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舞台は寺院から工場跡まで。エレガントでラディカルな写真祭「KYOTOGRAPHIE」レポート

  • 2018.5.24
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ギデオン・メンデル「Drowning World」@三三九(旧貯氷庫)(c)Sayuri Kobayashi

コンクリート壁に配管むき出しの半地下空間に写真が吊るされている。ここは京都市中央市場の旧貯氷庫。4月14日から5月13日にかけて開催された「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2018」の会場のひとつだ。展示されているのは、南アフリカ出身の写真家ギデオン・メンデルが世界各地で洪水に直面した人々を捉えた作品。心なしかひんやりしたこの場で写真と対峙していると、地球温暖化による水害と氷河の融解との関係に思いが巡りだす。
写真家のルシール・レイボーズと照明家の仲西祐介が2013年にはじめ、毎年春の京都で開催されているKYOTOGRAPHIEは、今年で6回目。その魅力は、国内外の写真家の洗練された作品もさることながら、それらと京都の街に点在するユニークなロケーションとの組み合わせの妙に多分にある。今回新たな舞台として加わった京都市中央市場は日本初の中央卸売市場というだけあって、歴史を感じさせる古い建物が立ち並ぶ。“京の台所”と称され、さまざまなものが行き交ってきたこの場だが、写真展が行われるのは初めてだ。
京都新聞ビル地下の印刷工場跡も今年加わった会場だ。ここでは映画『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』でも知られるアメリカのローレン・グリーンフィールドが、ジャーナリスティックな視点で人間の富や美への欲望を記録した写真を展示。果てなき欲望に従う人々の姿が陳列される様は、恐ろしさやおかしみをも感じさせる。
KYOTOGRAPHIEではおなじみの“京都らしい”場所での展示も充実している。建仁寺の両足院では、前衛いけばな作家の中川幸夫が自らの作品を撮影した写真を、黒く染めた畳の和室に配置。見事な庭園とともに楽しむことができる。帯匠・誉田屋源兵衛の黒蔵では、ベナン共和国出身のロミュアル・ハズメの作品を展示。ガソリンを運ぶ人々による交通渋滞の様子を収めたシリーズと、極彩色の衣装を纏って舞うヴードゥー教の祭祀を捉えたシリーズを、蔵を改造した空間にインストールした。
ファッションの観点でいえば、二人の大物がフィーチャーされていた。一人は1950年代にファッション写真にルポルタージュ的感覚を取り入れ新風を吹き込んだフランク・ホーヴァット。今回は「女性」を切り口に、後世に多大な影響を及ぼしてきた代表作から私的なプロジェクトによる作品まで紹介している。もう一人は稀代のイメージメーカー、ジャン=ポール・グード。写真やインスタレーションに加え、グードが振り付けを手がけたダンスパフォーマンスが会期中毎日繰り広げられ、観客をその世界に没入させた。
もうひとつ、今回のKYOTOGRAPHIEで特筆すべきポイントは、メッセージ性の強さにもあった。これまでの「Our Environments~私たちを取り巻く環境~」(2014年)、「TRIBE − あなたはどこにいるのか?」(2015年)、「Circle of Life|いのちの環」(2016年)、「LOVE」(2017年)に続き、今年掲げられたテーマは「UP」。一見いつになく抽象度が高いようで、主催者の仲西とルシールはこう明言している。

仲西祐介:今こそ、日本人が目を覚まし・立ち上がり・動き出す時だと思っています。さもなければ、悪政が私たちの生活や精神を蝕んでいってしまうでしょう。一人ひとりが能動的に行動するきっかけを提供できればと思い、このテーマを選びました。

ルシール・レイボーズ:これは日本だけではなく、世界中に対して言えることです。今こそ、政治の決定に左右されず、私たち全員が自分自身の手で未来や運命の舵を取るべき時です。現代において世代や性別を厭わず誰もが自分を表現出来るようになるのはごく当たり前のことでありながら、なかなかむずかしいのです。より良い社会を作っていくために、問題を直視し解決していこうとする文化がまだ十分に根付いていない日本において、今回のテーマ「UP」は特に強いメッセージになるのではないかと思いました。

(KYOTOGRAPHIE2018カタログ冒頭のSpecial Interviewより、一部編集)
作品はダイレクトに政治的なものばかりではない。しかし、だからこそ、美しい京都の街に誘われ、ついこれらに遭遇してしまった人一人ひとりの意識に、深く働きかけるものがあったのだろう。
■関連情報

KYOTOGRAPHIE 2018 京都国際写真祭

https://www.kyotographie.jp

(c)Sayuri Kobayashi /MODE PRESS