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スキャパレリのオートクチュールで、 気になる2つのこと。

  • 2018.2.8
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ヴァンドーム広場21番地は、エルザ・スキャパレリの時代からの伝説的アドレス。1月22日、昔からのクチュール・メゾンの伝統にのっとりオートクチュール・サロンを含むメゾン内で、2018年春夏オートクチュール・コレクションが発表された。2015年7月のショーからアーティスティック・ディレクターを務めているのは、ベルトラン・ギヨン。尊大な態度が優美な異国の美女たちを、彼はこのコレクションのヒロインに仕立て上げた。ラフィア、ナイロン、プラスチックといった、オートクチュールではあまり用いられることのない高級とは言い難い素材が、オートクチュールを支えるサヴォワール・フェールの魔術で洗練のドレスに!

ショー会場でプログラムと共に配られたインスピレーション・ボード的ビジュアル。

さて、コレクション中ひときわ目をひいたのはルサージュのアイリスの刺繍だ。1940年秋冬オートクチュール・コレクションでエルザ・スキャパレリは、白蝶貝で花を描いたドレスを発表。ルサージュによるこのパールの花の刺繍の見本からインスパイアされて、ギヨンはスキャパレリが愛した花のひとつであるアイリスをスワロフスキーのパールでウエディングドレスに描いてみせたのだ。刺繍は1940年の時と同様に今回もルサージュによって、というのが素晴らしい。フランスが誇るオートクチュールの世界は、まさにメティエ・ダールが支えているという見事な例である。

スワロフスキーとのコラボレーションによるパール・ドレスのデッサン。シルク・クレープのケープドレスのアイリスは、クリスタルが中央に置かれた合成パール54,795個と銀糸を用いてルサージュが刺繍した。

このコレクションでメティエ・ダールにおける革新的試みを、ギヨンはテキスタイルにおいて見せてくれた。彼がフリーのテキスタイルデザイナーとコラボレーションして生み出したのは、スワロフスキーの多面クリスタルビーズを編み込んだナイロンのタータンチェック。その刺繍テクニックは3D。まさにコンテンポラリー・テキスタイルである。

クリスタル・タータンドレスのデッサン。透明で軽いナイロン・ニットのドレスに黒とグレーの面取りクリタルがタータンチェックを描く。

さて、このショーではスワロフスキーとのコラボレーションに加え、もうひとつ別のコラボレーションが披露された。それはインテリア・デザイナーのルーシー・ドゥ・ラ・ファレーズとの3種のバッグである。オートクチュールなので注文しなければならないけれど、この夏、ちょっと手にしたくなるチャーミングなバッグだ。ルーシーの祖母マキシム・ドゥ・ラ・ファレーズはエルザ・スキャパレリと、その昔、一緒に働いていた。エルザはマキシムに子ども服のデザインを任せただけでなく、ユベール・ド・ジバンシーがブティックのディレクターだった時代の顧客を担当させていた。歳月が流れ、2018年にその孫のルーシーがスキャパレリとコラボレーション。サヴォワール・フェールだけでなく、創業者が築いた人間関係もクリエーションにおいて大切に守られてゆくようだ。

ルーシー・ドゥ・ラ・ファレーズとのコラボレーションによるラフィアのバッグ。黄色いビーズを編み込んだ生成りのSelkieには、籐の顔と持ち手がついている。白のSoteriaには流木とパールがアクセント。黒のSélénaにはプラスチックバッグのフリンジが飾られている。

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