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ヘンリー王子とメーガンのウエディングケーキを手がけたパティシエの正体。

  • 2018.5.24
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ロイヤルキスを交わすヘンリー王子とメーガン・マークル。 Photo: Getty Images
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王室に新しい風を吹き込んだ、異例づくしのウエディングケーキ。

ヘンリー王子メーガン・マークルの結婚式は、あらゆる点で王室の伝統を破り、歴史に残るものとなった。それはウエディングケーキのセレクトにも及んだ。何世紀にもわたり、ロイヤルウエディングでは、アルコール漬けのドライフルーツとしっとりした食感で愛されているフルーツケーキが定番だった。数ヵ月間保存可能ということもあり、多くの場合、結婚式では食べず、缶に入れてゲストにお土産として渡されていた。

そのため、ケンジントン宮殿が、今回のロイヤルウエディングケーキがバタースコッチのアイシングと牡丹とバラのデコレーションを施したエルダーフラワーとレモンのスポンジケーキに決定し、式場で食べられるフレッシュなものになると発表した時は世間に驚きを与えた。

きっかけは2015年のインタビュー。

ケーキ製作の担当者も同じく、クレア・プタックという異例の選択だった。彼女が営む「ヴァイオレット・ベーカリー(Violet Bakery)」は、イーストロンドンの街ハックニーの緑豊かな通りにひっそりと佇む、王室御用達というよりはクリエイティブで地域密接型のお店として知られていた。

ヘンリー王子とメーガンが私たちのような個人経営店を選んでくれたことに心から感謝しています」と、ウエディングを1週間後に控えたクレアはVOGUEに語っていた。

そもそもの事の始まりは、メーガンが2015年に出版されたクレアのレシピ本「The Violet Bakery Cookbook」を目にしたことがきっかけだった。彼女は、自身のライフスタイルブログ「The Tig」でのインタービュー交渉のためにクレアに連絡を取っていたのだ(このブログは王室との婚約のニュースが出た後閉鎖された)。それから3年が経過したある日突然、クレアは再びメーガンから電話を受けることになる。

「彼女から、ケンジントン宮殿に来て、ウエディングケーキのデザインを数種類ほど提案してもらえないかと依頼されたんです。そこで、結婚式が行われる春の花と、私のお気に入りのフレーバーをもとに構想を練り始めました」と、当時を振り返った。

ポイントは産地とサステナビリティ。

クレアが提案した最初のケーキ「アマルフィ海岸産レモンとエルダーフラワーシロップを使ったスポンジケーキ」は即採用された。

「産地とサスティナビリティという、私が重きを置いている価値観を王室とシェアできたことが嬉しかったです。特にヘンリー王子は高い関心を持ってくださっていて、彼の父親チャールズ皇太子も有機農業を大いに支持しています」

2人の記念すべき日のために、クレアはノーフォーク州にあるエリザベス女王の別荘サンドリンガム・ハウスからできる限りの材料を調達した(残念ながら、ウエディングケーキはオーダーメイドなので、彼女の店「ヴァイオレット」で今回のウエディングと同じフレーバーのものが販売されることはない)。

カリフォルニア生まれの少女が王室のウエディングケーキを作るまで。

クレアはメーガンと同じカリフォルニア出身で、サンフランシスコ近郊の小さな町インヴァネスで育った。放課後には母と祖母から料理を学び、14歳の時には週末に仕事を始めていたという。最初は小さなカフェで、それから地元のベーカリーで働いたそうだ。

カリフォルニアの女子大、ミルズカレッジで映画の勉強をしていた学生時代に、クレアはアメリカのベストレストランとしてよく名前が挙がる、バークレーの「シェパニーズ(Chez Panisse)」に出会う。創業者は伝説となったアリス・ウォーターズだ。1971年のオープン以来、地元で採れた最高品質の食材を使った、親しみやすいディナーパーティースタイルで長年人気を誇っている。

「アリスは私にとって真の指導者なんです。彼女はパリのソルボンヌで学び、帰国した際、アメリカの食事をもっと良くするために何かしなければと感じたそうです」と、彼女について語った。実際、クレアはイギリス人の彼と恋に落ちてロンドンに移住する前、ウォーターズで3年間修行を積んでいる。

クレアがイーストロンドンにやって来た2005年、この地域はまだ再開発が始まったばかりだった。「まともなコーヒーを楽しめる場所なんて1つもなかった」と、当時をふり返る。

ホームシックを紛らわせるため、彼女はカップケーキやバタースコッチ・ブロンディなどのアメリカの伝統菓子を焼き始め、ほどなくブロードウェイ・マーケットで露店を出すようになった。彼女はそこで、着色料の代わりにフルーツピューレを使用したりと、ヘルシーなケーキを作るパティシエとして有名になった。「シンプルで、自家製で、よりクオリティの高いものを作りたかったのです」と、その思いを語った。

2010年に「ヴァイオレット」をオープンすると、彼女の作るデザートは瞬く間に人気となった。彼女自身はキッチンではもう働いていないが、商品のすべてを店内で作る点は今も変わらないそうだ。「使う前に、スタッフには食材を味見してセレクトしてもらっています」と、クレア。ちなみに、彼女のお気に入りメニューは、コルストン・バセット・スティルトンとニールズヤードの熟成チェダーチーズ、エシャロット、そしてキムチを挟んだトーストサンドイッチなのだそう。

インタビュー途中、クレアはウエディングケーキの最終チェックのためにキッチンに戻っていった。 バッキンガム宮殿には、彼女のチームがウィンザー城に運ぶ前にケーキを仕上げるためのスペースが設けられていた。「結婚式の時は、現場で完成させるようにしています。その方が、誰かがケーキを倒してしまわない限り、問題が起きることがないから」だそうだ。

ドレスの相談は隣人のシモーネ・ロシャに。

結婚式で何を着るかについては、クレアは「ヴァイオレット」の隣りに住んでいた、友人でありファッションデザイナーのシモーネ・ロシャに電話をかけて相談したそうだ。

「シモーネがドレスに施す刺繍って、とびきり美しいんです。ケーキにデコレーションする花に合わせたドレスを着れば素敵だろうと思って」

バッキンガム宮殿でのケーキ作りを手伝っていた彼女のチームには、イギリスのブランド、サンスペル(Sunspel)が服とエプロンを作ったそうだ。「私たちはシェフ定番の白いコックコートを着ません。だって、ヴァイオレットはそんな店じゃないから」と、クレアは話す。

チームにとって、ヘンリー王子とメーガンの結婚式が非現実的な経験であったことは間違いない。ウエディングケーキ担当のニュース発表以来、想像をはるかに超える客がベーカリーに押し寄せたそうだ。クレアは、「世界中から人々が訪れてくれます」と笑顔で語り、「でもとても小さな店なので、期待外れでなければいいけど…っていつも思います」と付け加えた。その心配は無用だろう。だって、宮殿を満足させた店なのだから。
参照元:VOGUE JAPAN

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