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週に1度のお楽しみ。立川『かいじゅう屋』のカラフルサンドイッチ|by PARIS mag

  • 2018.4.24
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毎日の暮らしのなかで少しだけ心が弾むような豊かさをお届けするWEBマガジンPARIS mag(パリマグ)から、今回は立川市西砂町にあるパン屋さん「かいじゅう屋」をご紹介します。

ここ数年テレビや雑誌でも特集され続けているサンドイッチ。たまごサンド、萌え断サンド、肉サンド…と、その種類も本当にさまざまです。その中でも幻のサンドイッチと呼ぶ人もいるという、『かいじゅう屋』の「カラフルサンドイッチ」をご存知でしょうか?週に1日だけ販売する「カラフルサンドイッチ」を求めてお店に行ってきました!

「お客さんからお金をもらうことが怖い」からこそ本気で作るパン

アメリカに1番近い街・福生市との境、立川市西砂町にある『かいじゅう屋』。西武拝島線の西武立川駅から約15分歩くとお店の看板が見えてきます。ここは有機野菜を栽培する鈴木農園さんの敷地の一角。『かいじゅう屋』の店舗も、鈴木農園の鈴木英次郎さん・美智子さん夫婦が営んでいたパン屋『ゼルコバ』の跡地です。なぜパン屋さんを始めたのか、そして鈴木農園さんとの出会いについて、店主の橋本宣之さんにお話を聞きました。

「20歳の頃、よく都内のパン屋さんを食べ歩いていました。そのとき、富ヶ谷『ルヴァン』のパンに衝撃を受けたんです」。

『ルヴァン』と言えば日本における天然酵母パンの第1人者。そこでの修行を希望した橋本さんですが、当時はスタッフを募集しておらずそのチャンスが巡ってきたのは5年後。バックパッカーとしてアジア諸国を放浪する生活から一転パン職人になったそうです。そこから橋本さんはパン作りのいろはをイチから学びます。

「『ルヴァン』のパンの世界は今まで知らなかった新しい世界で、お店も雰囲気も好きでした。パンを小麦の粒の状態で仕入れてお店で挽いていて、すべてではないですがその手法を今でも継承しています」と橋本さん。

『ルヴァン』の調布店、上田店を経て2007年に豊島区目白に『かいじゅう屋』をオープン。開店当日、作業が一段落した際自分が作ったパンを食べてみたところ、その味に納得できなかったと言う橋本さん。なんと1度お店を閉めて、パンの研究を始めました。その後再びオープンしたのは1ヵ月後。

独立したものの思うようなパンが焼けなかった橋本さんですが、それでも試行錯誤を重ね『かいじゅう屋』は目白の人気店に。そしてオープンしてから10年目の2017年5月に立川市に移転をします。

「独立してすぐは自分の焼いたパンでお金をもらうのが怖かったのですが、いつからかその気持ちが薄くなっていることに気がつきました。その心の変化に恐怖心を抱いたんです。このままではこの先成長できないと思っていた矢先、鈴木農園さんに声をかけてもらいご縁とタイミングで移転を決意しました」。

橋本さんのパン作りに対するストイックさが如実に表れているエピソードです。そんな橋本さんですから、パンを作るのにも人1倍時間をかけています。オープンするのは週に3日6時間だけですが、営業日当日は(月・木は朝〜日が暮れる頃まで)午前2時から仕込みを始め、お休みは日曜日だけなのだとか!

生産者と共同で作る野菜たっぷりのサンドイッチ

立川に移転して登場したのが「カラフルサンドイッチ」。毎週水曜日だけの限定メニューです。このサンドイッチに入っている野菜は全て鈴木農園で栽培された有機野菜。スーパーではなかなか見られない珍しいお野菜も。具材担当である奥様の美香さんにサンドイッチのこだわりについて伺いました。

「その時期に採れた野菜を、どう調理すればいいか鈴木農園さんと相談しながらメニューを作っています。パンは以前ハード系を使っていたこともあるのですが、やはり柔らかいパンとの相性がよかったみたいで、今は『まるぱん』を使っています」。

この日のメニューは「アジアンつくねバーガー」「スイートチリマヨチキンバーガー」「里芋コロッケバーガー」の3種。メインのつくね・チキン・コロッケに、そのときどきの季節野菜をサンド。どれも見た目に美しく、ボリューム満点!男性でもこれ1つでおなかいっぱいになりそう!

「アジアンつくねバーガー」には、紅甘味、紅岬、紅芯大根、もみじスティック、みどり大根の5種の珍しい大根とにんじんのなますが入っていて、見た目も鮮やか。バインミー風の味付けがくせになる!

「スイートチリマヨチキンバーガー」は、チキンが入ったがっつり系。白い花のような野菜は、スティックブロッコリー。甘みと程よい食感でおいしいです!

「里芋コロッケバーガー」は旬の里芋を使った1品。にんじんとブロッコリーのサラダがコロッケを引き立てます。「カラフルサンドイッチ」のまるぱんは、表面は少しパリッと、中はしっとりもちもちとした食感。しっとりとしたパンは、サンドした新鮮野菜とマッチし、そっと優しく包み込んでくれます。

『かいじゅう屋』のパンはどれもシンプルで、バターやジャムが引き立つ味わい。それでいて、何もつけなくてもやみつきになる不思議な中毒性があります。

「リッチなパンもおいしいですが、毎日食べたくなるパンがいいなと。だから、僕のパンは余計なことはしないよう、基本に忠実に焼くように心掛けています」と語る橋本さん。

だからサンドイッチにもぴったりなんですね。橋本さんは小麦粉やバターだけでなく、オーブンやミキサーにもこだわっていて、窯はドイツ・ウェルカー社のガスオーブンを使用しています。

「ガスと電気では仕上がりがまったく異なります。ガス窯だと適度に水分が保たれてしっとりとしたパンに焼きあがるんですよ。よく使用している材料について質問されるのですが、実は機材も重要なんです!」と橋本さんが教えてくれました。

研究熱心な橋本さんですが、パン作りでもっとも大切にしているのがご自身の精神状態なんだそう。

「精神状態が崩れてしまうと、パンに直接影響が出てしまうんです。だから、バランスを保つために環境を整えるように注意しています。ちょっと1人で集中したいときは、あえて遠くのコンビニまでわざわざ歩いて買い物に行ったり、車を運転してみたり。移動するのが好きなんですよね(笑)。リフレッシュにもなります」。

リフレッシュ方法にバックパッカー時代の名残が垣間見れました。パン屋さんとして独立して10年以上経つ橋本さんですが、「今でも、パンに対するこれといった哲学がない」のだそうです。だからこそ、これからも新しいパンが生まれていくのだと思います。ぜひ橋本夫妻のパンに会いに行ってみて下さい!

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