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【女子のばんそうこう】「男の中の女」が無意識に受ける傷〜居酒屋にて〜

  • 2018.2.8
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「俺ブス嫌いなんで!」

「あー○○ちゃん、ブスだよな」

「あん時ブスばっかでさ」

とある居酒屋で女友達と飲んでいたところ、隣のグループ(推定30代半ば。男の中に女1人)から聞こえてきた言葉。酔っているからなのか、はたまた「毒舌を躊躇なく言えちゃう俺ら」アピールなのか、とにかく声がデカい。店内に響き渡る「ブス」連呼。その合間に、たった1人いる女子に向かって「お前ブスのわりに今日盛れてんな!」と言う。彼女が同じテンションで「うるせーアンタら人のこと言える顔か!」くらいに言い返していればまだよかったが、その子のテンションは低い。会話にもほとんど入っていない。

楽しかったライブについて語る私たちの頭上に「ブス」「ブス」と汚い言葉が降り注ぐのでだんだん気分が悪くなり、殺意と共に拳を固めた頃、その女子が二軒目に移動しようと冷静な声で提案、全員がいなくなったのでホッとした。

私たちは、「いや最低だったね」「自分を棚に上げてよくもまあ大声で言えるよね」と話し合ったが、いちばん最後の「あの女の子は一刻も早く彼らとは手を切った方がいいよ」という女友達の言葉に深く頷いた。

気の置けない友人というのはいい。自分が気を使わずにそこにいられる仲間がいるのは幸せだ。ただ、そのグループで共有される価値観や頻出ワードには、気をつけなきゃいけない。

私も以前は女だけのグループが苦手で(正直、今でも少しそう)男子とばかりつるんでいた。ベタつかず言いたいことを言い合う野郎の空気というのは本当に楽ちんだし面白かった。でも飲んだ帰り道に微妙に精神的ダメージを食らってることが何度かあって、我ながら不思議だった。前述のヤツらと違って男友達は私の外見をdisったりはしなかったけど、なんかちょっと悲しいな…という気持ちになっていた。

男だけの集団では、親愛の情を示すために「けなし合い」がよく起こる。言っちゃいけない言葉、触れちゃいけないネタをガンガンぶつけ合い、言われた方はそれに面白くツッコんだりすることで「そんなことは大したことじゃないし、俺らの間柄はそんなことじゃ揺らがないぜ」という空気を作る。また「毒舌をいかに面白く吐けるか」で盛り上がることも多いので、そこにいない誰かをブスだのハゲだの仕事できないだのと言ったりして笑う(ただし他人に聞こえないところでだけど)。また、露悪的なネタも好まれるので浮気や風俗話なんかも赤裸裸に語られる。

私は多分、それを面白がると同時にその毒にあてられ、小さな擦過傷を増やしていったんだと思う。それらの言葉が私自身に向けられていなくても、すべらない話になっていても、女性へのdisや裏切り話は胸がチクリと痛む。いつか私もそっち側に回されるんじゃないか、世の男性の本音はみんなこうなのか、と思ってこわくなる。「アンタひでえな!バッカじゃないの!」なんて手を叩いて笑いながら、すこーしずつ、傷ついていたのかもしれない。

私はその時の男友達が今でも大好きだし、彼らも大人になったので今はそんなことはないのだけど、毒舌のない男性グループと知り合って初めて「うわー何この穏やかな空間…こういう人たちもいるんだ」と驚いたりした(笑)

件の居酒屋の「ブスのわりに」と言われてた女子は、その物言いに慣れっこかもしれないし、彼らが本気で言っていないと思えてるのかもしれない。でもやっぱり言葉の力って強いので、自己評価の中に無意識のしおりみたいに「ブス」が差し挟まれるかもしれない。そして彼らの「ブス斬り」の価値観を内在化させてしまうかもしれない。多分それは、女を少しずつ少しずつ、疲弊させて縮こまらせていく。そうだとしたら大変に、もったいない。

「男集団の中の少数の女」が受ける傷はこうやって分かりやすいのだけど、「女集団の中の少数の男」でも同じことが起こってるかもしれないし、同性同士でもたくさんあるのではないかと思う。

何となく自己評価が低いな、考え方が殺伐としてるな、精神的に疲れるな…そう思うことがあったら、自分が日々属している集団の中の価値観にやられてしまってないか、見つめ直してみるといいかもしれないです。

Written by あゆみ

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