について2人で話をしたの。「もし復帰するなら」という前提で、使う音楽や私たちを指導してくれるコーチ陣、さらにはスタイリングまで、理想の姿はどんなものかしら?って話し合った。そのときに思い描いたイメージがあまりに鮮やかで魅力的だったので、これを現実にしなくては、という思いが生まれたのよ。

---ソチオリンピックの後はショーをメインにしたスケーターとして活躍していましたが、その経験が復帰後の競技にどう生きてきましたか?

T アイスショー向けに「見せる」演技をすることは、とても貴重な経験になったわ。競技の世界に身を置いていると、完璧を求める気持ちにとらわれすぎて、あらゆることが自分の思うとおりでないと気が済まなくなったり、演技のディテールのひとつひとつにこだわりすぎてしまったりすることがあるの。でもアイスショーの場合は、時間にも場所にも制約があるから、そこまですべてを完璧にはできない。リンクに照明がともったら、そのときにできる範囲でベストを尽くすしかないの。そして、たいていの場合、観客の皆さんは「完璧ではない」演技をとても喜んで見てくださる。かえってそういうときのほうが、演技に人間性がにじみ出て、人の心を打つこともあることを知ったりもしたわ。アイスショーで一度、このような自由なアプローチを経験できたことは、競技生活に戻ってからも多くの余裕を与えてくれたと思う。

---バンクーバー、ソチ、平昌と3回のオリンピックを経験しているわけですが、それぞれ、全く異なる国、文化のある場所でしたね。

T そうね。全てにおいて、まったく違う文化の中でのオリンピックだった。

---バンクーバーは、母国開催という熱狂の中で迎えたオリンピックでしたね。

T ええ。バンクーバーは、自国で開催されたオリンピックだったので、私たちにとってはとても意義深い大会だった。自分の国が世界の舞台でその魅力を大いに発揮しているのを見て、とても誇らしく感じたのを、今でも覚えている。あのときは、アスリートが金メダルを取ると、みんなが街に繰り出して、見ず知らずの人たちとハイタッチやハグで祝福し合っていたの。そんな姿を見ていて、オリンピックの世界の人を結びつける力を実感したわ。勇気をもらったし、心温まる気分になれた。ボランティアスタッフたちにもお世話になったわ。

---逆にソチはかなりのアウェーでした。

T リンクに入ったときに、場内全体が「ロシア!ロシア!ロシア!」と(銅メダルを獲得したロシアのカップルに)声援を送っていたのは、忘れられない光景だった……。ソチはカナダからはかなり距離があって、家族や友達に来てもらうのは難しかったし。でも、母国から離れているだけに、チーム全体がこれまでにないほど団結できた、というプラス面もあったの。このときはほかの選手と交流できる場所がカナダ・オリンピック・ハウスしかなかったのだけれど、そこに皆が集まっているのが意外なほど楽しくて。カナダチームはかつてなくそこで団結したと思うわ。

---そして競技復帰した平昌では、金メダルを取り、これ以上ない競技生活の集大成となりましたね。

T ピョンチャンは、あらゆる意味でおとぎ話のようだったわ。競技会場はかなり広いエリアに散らばっていたけれど、選手村はこぢんまりとしていて居心地が良かった。それに、リンクの雰囲気は、私たちがこれまで滑ったどの場所とも違っていて、本当にテンションが高かったの。団体でも、そして個人競技でも金メダルを取ることができて、本当に最高の思い出になったわ。

---実際、オリンピックという大舞台で、金メダル本命と期待されている選手が、最終滑走で、自己ベストの得点を出す演技をし、総合優勝した。そしてそれがあなたの競技生活のラストの演技になるとは、まさに感動的でした。

T 結果的には金メダルが取れたけれど、実は1つ前に演技したパパダキス/シゼロン組が世界最高得点を叩き出していて、総合得点で彼らを上回るには私たちの自己ベストをさらに3点以上超えないといけない状況だったとは全く知らなかったの。もしそんな状況になっていたと知っていたら……あの演技ができたかどうかはわからない。私たちは何も知らずに演技をしたから、あの演技ができたんだと思う。

---日本の宇野昌磨選手は、平昌オリンピックの男子シングルで最終滑走でした。そして驚くことに、彼は彼の前の選手の演技まで、全ての選手の演技をモニターで見ていたというんですよ。

T 冗談でしょう! でももしかしたらそれが彼の1つの戦略でもあったのかしら。もし私たちのコーチがそこにいたら、絶対に他の選手の結果は見るなと言ってモニターの前から引き剥がされてしまうでしょうから(笑)。それにしてもショーマはなんというメンタルの強さなんだろうと感激するわ。私たちは、前の競技者の演技は絶対に見ないという前提でやってきたから、そんなことは絶対にできないしそんな勇気もない(笑)。それで、ショーマはそれについてなんて言っていたの?

---自分がノーミスの演技をしないと金メダルには届かないだろうとわかっていたので、「1つ目のジャンプを失敗した時点で笑えてきた。1つ目を失敗した時点で、もういいやと思って、焦ることなく演技ができました」とインタビューで答えていましたね。

T ものすごく冷静で落ち着いているのね! 私だったらそんな余裕はなくなってしまうわ。ショーマは普段はあまり積極的に話しかけてこないから、彼がどんな性格なのかはそれまでよくわからなかった。でもね、先日、私とスコットのところにやってきて、「スケートのアドバイスをください」と言うの。でも、あんなに綺麗にスケートをする選手は他にいないほど、彼のスケート技術は高い。彼は、私たちに教えられることなんて本当に何一つないくらいの素晴らしいスケーティングスキルを持っているわ。だから「私たちがあなたにスケートを教わりたいわ」って答えたの。

---さて、スコットとは、まだ年齢が1ケタだった頃からのパートナーです。オリンピック後はイヤというほど「二人は付き合っているのですか?」と質問されていましたね。

T このトピックは、もう長い間、私たち2人の関係について語る際に、欠かせない要素になっているのは事実ね。私たち自身は、それは今まで作り上げてきた“作品”への称賛であり、パートナーに対してお互いが抱いている、愛と尊敬の念を裏付けるものだと受け止めているわ。2人のパートナーシップをさらに強固なものにしようと、私たちは懸命に努力を重ねてきたし、今ではこの絆が一番強みになっていると断言できる。だから、この関係に、何か名前をつけられたらいいのにと、私も思ってはいるの。私たち2人がシェアしているものが何なのか、カテゴライズしたいという世の中の要望も感じるし。とは言っても、あまりにユニークで特別なので、私にも「これ」という言葉が見つからないのだけど……私たちは最高の友人で、ビジネスパートナーで、お互いの一番のファンでもある。スコットは、誰よりもカリスマ性があり、誠実で、心の広い人。彼とともに、大人になり、そしてこの世界で生きてきたことを、心の底から嬉しく思っているわ。

---今回の撮影の後にも、スコットが新横浜から駆けつけてくれましたね。写真をチェックする彼の目は本気でした(笑)。

T 彼は、私がどれだけファッションを愛しているか、ヴォーグに憧れているかを知っているから(笑)。私は、今回の撮影の話を、スコットとジェフ(ジェフリー・バトル)にだけ事前に話していたのだけど、二人とも自分のことのように喜んでくれたわ。女性にとって、ヴォーグに撮影されることがどれだけ名誉なことか、そして私がどれほどヴォーグを愛しているかを彼らはよくわかっていてくれるから。写真が素晴らしいものになって、スコットも嬉しかったと思う。

---かつてあなたが、ファッションへの思いを熱く語ってくれたことを覚えています。あれは4年近く前、スターズ・オン・アイスのショーで来日した時でしたね。いつかヴォーグに出たいと話してくれました。その後、あなたはアイウエアからジュエリーまで、様々なファッションアイテムをプロデュースするようになって、すっかりファッションと密接な関係を築いています。

T 私はスケートやダンスと同じくらい、いや、ひょっとするとそれ以上に、ファッションが好きなんだと思う。コラボ商品のプロデュースを通してデザインの世界の奥深さに触れられたのは素晴らしい体験だったし、優れた企業の数々とタッグを組むことができたことにも感謝しているわ。自分の頭であれこれと考えたものが、実際に商品となり、具体的な形になる、そのプロセスがとても好きなの。自分のアイデアがなければ、決して世に出ることはなかったものが商品となるのだから、本当に満足感があるのよね。

---将来はヴィクトリア・ベッカムのように、異業種から転身してファッションの世界に真剣に取り組むような未来もあるのでしょうか? ヴィクトリアは今ではすっかり実力のあるデザイナーになりました。

T 実際にプロとしてファッションの世界にフルタイムで関わるには、いろいろとやらなくちゃいけないことや、学ぶべきことがあるのもわかっているけど、その可能性はゼロではないとは思う。ただ、今は企業の文化やマーケティング戦略といった、ビジネスについてをまず学びたいという気持ちの方が強いの。将来的に、そうしたビジネスの知識を基盤にして、デザインにまつわるクリエイティブな仕事に挑戦することはあり得るかもしれない。

---競技の衣装のデザインにも、もちろんあなたの意見は大きく反映されていますね?

T ええ。この2シーズンは、モントリオール在住のデザイナー、マチュー・キャロンと共同で衣装をデザインをしたわ。マチューは自分が求めるものについて明確なヴィジョンを持つデザイナーだけれど、私からのアイデアにもオープンで、私の意見も取り入れてくれる。彼との打ち合わせでは、演技の際に使う音楽をかけて、振り付けを見てもらい、私が演じる役柄のストーリーを詳しく説明するの。演技を通して自分が伝えたい感情や気持ちと、私が身につける衣装は、ダイレクトにつながっているから。だから、まずは演技のストーリーを説明した上で、衣装の色や、使う素材、さまざまなシルエットについて検討を重ねていくわ。もちろん、フィッティングの過程で、デザインの調整や改良ができる余地も残さなくてはいけない。さらに、この衣装を着て体を動かしたり、実際にスケートの演技をして直しを入れることもある。衣装が完成するまでのプロセスは本当に細かいわね。

---フィギュアスケートの衣装にとって一番大切な要素って何だと思いますか?

T 綺麗で華やかであることは大切な要素だけれど、衣装はあくまでも私たちのスケートの技術を引き立てるものであるべき。氷の上では、カップルが手を携えて一体となって、洗練された演技を作り出すのが何よりも大事だから、衣装はあくまでそれを引き立てるための一つの要素として考えることが大切だと思うの。衣装がどれほど素敵でも、衣装の印象が前面に出てしまうのはあまりよくない。昨シーズンのフリーダンスの演技では、シーズンの早い時期にプログラムにぴったりのシルエットはこれだ、とわかったの。だから、そのシルエットを元に、ロマンス、激しさ、そして現代的な華やかさという要素の、適切なバランスを衣装に反映していったわ。

---そのフリーダンスでは、大きくウエストの位置が空いたアシンメトリーの衣装がとても印象的でした。通常、あれほどまでにウエストを開ける場合は肌色の布を張るようなデザインが多いですが、あえてそこは素肌を大きく見せていましたね。あれはスコットがあなたをホールドするために、素肌の方が良いという選択だったんですか?

T あれはただ素肌の方が綺麗に見えるという理由だったの(笑)。あの位置に肌色の布があるより、潔く素肌にした方が見た目が綺麗だったから。

---さて、タイムリーな話をすると、日本では今、男子シングル、女子シングルで今年から大きく採点方法が変わることが話題になっています。男子は4回転時代による技術の急激な発展とそれに伴う選手の身体的負担をややスローダウンさせるため、女性は低年齢化と技術重視が進むことを懸念して、でしょうか。このことについて、ぜひあなた自身の意見を聞いてみたいです。

T 私自身はアイスダンスの選手なので、この件についてコメントするのは難しいのだけれど、ルールの変更には慎重を期すべきだし、選手との対話はとても重要になると思う。フィギュアスケートに限らず、アクロバティックな演技が要求されるスポーツでは、若い選手をケガから守ることは本当に大切。だって、アマチュア選手としてのキャリアが終わった後の人生の方が、ずっと長いのだから! フィギュアスケートはジャッジの評価という主観に左右されるスポーツである以上、芸術と技術という2つの要素のバランスは、永遠の課題でもあると思う。今回のルール変更によって、再び創造性や独創性、芸術性、表現力といった要素に再び重点が置かれるようになるといいのだけれど。まあ、これは氷からブレードが離れる演技がほとんどない、アイスダンス選手の感想として、ね。

---現在、「Fantasy on Ice 2018」のツアーで、たくさんの日本の選手と一緒に日本各地を回っていますね。

T ショーは3時間半という、今まで経験したことのない長さよ。これまで経験したアイスショーは2時間半が最長だったから、その長さには驚いたわ。そして、ユズル(同じショーに出演している羽生結弦)の日本でのあの人気ぶりを目の当たりにして、ただただすごいと思った。彼がこれまでに成し遂げたことを考えれば、それも当然だけれど。素晴らしいと思うのは、彼の心優しいところ。周囲の人たちにいつも気を配り、敬意を示しているし、ファンに対しても本当に優しく接しているから。それに、彼とのリハーサルはとても楽しいの。プレッシャーがない時の彼は、まるで子どものように無邪気に、遊び心たっぷりにスケートを楽しんでいるわ。本当にスケートが好きで、情熱を捧げているんだな、と感じる。それでいて競技に入ったときの彼からは、目が離せなくなる。本当に心が強いのね。本気で何かを狙ったときの彼の集中力は本当にすごいと思う。

---ショーを回りながら、彼といろいろなヴィジョンを共有することもありますか?

T ええ。つい最近も、これからの目標を彼に聞いてみたことがあるの。そうしたら、彼は、子どものころに決めた目標がいくつかあるので、その夢をこれからも追い続けるつもりだと話してくれたわ。とてもいい目標よね。競技者としては、彼は今、4回転半のクワドアクセルを成功させることが一番のモチベーションになっているようだった。金メダルを2度も獲ってしまうと、競技に対するモチベーションを見つけるのがとても難しいものよ。だから今の彼にそういう目標があることは素晴らしいことだと思ったわ。

---さて、あなたとスコットは平昌オリンピックのシーズンでは、本当に素晴らしい2つのプログラムを見せてくれました。サンバ、ホテル・カリフォルニア、そしてムーラン・ルージュを選んだのは完璧な選曲だったと思いますが、「実はこの曲と迷った」という別候補の曲があったりしますか? 

T 「ムーラン・ルージュ」に関しては、最初からこれと決めていたの。スコットが提案してくれたんだけど、私はこの曲が求める要素に対して完璧だって確信したわ。でもコーチ陣は、そうではなかった。私たちのメイン・コーチで長く師と仰いでいるマリー=フランス・デュプレイユとパトリス・ローゾンは当初、「ムーラン・ルージュ」で踊るというコンセプトに、あまり乗り気ではなかったの。でも、私たちが音楽に合わせて滑る姿を見て、どれだけ私たちがこの曲に思い入れがあるかを知って考えを変えたのよ。今までのプログラムとも違う、情熱をかきたてるものがあって……この曲で奏でられる音の1つ1つに、繊細で複雑な感情が込められていて、(映画の主役となった)サティーンとクリスチャンのラブストーリーがあり、振り付けもこれまでとはまったく違う、挑戦しがいのあるもので、何もかもが、まさに私たちが求めていたものだったの。それに比べると、ショートダンスの方の選曲は、なかなか難しかったわ。マリー=フランスからは、ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」をサンバに使っては?と提案されて、私たちもそれはいいアイデアだ、と思ったの。エッジィで、よく知られた曲だし、ビートもサンバの動きにぴったりだったから。でも、この曲を他のラテン系の曲とスムーズにつなげて、さらにそこにストーリーを作り出すのは至難の技だった。幸い、ルンバに「ホテル・カリフォルニア」が使えると気がついて、それをきっかけにスムーズにまとまっていったけれどね。このイーグルスの名曲は、前からずっと使いたいと思っていた曲だったから。ただ、まさかアイスショーではなく、競技の場で使えるなんて思いもしなかったけれど。

---振り付けはどうやって決めていくものなのでしょう。シングルやペアの振り付けとはアプローチが違いますよね?

T ええ。最初は氷上ではなく、ダンスフロアで振付を練り上げるの。私はこのパートが一番好き。それから、マリー=フランスがダンスフロアでの動きを、見事に氷の上での演技に置き換えてくれる。あとは必要とされるテクニカル・エレメントを織り込んで、音楽を際立たせるトランジション(つなぎ)を加えていく。その後、アーティスティック・ディレクターや演技専門のコーチからアドバイスをもらって、ひとつひとつの動きに意味を加えていくの。演技のあらゆる瞬間が格調高く、なおかつ新鮮であるためにね。

---現役生活を通して、使いたかったけど使えなかった曲はありますか? 

T あるわ。映画『プライドと偏見』のサウンドトラックで滑ってみたいと、ずっと思っていたの。ピアニストのジャン=イヴ・ティボーデが奏でる旋律は、私が今まで耳にした中でも、群を抜くほどに美しく感動的だったから。もうひとつは、ピンク・フロイドの曲を使ったプログラムをもう一度やってみたいなと思っていた。特に「あなたがここにいてほしい原題:Wish You Were Here)」には思い入れがあるわ。スコットと私は以前、練習でリンクに立つときに、いつもこの曲をかけていて、いつか彼のおじいさまと私の祖母に捧げるプログラムを滑ろうと約束していたの。彼も私も、祖父母との絆がとても強かったのだけど、2人とも今はこの世にいないから。

---日本でも大変有名なあなたですが、もしかしたらこれを読んでいる人で、あなたを知らない人がいるかもしれません。彼らが YouTube であなたのベストな動画を検索するための質問です。あなたの生涯のベストパフォーマンスは、どの大会のどの演技ですか? 

T 練習では試合映像を見ながら自分たちのテクニックを事細かに分析して、弱点を改善しているの。だから私たちも自分たちの演技の動画はよく見ているわ。でもね、正直言って、自分がスケートしているところを見るのは苦手。厳しい目で見てしまうから、気に入らないところがどうしても目について仕方ないの。映像を見ながら「あ、ここ失敗した」とか「ここでもう少しこうできなかったのかな」と粗探しばかりしてしまう(笑)。とはいえ、読者のみなさんにすすめるなら、2007年世界選手権のフリーダンス「悲しきワルツ」、2010年バンクーバー五輪のショートダンス「ファルーカ」、2013年世界選手権のフリーダンス「カルメン」、2017年世界選手権のショートダンス「プリンス」、そして2018年、平昌五輪のフリーダンス「ムーラン・ルージュ」を挙げるわ。それから、YouTubeにはファンの方々が作ってくれたすばらしいハイライト映像もあるの。私たちのキャリアを見事にまとめてくれているからぜひ(笑)

---最後に、今後あなたがどのような人生を歩むのか。夢や、展望を教えてください。

T 夢は今日叶ったわ。ヴォーグに撮影されることは私の大きな夢だったんですもの。だからヴォーグ以外の話をするわね。そうね、今は興味があることがたくさんあって、今は本当にワクワクしている状態。まず、スコットと一緒に、アイスショーのツアーを企画しているの。今はカナダだけだけれど、いつか世界を回って、日本でもショーを開けたら最高ね。グリーティングカードのブランドを始めるプランもあるし、スポーツウェアのプロデュースでもコラボレーションを考えているし、私が育ったコミュニティの中で、チャリティーを行っている組織にも、何かの形で恩返しがしたいと思ってる。私の究極の目標は、人々に勇気を与えること。若い女の子たちが自分の良いところを伸ばし、目標や夢に挑むのに、私が力になれるのなら……これ以上の喜びはないわ。
参照元:VOGUE JAPAN

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