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『未来のミライ』に重ねた“自分の子どもの情景”とは?細田守監督がカンヌで語る!

  • 2018.5.19
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出典:https://news.walkerplus.com/article/147373/

現在フランス・カンヌで行われている第71回カンヌ国際映画祭の「監督週間」で、現地時間16日に『未来のミライ』(7月20日公開)が初上映された。上映を終えた細田守監督に現地で取材を行った。いくぶん緊張が解けた感じで、にこやかに話してくれたロングインタビューを掲載。

■ 『かぐや姫』も上映された監督週間に選ばれたことは光栄

「まさかカンヌ映画祭に来られることになるなんて、毛ほどの考えもなく始めた企画でした。以前アヌシー国際アニメーション映画祭に行った時に、『アヌシーはカンヌのアニメ部門が独立して出来たもの』と聞いていたので、カンヌは実写の映画祭だと思っていました。実はそんなことはなくて、作品の持つ力が優先で、技法は関係ないということのようです。それでもアニメが上映されることはほとんどなくて、よっぽどディレクターが気に入ってくれなければあり得ないことだと言われました。そんな流れの中で実写の作品の中に選ばれたということはたいへん光栄なことだと思っています。(高畑勲監督の)『かぐや姫の物語』も上映された監督週間ですし、大きな評価をいただいたのだと思うとうれしいと共に大きなプレッシャーを感じています」。

「『未来のミライ』の海外セールス会社であるシャレードが応募したいなら準備すると言ってくれました。3月初めに(完成版の)4分の1くらいの映像を送ったら、出品することになり、締め切りまでに間に合わせなくてはいけなくなって大変でした。夏公開の作品なのでいつもならギリギリまで作っているところ進行を早め、3月にはアフレコをしましたが、ダビングはゴールデンウィークにやっていましたから。なにせ、スタッフ試写もやっていない。完成版を観たのは今朝のカンヌ上映が初めてという人ばかりってのも、すごいでしょう(笑)」。

■ 自分の子どもの情景を見て、企画を作っていった

「今朝の上映は緊張しましたね。世界のジャーナリスト相手のものと聞いていたので一般のお客さんとは見方が違うと思って。でも、終わった時の拍手が大きかったし、温かかった。いまでもここにいることが不思議な感じがしています。いろいろな人が関わった表現の力がここまで連れて来てくれたという感じです」。

「この企画は3年前、下の子が生まれたことで始めた企画です。その時上の子が3歳で、その子がいまは5歳になっています。3歳の子どもが生まれたての赤ん坊を迎えてのリアクションがとてもおもしろくて、新鮮で。僕自身一人っ子だったので初めての経験なんですね、もう一人の子どもが急に現れるって経験が。それで、上の子が言ったことや、やったことをビデオや写真で細かく記録しておきました。その膨大な記録が発想や脚本、エピソードのもとになっています。子どものいる知り合いの話とかエピソードも入れています。嫉妬して新幹線のおもちゃでたたくシーンがあるんですが、ホントはそれどころじゃないですよ、目を突いてきますからね、指で(笑)。その辺は加減しつつ書いてます」。

「実はね、下の子の名前が未来っていうんですけれど、ある日上の子が言うんです、『大きな未来ちゃんに会った』って。『大きいっていうのは、巨大なの?お姉ちゃんになった未来ちゃんなのか?』って聞いたら、お姉ちゃんになった未来ちゃんだ、って言うんです。自分の子どもの情景を見て、やり取りを重ねて企画を作っていきました。それがね、脚本を書いていくと、今度は自分が子どもだった時の感情が甦ってくるんですよね。自転車に初めて乗れた時の気持ちとか…。そういうものも入れながら書いていきました。ちなみに、上の子に主題歌を聴かせたら『いいんじゃない』だって、生意気に(笑)」。

■ 子どもを通して世界や社会を描くことがアニメの今日的意義だと思っている

「僕はあくまでもアニメ作家です。アニメは技法だと思っています。実写映画では人生のあらゆることを描写し尽くしていますが、アニメではまだ実写映画では表現されていない人生やなにかを、アニメの技法ならではのやり方で表現できる余地があるのではないかとと思います。アニメという技法なら可能な表現があると信じている。この技法を使って映画の、映画芸術の未知の領域に貢献できたらいいなと思っています」。

「アニメは大きなこと、例えば代々続いていく人生のループなんてことを、実写よりもコンセプチュアルに描けると思うんです。例えば、今回は4歳児が主人公で、この子の視点で人生を考えさせるわけですね。4歳の子が映画を最後まで引っ張っていかないといけない。それは実写では無理だと思います。台湾のエドワード・ヤン監督の作品に7~8歳の少年を主人公にした『ヤンヤン 夏の思い出』という作品がありますが、この子はほとんどしゃべらないで、人の後頭部の写真を撮っているって子なんですが。そのくらいかな(笑)。今回の主人公のアフレコのために5歳児もオーデイションしましたが、実写では無理ですよ。でもアニメなら、4歳児の主人公で映画が出来るんです」。

「上白石萌歌さんをキャスティング出来たのは幸運でした。当時高校3年生の18歳だったんですけれど、この子だと思いました。それまで、5歳から10歳の子どもから30歳前後までの女性をオーディションしていたんですが、上白石さんにやってもらったら存在感があった。くんちゃんの人間性、アイデンティティを探しているところとか、問題意識を共有できるところとか…『くんちゃんはこういう子なんだ、この映画はそういう映画なんだ』って分かった感じがしたんです。くんちゃんの葛藤が現れている部分の台詞をオーディションでは演じてもらったのですが、最初は4歳児っぽく、次は自分の素のままでやってもらいました。そうしたら、素のままのほうが良かった。聞いていて響いてきたんです。生きているって感じでしたね。ありがとう、って本人を目の前にして言っちゃいますが(笑)」。

「アニメは子どものもの、という考えはもう昔のものです。いまは子どもを描けないんですよ。少子化で子どもが周りにいないし、観察もしていないから、描けない。いまのアニメは大人やキャラクターを描くものが多い。男の子も出てこないですね。観ているのも大人。でも、僕は子どもを通して世界や社会を描くというのが、アニメの今日的意義だと思っています。こんなこと言うと無謀と言われますが、その地平を切り開くのが僕の仕事だと思っています」。

■ 姉にあって自分にないものってなんだろう?と考えます

続けて、くんちゃんの声を演じた上白石萌歌さんも答える。

「この映画が初めてのアフレコでした。映画の主役も初めてで、それでカンヌに来てしまって、ほんとうに光栄だし幸運だと思います。今朝初めて(完成版を)観たんですが、お客さんの拍手も温かくて、ジャーナリストの方が多いと聞いていたので緊張していたのですけれど、途中からはそんなことも忘れて観入ってしまいました」。

「くんちゃんが未来ちゃんに対して持つ想いを演じることについては、私も姉がいて同じお仕事をしていて、自分と姉の違い、比べられるし自分も比べてしまうし、やはり葛藤があります。そんななかで、姉にあって自分にないもの、または自分にしかないものってなんだろう、といつも考えています。血はつながっているけれど、性質の違う存在が近くにいることが、今回の演技に活きたのかなと思います」。

「カンヌ映画祭については三大映画祭の一つなんだということくらいしか知りませんでした。そこに連れてきていただいたのは、監督はもちろんスタジオ地図のスタッフの皆さんのおかげだと思います。12年間のお仕事が認められてのカンヌ、本当におめでとうございます。これからも監督の作品、楽しみにしています(笑)」。

この時はまだ一般のお客さんが中心の上映を控えていたため、緊張と興奮がまだ続いている2人。それでも上映の手応えは十分、という感じ。『未来のミライ』は7月20日(金)公開。(Movie Walker)