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ミラノサローネ、今年のデザインハイライトは?

  • 2018.4.25
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【さらに写真を見る】ミラノサローネ、今年のデザインハイライトは?

INDIA MAHDAVI インスタ映え必至なエクスクルーシブなサロン。

インディア・マダヴィが手がけたロンドンのバー、スケッチのミレニアルピンクの内装は、インスタグラムの効果も相まって大きな話題となったが、彼女の最新プロジェクトも見逃せない。ミラノのトップデザインディーラーであるニーナ・ヤシャールが創設したニルファギャラリー内にある会員制クラブの内装を今回マダヴィが手がけたのだ。内装はドゥグルネイの壁紙、 ジオ・ポンティとマルティノ・ガンパーのゴージャスな家具、そしてヤシャール自身のコレクションによって飾られた。

VITRA 時代によって変化する家具の意味合いにフォーカス。

ウィーン出身でパリを拠点にするデザイナー兼キュレーターのロバート・スタッドラーは、約200点のチェアを中心とした家具を、かつて体育館として利用されていた会場に収集。それらを、機能や歴史的由来とは関係なく、彼の独断でグループ分けした。コンスタンティン・グルチッチ、バーバー&オズガビー、ロナン&エルワン・ブルレックといった著名なデザイナーも招いて、共同生活空間についてのアイデアを発展させるとともに、社会の変化が家具に与える影響について探求した。

CEASARSTONE 想像をはるかに超える、最新型アイランドキッチン。

フィリップ・マルインによるブランコ、歴史的なセルベッローニ宮の中心部に設置したハイメ・アジョンによる万華鏡風メリーゴーランド、17世紀に建てられた教会にトム・ディクソンとのコラボレーションで開かれたレストランetc.、表面加工のエキスパートであるシーザーストーンは、建築的なインスタレーションを発表することにおいても有名だ。

今年は、キースのマイアミ店や、ミラノのヴァレクストラのブティックを手がけるなどして知られるNYのデザインスタジオ、スナーキテクチャーとともに、アイランドキッチンに革命をもたらした。

コンセプチュアルな没入型インスタレーション「アルタード・ステイツ」は、シーザーストーン製の石板で作られた4つの設備を通し、水の状態変化(氷、液体、蒸気)を一度に表現した。

DIMORE STUDIO インテリア界の寵児が手がける、家具とインスタレーション。

ここ数年急激に人気を伸ばしているディモーレ・スタジオは、フェンディエルメスイソップ、フレッテ、シール・トゥルードン、といったブランドと協業して、高級感のある店舗を作り上げてきた。

今年、メンバーのエミリアーノ・サルチとブリット・モランは3つの独立したプロジェクトに携わるミラノの企業としてその地位を確固たるものにした。ソルフェリーノ通り11番地で開催された「トランスファー」は20世紀デザイン界の巨匠たちへ捧げる内容となっている一方、廊下を隔てた別の展示では同スタジオの「プロジェット・ノン・フィニート」や「オジェッティ」といった家具のコレクションが紹介された。

通りを進んだ22番地の「リミテッド・エディション」では、エミリアーノ・サルチによるユニークな家具デザイン (19世紀後半〜20世紀前半のクラシックな調度品を脱構築し、ディモーレならではの現代的なラッカー塗料と素材によってアップデートしたもの)が披露された。

GOOGLE SOFTWEAR 生活の中で見事に融合するハイテク&ローテクデバイス。

1998年、トレンド予測の専門家であるリドヴィッチ・エデルコートは、私たちの生活にテクノロジーが何の不自由もなく織り込まれる未来を予測した。グーグルがミラノデザインウィークで初公開する「ソフトウェア」は、ハイテクとその真逆のクラフトを融合した心地よいインスタレーションを通して、そのコンセプトを私たちにもたらした。

エデルコートとグーグルはアートやデザインのセレクトショップとして有名なロッサーナ・オルランディのギャラリー3部屋にわたって「モダンコクーン」を展示。オランダ人デザイナー、キキ・ファン・アイクによりオーダーメイドの壁掛けのような日常的なオブジェとともに、生活シーンの中に溶け込むハイテク機器を紹介した。  

DISCO GUFRAM グルーヴィーなムードを家具に落とし込んで。

クラブ文化と斬新なデザインはダンスフロアで1つの形になる。少なくともこのアイデアはイタリアのモジュール式家具ブランド、グフラムの手がけた最新プロジェクトの背景にあるものだ。

ディスコにインスパイアされたこのコレクションは同ブランドの人気ソファ「ボッカ」 (「唇」という意味)を彷彿とさせるデザイン。遊び心に溢れていると同時に挑発的だ。最新のソファはミラノを拠点とするアトリエ・ビアゲッティ、そしてキャビネットの上で溶けるように置かれているミラーボールは、オランダ人のアーティストデュオ、ロットガンゼンとそれぞれコラボレーションしたもの。一連のグラフィックは、ゲール・ギャブレットとステファン・ヴィラードが運営するパリのデザインスタジオ、GGSVが担当した。

KVADRAT サステナブルなものづくりで一歩先へ。

循環経済への転換こそが、大手繊維ブランドであるクヴァドラのメインテーマである。前回のミラノデザインウィークでは、コットンやウールといったリサイクル素材を使い「ソリッドテキスタイルボード」を生み出したスタートアップ企業、リアリーとタッグを組んだ。デザイナーのマックス・ラムの力を借り、このプロジェクトは、リサイクルの上をいく「アップサイクル」の新しいベンチマークを定めたと言えるだろう。

昨年に引き続き、今年のクヴァドラのインスタレーションのテーマもサステナビリティだ。同社の依頼を受け、リアリーの「ソリッドボードテキスタイル」を使って革新的な作品を生み出した7人のデザイナーの中から、傑出した3人を取り上げて紹介したい。

まずイギリス人デザイナーのベンジャミン・ヒューバートによる「シフト」。これは小売店用のモジュール型陳列システムで、ネジやボルトを一切使用せずにフラットな吸音パネルを陳列棚へとエレガントに変身させている。

次に、日本人建築家の長坂常が手がける幾何学的なチェア。素材が研磨、ブラシがけ、漂白によってむき出しになっているのが特徴だ。

最後にスウェーデンのデザインスタジオ、フロントによる「テキスタイルカップボード」。「ソリッドテキスタイルボード」を活かして、なめらかな曲線と布地のようにソフトな質感を見事に共存させた。

MINDCRAFT 18 15人の注目若手デザイナーが個性を光らせる。

デンマーク芸術評議会によるマインドクラフトは今年も、サン・シンプリチャーノ教会で展覧会を開催。ガム・フラテーシやセシリエ・マンツといった人々がこれまでキュレーションしてきたが、今年はデザイナーのディッテ・ハンメルストロムを立役者とする新進気鋭のデザイナー15名が集結して大規模な作品を作り上げた。

19世紀に建造された歴史的なパラッツォの中庭に点在する作品の中には、写真のパターソン&ヘインによるユーモアなチェア「LMA」(=lick my ass)なども含まれていた。

LEE BROOM See Now, Buy Nowで話題を呼んだ照明。

毎年恒例、ロンドンベースのデザイナー、リー・ブルームがミラノの街を彫刻的なデザインでライトアップ。ブレラ・デザイン地区にある2級指定建造物の中で開催されたオブザバトリーでは、彼の新作である4つの照明コレクション「エクリプス」「オリオン」「オーロラ」「タイダル」をフィーチャーした。どのコレクションもLED照明システムや特注デザインの電球によって、光の屈折や反射を幻想的に表現。「See Now, Buy Now」を取り入れたため、これらの作品もすぐその場で購入することができた。

NENDO 過ぎ行く時間にメッセージを吹き込んで。

日本のネンドほど生産性の高く、それでいて私的なデザイナーはなかなかいない。常に400件ほどのプロジェクトを掛け持ちしていることで有名な佐藤オオキが率いるこのスタジオの仕事を特徴づけているのは、そのシンプルさに加え、高度なユーモアだ。今年の展示のテーマは「時間のデザイン」。4つの砂時計からなる作品の、砂が流れる速さを角度を変化させることによって、私たちが時間の経過に関して抱く視点をも変えていく。

DESIGN ACADEMY EINDHOVEN 現代社会が抱える問題に、デザイナーの卵たちが切り込む!

アイントホーフェン・デザイン専門学校はインテリアデザイン界のセントラル・セント・マーチンズと言うべき名門校だ。今年は卒業生たちがデザインの意味、そして何よりも、買えるものと買えないものを、テーマに模索した。

イタリアの日常生活を代表する通りとも言われるピエトロ・クレスピ通りに設置されたインスタレーションの一部を紹介しよう。

写真のテオフィル・ブランデットによる作品は、サイバーカフェにおける仮想通貨という抽象的な現象を表現している。またフェイクニュースが横行する時代におけるグラフィックデザインの役割について問題提起したアイリーン・ストラクッズィは「ミスインフォメーションタイムス」という新しい新聞を発行。マルティーナ・ハインは、そこで働く意思のある人々に無料のコーヒーを提供する「ベーシックインカムカフェ」をオープンさせた。

NORWEGIAN PRESENCE クリエイティブな文化を培うノルウェー独自の哲学。

スウェーデン人にヒュッゲがあるように、ノルウェー人には共同体が存在する。コミュニティにおける連帯感は彼らの哲学であり、現にトルトーナ地区では若手からベテランまで、幅広い年代のデザイナーたちが集って活動している。これを可能にしているのは、お互いの目標に対する深い理解のみならず、互いに協力することに皆が重きを置くという共通認識だ。「1人の子供を育てるには1つの村が要る」と言われるが、古いことわざから学ぶことはまだまだあると気づかせてくれる。
参照元:VOGUE JAPAN

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