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パリジェンヌの美しさのヒケツとは?生き方のヒントが見つかる展覧会

  • 2018.1.26
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現在、東京・世田谷美術館で開催されている『ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち』。パリという魅力あふれる都市に生きる女性、パリジェンヌ。自ら道を切り開き才能を開花させ、アートやファッションの世界を華やかに彩った、パリを体現する魅力的な女性たちの姿を追う本展覧会をご紹介します。

しなやかに時代を生きる、パリジェンヌたち

パリという魅力あふれる都市に生きる女性をさす言葉、パリジェンヌ。
サロンを仕切る知的な女主人、子を慈しむ美しい母、流行を生み出すファッショニスタ、画家のミューズ、そして自ら道を切り開き才能を開花させた画家や女優たち…。歴史深い都市・パリに生きるという誇りや、アイデンティティを身に纏い、多様な生き方を楽しみながら模索する姿は、今なお私たちを惹きつけてやみません。

現在、世田谷美術館で開催中の『ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち』では、ボストン美術館所蔵の約120点の多彩な作品を通して、18世紀から20世紀に渡ってパリを体現する女性たちの姿に迫っています。展示は、18世紀の「パリという舞台」や「日々の生活」、19世紀の「『パリジェンヌ』の確立」や「芸術をとりまく環境」、20世紀の「モダン・シーン」の5章構成。時代に沿ってパリジェンヌたちの変遷が分かる構成になっています。

18世紀、自らのスタイルを確立しようする女性たち

パリが文化の中心となっていった18世紀。当時、個人の邸宅で女主人が文化人を集めるサロンを開くなど、女性たちが自ら輝き出した時代でした。写真(左)は、当時に作られた華麗なドレス。このようなドレスや新しい髪型が流行したり、テーブルウェアやインテリアにこだわったりと、パリの女性たちは自らのスタイルや考え方を広げていきます。

美術の世界では、慈悲深い微笑みを浮かべる母親や、こちらを誘惑する視線を向けた召使い、中には自立する女性を揶揄する風刺画など、家庭から仕事まで、様々な女性が描かれるようになりました。写真(右)の作品からは布に火入れの火が燃え移りそうな危うい様子が見て取れます。これは社会に生きる女性の危うさを表現しているそうです。

当時はまだ、女性は結婚して母となり家庭を守るべきという伝統的な価値観が根強く息づいていました。女性がつける職業はお針子や召使いしかなく、さらに労働環境も過酷な上に、低賃金で雇われていたんだそう。『レ・ミゼラブル』のファンティーヌを思い浮かべていただくと分かりやすいですね。

19世紀、海を越えて憧れの存在になっていくパリジェンヌ

19世紀半、ナポレオン3世の時代が始まると、パリの近代化が加速していきます。急速にインフラが整備され、工業化は順調に進展していきました。
また、この頃になると出身地などの地理的な区別はなく、「パリを美しくする要素としての女性すべて」をさす“パリジェンヌ”について書いた本も出版され、当時のパリの流行はアメリカまで伝わり、海を越えてパリジェンヌは憧れの対象になりました。

写真(左)は、ナポレオン3世の皇后で、社交界のファッションリーダーだったウジェニー妃の専属デザイナー、シャルル・フレデリック・ウォルトが手掛ける店のドレス。とても鮮やかな紫色が目を惹きますね。当時、紫色は化学染色でないと染められず、非常に高貴なものとされていたそうです。

美術界でも印象派などの新しい動きが起こり、女性はモデルや芸術家のミューズとしてだけでなく、画家としても才能を開花させていきました。
写真(右)は、本展覧会のメインビジュアルの一つ、フランス近代絵画の巨匠・マネが描いた作品です。モデルを務めたのはマネのお気に入りのモデル、ヴィクトリーヌ・ムーラン。当時の彼女は絵画からもわかるように楽器を持っており、酒場などで演奏しながら生計を立てていたそうです。そして、後に画家としても活躍したということが分かっています。

20世紀、時代をリードし、輝きを増していくパリジェンヌ

1900年前後のパリでは、ミュージックホールやキャバレーが続々と開店し、歌手やダンサーとして女性が活躍していきました。仕事やスポーツなどにも行動範囲を広げ、社会の中で自分を表現する女性も増え、「パリジェンヌ」は20世紀芸術のアイコンとして時代をリードする存在になっていきます。

写真(左)は、近年公開された映画『リリーのすべて』のモデル、世界初の性別適合手術を受けた人物であるリリー・エルベの妻、ゲアダ・ヴィーイナによるもの。作品に描かれている一人で街歩きを楽しむ人は、性別の枠を取り払い自らを表現するパリジェンヌです。

また、写真(右)にある黒を基調にしたドレスは、18、19世紀に見られたコルセットが取っ払われ、フリルやレースといった装飾もなく、シンプルなデザインに変化しています。

時代をリードするパリジェンヌに美しい生き方のヒントを学ぼう

4月1日まで開催されている『ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち』。会期中には、女性画家とファッションについてや、本展覧会の見どころを紹介するレクチャーや、様々な切り口からパリジェンヌを掘り下げるトークイベントだけでなく、サシェ(匂い袋)を作るワークショップも開催されます。会場である世田谷美術館には、アートライブラリーやカフェもあるので見終わった後にゆっくり時間を過ごすのもよし、砧公園の中にあるのでアクティブにお散歩しながら散策しても面白いと思います。

18世紀、19世紀、20世紀…時代ごとに輝きを放っていくパリジェンヌの美意識とライフスタイル。展示室をめぐりながら、自分自身の美しい生き方のヒントを見つけてみてはいかがでしょうか。
writer / 新 麻記子 photo / 新麻記子

取材協力

『ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち』

会期:1月13日(土)~4月1日(日)
会場:世田谷美術館 1・2階展示室
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週 月曜日
※ただし、2月12日(月・振替休日)は開館、翌13日(火)は休館
http://paris2017-18.jp

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