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注目のトランスジェンダー女優に直撃! 人生に必要な3つの要素とは?

  • 2018.2.20
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注目のトランスジェンダー女優に直撃! 人生に必要な3つの要素とは?

年齢を重ねていくと、愛する人との別れや耐え難い困難に見舞われたという経験もしたことがあるはず。そこで、自分らしく生きることの大切さと女性としての強さを感じさせてくれる映画をご紹介します。それは……。

魂を揺さぶる感動作『ナチュラルウーマン』!

【映画、ときどき私】 vol. 145
チリ、サンティアゴ。ウェイトレスとして働きながら、ナイトクラブで歌っているマリーナ。トランスジェンダーというセクシャリティと向き合いながらも、年の離れた男性の恋人オルランドと仲良く暮らしていた。しかし、マリーナの誕生日を祝った夜、オルランドが急死してしまう。
最愛の人を失った悲しみに打ちひしがれるなか、マリーナはトランスジェンダーであるがゆえに、周囲から容赦ない差別と偏見を浴びせられることに。2人で暮らしていた部屋からも追い出され、葬儀にも参加することを許されないマリーナにとって唯一の願いは、愛する人に別れを告げたいという思いだけだった……。

観る者の心をつかんで離さない本作は、すでに各国の映画祭や賞レースをにぎわせていますが、今回はヒロインを演じたこちらの方にお話を聞いてきました。それは……。

唯一無二の女優ダニエラ・ヴェガ!

劇中で圧倒的な存在感を放っているのは、マリーナ同様に自身もトランスジェンダーであるダニエラさん。まもなく行われるアカデミー賞授賞式ではプレゼンターにも選出され、話題となっているところです。そこで、本作出演のきっかけや女性たちに伝えたい思いなどを語ってもらいました。
これまでにいくつもの賞を受賞していますが、先日発表されたアカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされたことでも注目を集めている作品。

ここまで反響のある作品になると思っていましたか?

ダニエラ 考えたことはなかったので、ものすごく驚いているけれど、同時にとてもうれしく思っているわ。

脚本の段階から監督の相談に乗っていたそうですが、そもそも出会ったきっかけは?

ダニエラ 共通の友人から「セバスティアン・レリオ監督がチリのトランスジェンダーについて知りたがっている」と言われて初めて会ったのよ。でも、脚本のために会うというのは知らなかったから、最初の1年半くらいはただ話していただけだったわ。

そのあと、出演して欲しいと監督から言われたときはいかがでしたか?

ダニエラ まったく予想もしてなかったからすごく驚いたわ。だけど、言われた瞬間に「はい」と返事していたわね。なぜなら、女優として挑戦だと感じたからよ。

とはいえ、この役を演じるのは人生のなかでも難しい作業だったそうですが、一番難しさを感じたのは?

ダニエラ どこがというのがわからないくらいすべてが困難だったわ。でも、私は困難を困難と思わないくらい挑戦することが好きなの。だから、難しいと思うときもあったけど、それと同時に楽しかったし、そういうときにはいいものが作れるというのがわかるものなのよ。

役作りをする際に意識していたことはありますか?

ダニエラ 私はマリーナを演じるにあたって、自分が考えた3つの柱というのがあったの。それは、尊厳と反逆性と打たれ強さ。これをベースにしながら、マリーナの人間性やキャラクターをどんどん積み上げていくようにしたのよ。
なぜなら、この3つの要素というのは、男性女性に関係なく、誰にでもあるもの。あとは、それをどういうふうに人生のなかで使っていくかということだと思っているのよ。だから、各シーンでどのように自分の感情を出していくかを意識したわ。そうすれば、観ている人にとっても感情的に深いところまで旅ができるような映画になると思っていたからなの。

マリーナは愛する人の死を乗り越えようと強さを見せますが、その源となっていたものは何だと思いますか?

ダニエラ それは彼女がどうしてもしなければならないこと、自分がしたいことがあったから。つまり、オルランドに別れを告げるという目標のためよね。人は悲しみよりも目標のために強くなるということもあると思うの。特に、マリーナは尊厳と反逆性を持っている女性だから、それらによって強くなれたということもあるんじゃないかしら。

そんなふうに強くありたいと思う女性に対してアドバイスするとしたらどんなことですか?

ダニエラ 私は「こうしなさい、ああしなさい」というメッセージを出す立場ではないと思うので、みなさんにしたいのは、「幸せになるために何をしてますか?」という問いかけだけよ。なぜかというと、人生は一度だけよね。だから、その一度きりの人生を生きようと思えば、強くもなれるはずよ。

観客にはこの作品からはどんなことを感じ取って欲しいと思っていますか?

ダニエラ そのときに浮かんだいろんな疑問とかが映画のおもしろさであって、できれば答えは自分で見つけて欲しいと思っているわ。観客は自分で想像できるものでもあるから、こちらがすべてを言いたくないというのもあるの。
「もしこれがこうなってなかったら」とか、「もしキリストが死んでなかったら」みたいなところからみんな映画を作っていると思うので、映画を観るときにはそういうところを楽しんで欲しいわね。

女性としての生き方を描くいっぽうで、現代のトランスジェンダーの現状についても突きつけられる本作。

日本でもトランスジェンダーに対する見方は徐々に変化していますが、現在のチリの状況を教えてください。

ダニエラ いまは国全体として、すべてのことにおいて移行期。というのも、大統領が変わったばかりで、中絶法も少し前に許可されたくらいだし、男女平等などのジェンダーに関しての法整備というのも非常にゆっくりしているのよ。
だから、LGBTの権利だけでなく、夫婦同等の権利とか、女性と男性の給与格差をなくすとか、そういうことすべてに関して、国としてこれから変わっていくのだと思うわ。

印象的なセリフが多いなか、「困難で人は強くなる」という言葉は、まさにマリーナの生きざまそのものでもあり、心に残るシーンのひとつ。

ご自身も同じように困難を乗り越えて強くなった経験はありますか?

ダニエラ 困難で人は強くなるというのは、私だけでなくてみんなも同じだと思うわ。なぜなら、難しいことがあるから人はみんな成長していくのよ。トランスジェンダーであってもなくても、女性はみんな困難に常に立ち向かっているわよね。だから、できることといえば、視野をどんどん広げて、自分が幸せになるために何をするのかというのを考えることだと思うわ。
ひとそれぞれ困難の乗り越え方は違うものだけど、私の場合は、より幸せになるために何をするかということだけでなく、プロとして自分がどう生きていくかということと、芸術を通して人としてどう成長していくかということ考えているのわ。

最後に日本の観客に向けてメッセージをお願いします。

ダニエラ まずは、みなさんにこの映画を観て頂いて、どうしたら共感や思考の範囲を広げることができるか、というのを考えて欲しいと思っているの。なぜなら、そうすることによって、同時に自由になれるからなのよ。
私はこの映画と一緒に世界中を回り、たくさんの人と会うことができたけど、みんな違う言語を話していても、映画を通すことですごくわかりあえるということがよくわかったわ。つまり、さまざまな動機で人は変革できるんだということに気がついたの。この映画は私にとっては多くの可能性を開いてくれたし、芸術的にも自分のなかにたくさん贈り物をくれた作品だから、参加することができていまはとても幸せに感じているわ。

ありのままで生きることの美しさを感じる!

愛する人を失う悲しみや困難を乗り越えようとするマリーナの姿に共感し、心をつかまれる本作。人生において、どんな “向かい風” が吹いたとしても、そこに立ち向かう強さは誰のなかにもあるものだと教えてくれるはず。あなたのなかにも自然とこみ上げてくる思いを感じてみて。

胸が熱くなる予告編はこちら!

作品情報

『ナチュラルウーマン』
2月24日(土)、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
配給:アルバトロス・フィルム
©2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA

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