石井杏奈が語る、河瀬直美監督と山田孝之から得たもの「捨てることで強くなる」

作詞家・小竹正人が手がけたLDHの楽曲をテーマに、音楽と映像のコラボレーションとして6人の監督が6編の物語を綴る『CINEMA FIGHTERS』が現在公開中だ。その中の1編、河瀬直美監督が手がけた『パラレルワールド』は、三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Unfair World」をモチーフに、過去と現在が交錯し、切ない青春の一瞬を映し出す。

リアルサウンド映画部では、『パラレルワールド』に出演した石井杏奈にインタビュー。河瀬直美監督の演出を受けて成長した点や、山田孝之との撮影の裏側まで、じっくりと話を聞いた。

■「真矢として“生きている”気持ちになりました」

ーーカンヌ国際映画祭の常連、世界にもその名を轟かせる河瀬直美監督と初めて仕事をした感想は?

石井杏奈(以下、石井):本当に格好良くて信念をもった素敵な方でした。撮影中は、毎回毎回自分を試されるような……でも、監督ご自身でも自分を試しているような感じもあり、信頼関係を結べたと思います。と一方的に言っていいのか分からないですが、2日間の撮影時間が1ヶ月に感じるぐらい濃密な時間を一緒に過ごすことができたと思っています。クランクアップで監督とハグをしたときに、パッと「石井杏奈」に戻った感じがしたんです。そのとき、ずっと「真矢」に入り込んでいたんだなと分かりました。今までも役に入り込むという感覚はあったんですが、こんな気持ちになったのはこの現場が初めてで。役者として、自分の中に覚悟も芽生えた貴重な時間でした。

ーー河瀬監督の演出にはどんな特徴がありましたか。

石井:台本には一言一句セリフがなく、リハーサルもないんです。だからどこからが本番かも分からず、ほぼアドリブで自分で考えながらやらなくてはいけませんでした。監督からは「私が言った意見を自分の中に取り込んで、自分の気持ちで行動に移して」と言われて。これまでに体験したことのない新しい撮影の仕方でした。

ーーロケ地は河瀬監督の母校・一条高校だったようで。

石井:天文観測室がある学校なんて珍しいですよね。真矢が校内に隠れている高木くん(山田孝之)を探すシーンがあるのですが、本当に学校中を走り回って探したんです。すると、石井杏奈ではなく、真矢としてこの学校で“生きている”気持ちになりました。初めて訪れた学校なのに、体育館の場所が不思議と分かったりしました。

ーーそしてなんと言っても山田孝之さんです。山田さんが石井さんと同級生の高校生役を演じると情報が出たときは、なぜ?という思いもあったのですが、観始めると高校生として違和感のない山田さんがそこにいました。

石井:共演が決まったときは本当に緊張しました。テレビや映画でその活躍をずっと観てきた役者さん。私たちの世代は「いつか山田さんと共演したい」と夢に抱いてる方が多いんです。その夢を叶えることができるのはうれしかったのですが、うれしさより先に、「嘘でしょう!?」と思うほどの衝撃でした。

ーーしかも同級生で恋人という関係性で。

石井:同級生という設定ですけど、台本もいただいていなかったので、タメ口で最初から話していいのかなって。河瀬監督にも「真矢が引っ張ってね」と言われたんですが、「どうやって山田さんを引っ張ればいいの!?」と思いました(笑)。でも、いざ役に入り込んではじめてみると、引っ張ったことによって、山田さんも受け入れて下さり、返答してくれました。

ーー映画の冒頭、数年ぶりに校舎に訪れた高木が、真矢からのメッセージが書かれたノートを目にします。あの字は実際に石井さんが?

石井:そうです。書きました(笑)。

ーーあの文字があるからこそ、高木の回想に重なるように、観客もグッと作品に引き込まれていきます。現場では山田さんの方からもアドリブはあったんですか。

石井:山田さんのアドリブは本当に自然すぎて分からないんです。山田さんじゃなくて完全に高木くんになっていました。話しかけるというよりも、単語をボソッと言葉にする感じなんですが、その言葉がシチュエーションにピッタリすぎて流石だなと思いました。高木くんと真矢が星座を聞き合うシーンも山田さんのアドリブです。

ーー作品全体の中でもキーポイントとなるシーンだと思っていたので、あれがアドリブから構成されていたとはまったく見えなかったです。

石井:だから「何座?」って聞かれても、真矢が何座かという設定は決まっていなかったので、素直に自分の星座の「蟹座」って答えました(笑)。

■「素の自分で挑んでみて、初めて分かることがある」

ーー印象に残っているセリフなどはありましたか。

石井:2日間の撮影が濃すぎて、自分が自分じゃない感覚があったんです。だから、「セリフとして喋った」という感覚がなくて。これだ!というのはないのですが、逆にすべてが印象に残っていると言えるかもしれません。高木くんと真矢として生きていたのかなって。

ーー真矢が踊るダンスも石井さんのオリジナル?

石井:ダンスは一条高校のダンス部が披露していたものを、一緒に覚えて映画の中に取り込ませていただきました。

ーーあのダンスシーンを観ていると、役者・石井杏奈であると同時にE-girlsの石井杏奈でもある、ということを改めて感じました。そして、光に包まれた石井さんがとても素敵で。ご自身で完成した映像を観ていかがでしたか。

石井:踊っているときはどう撮られているかは考えていないのですが、どこか太陽が味方をしてくれている感じがあったんです。それがちゃんと映像にも反映されて、すごくキレイな映像でびっくりしました。

ーー約15分間の作品ですが、紛れもない映画作品になっていると感じます。『CINEMA FIGHTERS』という企画自体に関してはどう思っていますか。

石井:小竹(正人)さんの歌詞がすごく好きなので、この企画は本当にうれしかったです。もともと、曲を聴きながら、映画のような一場面がフッと浮かんでしまう歌詞だと思っていたので、それがプロの監督たちの手によって実現するなんて夢みたいで。きっと出演していなくても、楽しみにしていた作品だったのに、そこに演者として出演できると聞いたときは倍のうれしさがありました。

ーー改めて、河瀬さん、山田さんとひとつの作品を一緒に作って、ご自身の中で変化はありましたか。

石井:“強くなること”、その点に関して成長できたのかなと思います。山田さんだから緊張する、河瀬監督だからこうしないといけない、というのではなくて、そういう固定観念を全部“捨てる”こと。そして捨てることが強くなることなんだなって。取り繕っても、信頼は得られないですし、怖がらずに自分の素を見せなくては誰も評価してくれない。仮に素を見せずに評価されてもそれはうれしくない、それは今回の撮影を経験して感じたことでした。もし、恥ずかしくても、できなくても、素の自分で挑んでみて、初めて分かることがある。素でぶつかってこそ、その後にいただくアドバイスに価値があると学びました。今年で20歳にもなり、大人に近づくにつれて、繕ってしまうことは増えてくると思うのですが、それでも素直さや正直さを忘れたくないと、本作を通して強く実感できました。

※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記

(取材・文:石井達也/写真:伊藤惇)

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