図書館友達【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第10話】

フットサル部を作ったキャプテンは、藤川冬馬。桃香の高校時代の同級生だ。

サッカー部だがそれほど熱狂していたわけではなく、補欠どまり。気が向いたら部活に参加するチャラ部員。そんな程度の冬馬が社会人フットサル部を作ったのは、会社以外の仲間が欲しかったからだ。世間はJリーグで湧いていたし、サッカーを通じて気のいい男友達が増えるのも生活に彩りを与えた。

まったく違う世界で働いていてもサッカーを通じてわかりあえる。女の子と遊ぶときもサッカーをしていると言うと明らかに相手の顔が明るくなる。話題も倍膨らむ。サッカーをしているともてる。そんな自分理論を冬馬は確立し、高校の頃以上にフットサル活動に時間を割いていた。

冬馬は昔、桃香に淡い恋心を抱いていた。桃香が校舎の屋上で友達と一緒に歌を歌っている時、その澄んだ声に射抜かれた。身体中を耳にして聞き惚れた。桃香の声が空気に乗っかって屋上をくるくる踊り回る、そんなイメージをいだいた。その時から桃香のことが気になってしかたない。ただ告白まではいかず、図書館友達という関係だったが。

別々の大学に進んだためほとんど会うことはない、たまにメールでお互いの存在を示す程度。冬馬は現在、デザイン事務所でパッケージデザインの仕事をしている。朝から晩までデスクワークで運動不足というのもフットサル部結成の理由のひとつだ。

そんなある日、桃香から「冬馬、ゴブサタ! フットサルのチーム持ってるのよね。見学したい子がいるの。連れてっていい?」とLINEが入った。桃香と会っているわけではないが、LINEでゆるくつながっていることで、淡い恋心はとろ火のようにゆらめいていた。「今月は金曜の夜、大崎で練習してる。連れてきてOK」返事を返しながら、「ひさしぶりに桃香に会うのか…」と嬉しくなっている自分に気づいた。

フットサルの夜間練習の日、桃香がコートにやって来た。袖無しの赤いダウンをはおり、セミロングの髪の毛先がクルっと外巻きで揺れている。チェックのスカートがよく似合う。屋上で歌っていた頃の桃香より少し大人っぽい顔つきになった桃香が冬馬の方に向かって歩いてくる。

冬馬の胸の中で誰かがスキップしているように鼓動が早くなる。桃香の少し後ろを背の高い、高校生のようなあどけない顔をした男がきょろきょろしながら歩いている。左足を少しひきずっている。

(続く)

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(二松まゆみ)

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