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「世界で通用するアニメには、実写のバックグラウンドが活かされている」Production I.G社長が明かすVODアニメ製作秘話

  • 2018.3.21
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出典:https://news.walkerplus.com/article/141026/

『GHOST IN THE SHELL/ 攻殻機動隊』(95)をはじめ日本を代表するハイクオリティな作品を世に送り出し続けているアニメーション制作会社、Production I.G。1月31日にアメリカのNetflixと包括的業務提携することを発表した同社は、最新オリジナルアニメシリーズ「B: The Beginning」を3月2日からNetflixにて全世界同時配信している。クエンティン・タランティーノ監督作『キル・ビル』(03)のアニメーション・パートを手掛けたことでも知られるアニメーター、中澤一登が監督を務めるこのシリーズ。“Netflix独占配信”となった経緯をProduction I.Gの石川光久社長に聞いてみた。

独占配信中の「B: The Beginning」は、Netflixからは2015年にオリジナルアニメの制作オファーがあったという。

「Production I.Gの黒木類プロデューサーが『中澤さんでシリーズを作りたい。内容はダークヒーローもので、できれば企画書ではなくパイロット版を作りたい』と言っていたんです。中澤さんには『キル・ビル』でも相当お世話になりましたし、アメリカの人気バンド、リンキン・パークのシングル『Breaking the habit』のPVなどで、カッコいい映像を作る方だということは知っていました。特にTVアニメシリーズ『黒子のバスケ』のアクションシーンは、中澤さんがすごく描いてくれて。そういったなかでの“中澤さんを監督に迎えての作品”という流れは良かったんですね」

しかし中澤監督のこだわりがとことん詰め込まれたパイロット版は、アニメーションとして驚くべきクオリティだった反面、日本でのTV放映にはあまり向かない描写や演出もあったという。そんななかで、マーベル・スタジオのCEOと会長を歴任した名映画プロデューサー、アヴィ・アラッドが同社のアメリカ法人の会長に就任。NetflixとProduction I.Gとのパイプを繋いだのは、アラッドだった。

「『Netflixというおもしろい会社があるんだけど、一緒にやるとProduction I.Gにとっておもしろいんじゃないか』と4年くらい前にアラッド氏が言ったんです。ただ、弊社は日本での製作委員会の各社さんには長年とてもよくしてもらっていたので、海外のオンラインストリーミングサービス会社の方に会うのも、なんだか裏切るみたいな感じがして。『今忙しい』とか言って、あまり興味を示さなかったんです」

そんな折、アメリカを訪れる機会があり、Netflixのスタッフと直接話をすることになり、彼らがアニメコンテンツを必要としていることを実感したという。

「Netflixに『B: The Beginning』のパイロット版映像を見せたら、1か月以内に『やろう』と即決してくれました。契約書を交わすまでは時間が掛かりましたが(笑)」

「B: The Beginning」は、ヨーロッパに位置する架空の群島国家クレモナを舞台に、凶悪犯罪者のみを狙う連続殺人鬼“Killer B”と、彼を追う王立警察特殊犯罪捜査課の面々、そして久々に前線に復帰する天才捜査官キース・風間・フリックの活躍を描くクライム・サスペンス。企画当初は人ならざる力と漆黒の翼を持つ少年・黒羽と、テロリスト集団“マーケットメイカー”の戦いを主軸としたダークヒーローものだったという。

「いま、アニメーションのどういった部分に、世界中のファンが魅力を感じているかというと、やっぱりコスプレなんですよね。世界的にも、日本のアニメーションはコスプレしたくなる作品が多いようです。そういう面では、“マーケットメイカー”のメンバーたちは全員がフェイスペイントをしていて、それがすごくカッコいいんですよ。中性的なキャラクターもいたりしますしね。そういった部分に中澤さんはすごく魅力を置いていたんです。この作品では悪の組織と警察が対峙するストーリーが展開しますが、パイロット版の時点では、そういった物語ではなかったんですよ。でも、中澤さんはNetflixでの独占配信が決まったことをきっかけに、よりエンターテインメント性のある作品へと舵を切ってくれました」

2016年に制作が発表された本作。従来のTVアニメと違い、制作には全世界配信ならではの課程が盛り込まれた。

「開発に1年、アニメを制作するのに1年、編集などに1年費やしました。その後、英語やポルトガル語の吹き替えと字幕翻訳、中国語、韓国語などの字幕翻訳もあって、それらの作業に半年ほど費やし。配信開始日の1か月前には納品というスケジュールでした」

Production I.Gは実写映画も制作していることでも知られる。こうしたアニメと実写、その制作過程ではどのような違いがあるのだろう?

「最近は、実写でもCGを多用することがあって、アニメーションと実写の境界線はどんどんなくなってきたと感じています。逆にいま、画面のレイアウトをCGで作ってから撮影をして、最後に役者さんの演技を収録するといった、アニメーションの手法で実写を制作することが増えてきています。ハリウッドでもそういった傾向があるので、アニメーションの手法が、いまの映画の作り方に近いのかもしれないですね。弊社に『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督が所属していることもあって実写映画の『亜人』(17)も制作しました。昔はアニメ会社が実写映画を作るなんて言ったら、いろいろな問題が起きていたと思いますが、いまはそんなに抵抗感なく制作できる時代になったと思います」

そう語る石川社長だが、日本の実写映画が世界で受け入れられることへの難しさも感じているそう。

「世界では、河瀬直美監督作品のように、監督のクリエイティビティを前面に押しだした作品が評価されていますよね。その一方、日本で人気の小説や漫画を実写化した大作は、原作を知らない海外の人にとっては、すんなり楽しめるかというと、難しいなという気がします」

そういった中でも日本のユーザーのみをターゲットとした日本のアニメは、世界中で熱狂的に受け入れられている作品も存在する。その秘密はなんなのだろう?

「大人も“クオリティが高い”と思える作品が日本の漫画に多いからだと思います。『攻殻機動隊』の原作者、士郎正宗先生のように実写のバックグラウンドを持ち込んだ漫画家さんがいて、そういった作品を原作としたアニメーションを作っているから、おもしろいシナリオの構成やレイアウトなどを学んだスタッフが育っていると感じますね。また、実写映画の監督になりたかったという押井守監督のような人物がどんどんアニメ業界に流れてきたことも一因だと思います。そういった環境の中で生まれた日本のアニメーションだからこそ、世界でも注目を集めるようになったんだと思います」

「映画ファンにわかりやすく説明するならば、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(95)のような作品」と、「B: The Beginning」について話してくれた石川社長。今後も、Netflixでの独占配信タイトルを準備中というProduction I.Gが送りだす、世界中を魅了する作品に期待したい。(Movie Walker・取材・文/トライワークス)

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