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谷川俊太郎 進化する表現と詩人の暮らし

  • 2018.1.28
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谷川俊太郎 進化する表現と詩人の暮らし

 

 

 

詩の表現は今でも、新しい挑戦と進化の可能性に満ちている。詩人は使い古された言葉を、または無意識の中にある言語の記憶を独自の世界観で生まれ変わらせる。1952年にデビューした国民的詩人、谷川俊太郎は今なお、その先端にいる。
東京オペラシティ アートギャラリーでは2018年1月13日(土)~3月25日(日)まで「谷川俊太郎 展」が開催されている。
詩人の知られざる側面と進化する表現に迫る注目の展覧会。その様子をご紹介しよう。

 

 

 

photo:深津瑞穂

 

 

 

谷川俊太郎は、1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。詩作のほかにも絵本、エッセイ、翻訳、作詞、脚本など幅広く活躍し言葉の可能性を広げてきた。
また、近年では手紙の形で詩を送る「ポエメール」や、ゆれ泳ぐ詩を釣りあげてコレクションするiPhoneアプリ『谷川』など、詩の新しい表現にも挑戦している。

 

本展は、谷川の暮らしと仕事を見つめながら、詩が生まれる瞬間に触れる試みである。谷川が影響を受けた音楽やもの、家族写真、書簡、ラジオのコレクション等を、選りすぐりの詩作品とともに展示している。日々の暮らしを基盤に詩作を続けてきた谷川。愛用品などを通し、等身大の詩人の姿が浮かび上がる。

 

 

 

『こっぷ』文:谷川俊太郎 写真:今村昌昭 AD:日下弘 1972年 福音館書店

 

 

 

詩のシャワーを浴びるような新体験!

 

 

 

ギャラリー1では、新しい詩の表現を体験できる。
音楽家・小山田圭吾(コーネリアス)とインターフェイスデザイナー中村勇吾 (tha ltd.) とのコラボレーションによる本展のための特別出品である。 子供のころに教科書で読んだ谷川の詩が今でも色褪せることなく、それどころか驚くほど斬新な表情を見せてくれる。

 

詩は読むもの、聴くものではなく、空間で「体験するもの」になっているという進化に驚く。谷川の言葉に内在するリズムと小山田の音楽との出合いによる音と映像のコラージュ は、全身で詩を浴びるような新たな体験だ。

 

 

 

谷川俊太郎、小山田圭吾(コーネリアス)、中村勇吾 (tha ltd.)とのコラボレーション

 

 

 

展示風景

 

 

 

子どもの頃の谷川俊太郎 1942年頃

 

 

 

ギャラリー2では、20行からなる谷川の詩「自己紹介」に沿って、20のテーマごとに谷川にまつわるものを展示している。会場にはその詩を1行ずつ大きく記した柱が立ち現れ、それぞれ谷川が影響を受けた音楽やもの、家族写真、書簡などが合わせて展示されている。

 

谷川のラジオ・無線工学への情熱については幅広く知られていないのではないだろうか。谷川は熱心なコレクターであり、主にアメリカ製のヴィンテージラジオの幅広いコレクションとそれに関連する書籍を京都工芸繊維大学に寄贈している。
本展では、自身のヴィンテージラジオの幅広いコレクションのうち一部を展示している。

 

 

 

多様なデザインが魅力的な谷川俊太郎のヴィンテージラジオのコレクション。ラジオから聞こえる音声・音楽は詩人の耳にはどのように聞こえているのだろう。

 

 

 

ラジオコレクション STEWART-WARNER Model R108X AN.5438-093 1933年 京都工芸繊維大学美術工芸資料館蔵

 

 

 

詩人のひととなりを感じながらもう一歩、詩人の視点に近づいて読んでみるのも楽しい。

 

 

 

「夏はほとんどTシャツで過ごします」(「自己紹介」の一節)の柱の展示風景

 

 

 

 

内覧会前日に谷川が書いて貼ったという直筆のメモ。何気ない一言がおもしろい。

 

 

 

『・・・
絵描きじゃないから展覧会は無理だ
音楽家じゃないからコンサートも開けない
今はマックで書くから手書き原稿もない
何を並べりゃいいのか知恵を絞った
・・・』
(本展のための書き下ろしの詩「ご挨拶に代えて」より一部抜粋)

 

 

 

コリドールに展示された「3.3の質問」は、谷川が1986年に出版した『33の質問』(ノーマン・メイラーの「69の問答」にちなんで33の質問を作り、7人の知人に問いかけをしながら語り合う)が元になっている。本展ではその現代版として、当初の33の質問から谷川が3問を選び、それに「0.3の質問」を加えて「3.3の質問」を新たに作った。これらを各界で活躍する人々に投げかけ、その回答を作品として展示している。
「人を殺すとしたら、どんな手段を選びますか?」というドキッとする質問もあるが、回答はいかに。

 

 

 

いつも口ずさむ好きな歌や、つい手が伸びるお気に入りのシャツがあるように、折に触れて思い出すような特別な詩を一遍持っているのは素敵なことだ。懐かしい詩、新しい詩を探しに足を運んでみてはいかがだろうか。

 

 

 

テキスト / 五十嵐絵里子
写真 / 新井まる

 

 

 

photo:深津瑞穂

 

谷川俊太郎
1931年東京生まれ。詩人。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詞賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第34回読売文学賞、2005年『シャガールと木の葉』『谷川俊太郎詩選集1〜3』で第47回毎日芸術賞、2010年『トロムソコラージュ』で第1回鮎川信夫賞など、受賞・著書多数。

 

 

【開催概要】
展覧会名 : 谷川俊太郎展 TANIKAWA Shuntaro
会期: 2018年1月13日[土]─ 3月25日[日]
会場: 東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間 : 11:00 ─19:00(金・土は20:00まで/最終入場は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日(2月12日〔月〕は開館/ 2月13日〔火〕は振替休館)、2月11日〔日〕(全館休館日)
入場料 : 一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 800円(600円)、中学生以下無料
*( )内は15名以上の団体料金
*障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

 

 

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