1. トップ
  2. 恋愛
  3. 『VOGUE JAPAN』4月号、編集長からの手紙。

『VOGUE JAPAN』4月号、編集長からの手紙。

  • 2018.3.3
  • 527 views

1989年4月、オランダの新聞に掲載されたメゾン・マルタン・マルジェラの当時のショーの様子。『Maison Martin Margiela』(RIZZOLI出版)より。
【さらに写真を見る】『VOGUE JAPAN』4月号、編集長からの手紙。

めぐって、めぐって、環境にも、自分にも、やさしくね。

むかし、むかし、マルタン・マルジェラ自身が人前に現れ、インタビューにも応えていた頃、私は、こんな彼の言葉に、恋に落ちるようにうっとりとしてしまった瞬間を覚えています。「デストロイではなく、ロマンティックなことなんだ」。デビュー当時、その革新的な服作りや、実際、古い服を裁断し新しい服に再構成するやり方などから、マルジェラは「デストロイ(破壊)」なデザイナーと呼ばれていました。

しかし、彼はその呼び名を真っ向から否定して、この言葉を発したのです。「古いものを生き返らせるって、ロマンティックでしょ」と。それは、古くなって捨てられてしまうしかないものに新たな生命を吹き込む行為であり、経てきた時間やそれによって生まれる味わいなどに対する深い愛情の表明でもあります。

すべてのものは古くなり、人間は歳を取る。しかし、自然界はそのなかでさまざまな循環と再生を繰り返して新たなエネルギーを生んでいくものです。ファッション界でも、そのようなエコやサステイナブルな感覚が日に日に高まっており、今月号では「Cycle(循環)」をテーマに特集を企画してみました。 まずは、ファッションの本質にあるトレンドというサイクル。「流行は繰り返す」とよく言われますが、昨今の90年代ブームはその象徴と言えるでしょう。

90年代前半から一大ムーブメントとなったグランジは、お金のない若者たちがスリフトショップ(中古品店)で買ったような服を自由気ままに組み合わせた着こなしから生まれたものですが、結果として年代やトレンドが自在にミックスされたスタイルとなりました。それが、現代のアスレジャールックも含んだかたちで復活(p.109)。まさにFashion Cycleの集大成、といった感じです。

実際に、新しい服に組み合わせて、年代ごとに自分が愛する服を大切に着続けるファッションのプロたちのコレクションも見せていただきました(p.138)。また、日進月歩で取り組みの進むエコ・ファッションの最新状況にも注目しました(p.140)。ファッションにおけるテクノロジー活用に精通した水野大二郎さんによれば、「生物由来の“バイオマテリアル”」が今注視されるテーマのひとつだといいます。

環境にやさしい素材としてステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)などがすでにコレクションに取り入れていますが、これからは、研究者とデザイナーが組んだ研究成果を発表する場としてファッションショーが機能していくかもしれない、と水野さんが語る未来の予想図は、ファッションの新しい可能性のあり方として期待に胸が膨らみますね。

新しい(若い)ことだけに魅力がある、という価値観に対する、さまざまな面からの疑問や、違う角度からの考え方の提示は、私たちの生き方により幅広い視野を与えてくれるものだと確信します。「年齢」という、誰もが抗うことができない状況とどう対峙するかは、特に女性にとってはその人の生き方そのものと大きな関係を持ってきます。自然界が常に変化し循環するものであれば、人間もそうあるべきでしょう。

「アンチエイジング」という言葉に対するアンチを唱える動きが最近、世界的に盛り上がってきています。きっかけは、昨年の8月、アメリカのコンデナスト社が発行するビューティーマガジン『アルーア』のミッシェル・リー編集長が「アンチエイジングという言葉はもう使わない」と宣言したこと。なぜならその言葉は、「加齢とは闘わなければならないもの」というメッセージを含むから。「でも年齢を重ねるほどにチャンスが広がり、充実した幸せな日々が長く送れるはず」と彼女は語ります(p.174)。

確かに、年齢を重ねることで得られるものはたくさんあるはず。まず経験、それによってもたらされる思慮深さ、ユーモア、寛容さ、知性。いいじゃありませんか。どれもこれも、なかなか簡単に手に入れられるものではありません。「たくさん生きた分だけ輝きが増す女性たち」を今号では多数紹介しています。72歳のヘレン・ミレン、50歳のニコール・キッドマン、そして49歳の今月のカバーガール!クリスティ・ターリントン。それぞれの、生きる喜びの肯定、精神的な柔軟性をインタビューからも感じてください。「シワも美しい」という言葉が建前ではなくなる日は、なんてロマンティックなのでしょう。
参照元:VOGUE JAPAN