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子どもが変わる、子育てが変わる“海外からのお客様”を受け入れ:水田家の場合

  • 2018.2.26
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インターネットやSNSなどのコミュニケーションツールの発達で、外国がより近いものになってきましたが、子どもには実際に肌で感じてグローバルな感覚を身に着けてもらいたい。

しかし、頻繁に外国に行くことはなかなか難しいものです。日本にいながらにして子どもが異国の文化に触れられる機会を与えてあげることはできないでしょうか。外国人留学生を受け入れるホストファミリーはよく知られていますが、今回は少し違った受け入れ方をご紹介しましょう。

有機農家が働き手として外国人を受け入れるシステム「WWOOF(ウーフ)」を通じ、海外のボランティアワーカー「WWOOFer(ウーファー)」を受け入れているファミリーに体験談を聞きました。

■海外ボランティアワーカー「WWOOF」って何?

「World Wide Opportunities on Organic Farms(世界に広がる有機農場での機会)」の頭文字を取ったWWOOF=ウーフ。有機農家などが働きたい人を受け入れ、作業を手伝ってもらう代わりに、食事と宿泊を提供するシステムです。

京都府綾部市で農業と農家民泊を営む水田裕之さんは、2009年からウーフのホストをスタートし、奥様と8歳になるお嬢さんと一緒にウーファーを迎えています。ホストを始めた理由は、「小さくとも世界に開かれた農場でありたい」という思いでした。

「私が農業を始めたいと思った頃はウーフのことを知らず、あまり研修などをせずに経験不足、技術不足のまま就農したので、ウーフのように気軽に体験や研修ができる仕組みは素晴らしいと思います」と、手伝いながら農業を知る機会をウーファーに提供しています。

「ウーファーの手伝う内容は、季節によって異なりますが、わが家は田植えや稲刈りなどが中心。特に人手が必要な時に来てもらっています。田んぼや畑の仕事以外では、イベントなどの出店準備なども手伝ってもらっています」

オーガニックマーケットで、収穫した農産物から作ったパンやおにぎり、味噌などを販売

■受け入れ人数延べ100人! 日本にいながら世界を感じるウーフ・ホスト

今まで水田さんが受け入れたウーファーは、年間5~10人、延べ人数は100人ほど。出身国は、台湾、香港、シンガポール、タイ、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、フランスなどアジアや欧米が多く、日本人のウーファーもいるそうです。

「アジアの方は旅行がてら日本を体験、楽しみたいという方。欧米の方は環境や食事、農業に関心のある方が多い気がします。日本の方はこれからの生き方を探している人が多いようです」と、ウーファーにより目的や思いはさまざま。

野菜の植え付け前の畝作り作業をするウーファー

初めて会う人と、いきなり生活を共にする。ハードルが高いことのように思えますが、水田さんに不安はなかったそう。むしろ「家族の一員のように食事を共にして、話したり作業したりすることはいつも新鮮な喜びです」と返ってきました。

「うちでは、日常の暮らしと仕事がはっきりと分かれていない部分があるので、公私はあまり意識はしていないです。もちろん、日が暮れてその日の作業が終われば部屋で話したり、食事をしたりします。海外の方であれば、お互いの国のことをいろいろたずねあったり。日本の方だと、人生の話をすることも多いですね」

台湾からやってきた農家民泊ゲストとの食事風景。食卓の上には自分たちで収穫した農作物を使った料理がずらりと並ぶ

1週間から10日程度、寝食を共にするウーファー。帰国後もSNSで連絡を取り合ったり、年賀状を出したりして交流を続けています。なかには、水田さんのところが気に入って再びやってくる人もいるそう。

「いつか、来てくれたウーファーの国々を周りたいです」と水田さんの夢は広がります。

■中学英語で大丈夫! 「認める・受け入れる」子どもの変化

ウーファーとの会話は基本的に英語。「私は、中学校で学んだ程度の英語をなんとか駆使して、意思疎通ができている感じです。家内は英語がまったくだめ、娘はまだ英語は話しません」と言いながらも、ウーファーと楽しい時間を過ごしている水田さんご家族。

お子さんにとっては、小さな頃から外国人が身近にいるという生活環境。すぐにウーファーと仲良くなり、遊んでもらえることを楽しみにしているそうです。

「もともとの性格なのか人見知りはあまりせず、来てくれたウーファーにはすぐになつきます。自分が子どもの時の性格とは違うなと感じますね(笑)」

お子さんもかわいくウーファーや農家民泊のゲストをお迎え

ホストを始めてよかったことは、「広く世界の方々と交流できることです。草の根の国際交流で、人と人の相互理解につながると思います」と水田さん。

それは、水田さんのお子さんにとっても同じ。さまざまな国のさまざまな人が訪れる環境で、「小さな頃から個々の違いを認めることができる」ように育っているそうです。

「娘は、髪の色や肌の色など違ういろいろな方とも意識することなく接して、仲良く過ごしています。日本はまだまだ海外の人と交流する機会が少ないので、普段、外国人と出会った時に、違和感をもってしまうことがあるかもしれません。

小さな頃から、人は皆違うということに慣れておくのは良いと思います。先日、日本の方ですが、耳の不自由なウーファーがいらっしゃったんです。娘は知っている手話を使い、楽しそうにコミュニケーションを取っていました」

そんなお子さんの成長する姿を水田さんは「どんな人とも分け隔てなく優しく接することができる人、そして、多くの人に喜びを与えられるような人になってくれるとうれしいですね」と優しく見守っています。

さらに、「お米や野菜をなるべく自給できるようにしているため、季節ごとの新鮮な食材があり、日々、安心安全な食事を心がけられること。良い自然環境に触れる機会が多いこと」と、有機農家で子育てをするメリットはたくさんあると語ります。

「就農前にウーフの存在を知っていれば、きっとしていたと思います」と水田さん。ウーフのホストになるには、水田さんのように、まず有機農業を始めなければいけないのでハードルが高いですが、ウーファーなら簡単に体験できます。

中には、親子で数日間からと、家族で短期間の受け入れをしてくれるホストもいるので、長期休暇を利用し、国内や海外でお子さんと一緒に農業と異文化を体験してはいかがですか? きっとお子さんの見ている世界がぐんと広がることでしょう。

ウーファーと記念撮影をする水田ご夫妻

プロフィール
『水田家の食卓』
毎日食べるお米や野菜をできるだけ自分たちで作ってみたいと京都府綾部市で農業をスタート。農薬や化学肥料を使わない栽培を心がける。収穫した農作物は無農薬野菜の宅配や農産加工品としてオーガニックマーケットで販売。農家の暮らしをまるごと体験できる農家民泊も運営している。
・WWOOF
・WWOOF ジャパン

取材・文/河部紀子
写真提供/水田家の食卓
(ライターチーム123)

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