ひとを惹きつける引力のある女とは【齋藤 薫さん連載 vol.70】

女性なら誰しも、“相手の関心を惹く女”になりたいもの。そのためにオシャレをして美しくなろうと努力して…でも、上辺だけ繕っているだけでは、誰も自分に関心を持ってはくれません。美しさ以上に何を持っているか、内面が問われる時代。それをふまえて正しく目立つ女になるための女磨きを薫さんに教わります。

もはや単なる美しさが目を惹く時代ではない。ジジ・ハディットが1人、目を惹く理由

目立つってなんだろう。解っているつもりでも実は解っていないことに、この「目立つ」があると思う。極端な話みんなある意味「目を惹きたい」からオシャレをし、美しくなろうとしているはずで、目立ってナンボ。街で、オフィスで、何らかの集まりで、ちゃんと目を惹く存在になるって、やっぱり究極のテーマなのではないだろうか。だから改めて考えたい。目立つってどういうこと? どうすれば目を惹く存在になれるの?

もちろん派手な服を着ていれば、それだけで実際目立つが、でも洗練されていなければ悪目立ちとなり、かえって損をする。そうではなくて、存在そのものが目立つ人は違う何かを放っているのだ。それはしばしばオーラと呼ばれるけれど、ここではオーラという言葉ではごまかさず、ちゃんと考えてみたいのだ。

例えば今、スーパーモデル界で名実ともにナンバーワンと言えるのが、ジジ・ハディットだろう。でもなぜ彼女? とても単純に、彼女はやっぱり1人、目を惹く存在だったからである。スーパーモデルは、全員美人。全員プロポーション完璧。従って美しさを競うわけではない、あくまでも存在自体が不思議な引力を持っている人の勝ちである。彼女の持つ引力の正体とは何なのか?

それはズバリ、見事にチャーミングな肉付きではないかと思うのだ。スーパーモデルに“肉付き”を感じる事はまずないが、彼女の顔にはなんとも魅力的な肉がついていた。痩せすぎのモデルはノー! と言う価値観が叫ばれているにもかかわらず、やっぱりふくよかなスーパーモデルはありえないわけで、世の中の一般常識とは別の方向を示しているのに、ちゃんと洗練されたものには紛れもなく人目を引く引力が宿るのだ。
そして優秀モデルとしても賞を総なめ。雑誌Glamourの“ウーマン オブザ イヤー”に、ニコール・キッドマンや女性監督パティ・ジェンキンスとともに選ばれるなど、ジジと言う存在自体の評価が止まらないが、そこには明快な理由があった。まずこうした支持に対し、「自分以上に美しくて優れたモデルはたくさんいる。でももし一生懸命仕事をすると言う意味での評価なら、ありがたくいただきたい」。そう語ったことが、さらなる注目につながった。また、アメリカにおけるイスラム教徒への差別的なマスコミ報道を、真っ正面から批判して絶賛を浴びてもいる。

ところが一方で、彼女が仏陀のクッキーを手にして、顔真似のつもりなのか目を細めている動画がネット上に流れたことを、アジア人への差別だと一部で批判の声が上がった。そのために中国が入国を拒否したと言う噂も。本人にそんなつもりはなかったのだろうが、別の差別問題で支持を得たからこそ、若気の至りともいえるジョークにちょっとしたお仕置き的な措置がなされた形。良くも悪くも20歳を過ぎたばかりにしてトップモデルの座を得ているがゆえに、世間の反応も大きくなる。ただ普通のお人形としてのモデルでは無い、きちんと意見を持ち、ちゃんと謙虚でもある、でも間違いも犯す。そうした内面の豊かさが、彼女の肉付きの良いふくよかな面立ちに反映されているのだ。それが人間としての彼女を輝かせる。モデルではなく人間として。だから何の説明もなく、その人に目がいくのだろう。
美しさ以上に何を持っているか、その内面がいよいよ問われる時代が来た。

人は、感情の宿った顔に目を奪われる。その人をもっともっと知りたいと思うから

目立つってどういうことか? 目を惹くってどういうことか? もう少し身近な例で考えてみよう。例えばAKB的な一見よく似た制服の女子たちがゾロゾロといるようなアイドルグループにおいて、いつの間にか特定の数人に注目が集中していくあのメカニズムは、一体どこから来るのだろう。あくまで一般論として、今は単に美形だから人気を集めると言う時代ではない。とりわけAKBの場合、リアルに同じクラスにいてもちゃんと会話してくれ、相手にしてくれる女子を選ぶのと同じ感覚なのかもしれないが、人となりがわかる前に、一見して目を惹くメンバーはなぜ目を惹くのか?

もちろんここでも、人とは違う個性そのものが美しい、個性そのものが洗練されているタイプが真っ先に目を惹くのは間違い無いのだけれども、それ以上にこれだけの人数がいる場合に、さらなるフィルターが必要で、それは何かと言うならば、ズバリ喜怒哀楽。4つの感情がどこかに滲み出る顔が、真っ先に目を惹くと考えていい。
つまり歴代のセンターは、基本的にみな喜怒哀楽のどれかの感情を宿していた。前田敦子はちょっとだけ哀しい顔。大島優子は楽しい顔と怒った顔を併せ持ち、渡辺麻友は、喜んでいる顔と哀しんでいる顔を併せ持っていた。あんまり笑わない、ちょっと怒ったような表情がむしろ人気だった篠田麻里子と言う人もいる。そして今、不動のセンターを誇っている指原莉乃の顔は、言ってみれば喜怒哀楽の全てを持っていると言っていい。だからその分だけ人気が根強いのだと考えてもいいと思う。

人が人の存在に目を奪われ、心を惹かれる時、一瞬見ただけでもその存在を記憶し、もう少し見てみたいと思う。つまりその人のことをもっと知りたいと思うわけで、ここでいう目を惹く人とは、すなわち“相手の関心を惹く女”と言うことになる。その人の背景やその人の心情
を、もっと知りたいと思わせる女。そういう引力を持つためには、どこかに感情のニュアンスを持つことなのだ。それが映画の予告編のようにチラ見せで、その人を語るから続きを見たくなる。そうした顔が瞬間的にも、まったりと相手の記憶に絡み付くと言うことなのだ。

今年も大活躍だった有村架純と言う人は、決して派手なタイプではない。正直言って、割と身近にもいそうなタイプ。にもかかわらず一度見たら忘れられなくなる顔でもある。彼女の背景をもっと知りたいと思わせる顔…。
なぜならばこの人の顔立ちは、微笑みと悲しみが一緒にその愛らしさの中に溶け込んでいる。とても清楚で小づくりの顔なのに、極めて抒情的。だから大勢の中でも1人目を引く。そして、芸能関係者が言っていた。そういうふうに、ハッと目を惹く引力を持ったタイプは、必ず際立った才能を持っていると。やっぱり才能が目を惹き心を奪うと言うことなのか。人間が人間に対して持っているカンは、決して侮れない。目を惹くべき価値のある人間がちゃんと目を惹くのだから。つまり派手さに目が行くのではない、結局“優れたもの”に目が行くのだ。例えばブティックに入って真っ先に目を惹くのは、ただただ派手な服より、素材と仕立てが上等な服だったりするように。

逆から言えば、人は自分の才能を見て欲しいからオシャレをし、美容をする。そうして瞬時に相手の心に絡みついて、自分と言う女に関心を持って欲しいからこそ、女は存在を輝かそうとするのだろう。単に美しいだけでは無い、自分と言う女の才能や、人としての魅力に気がついてもらうために、女は女を磨くのだ。それを忘れずに、今日も鏡の前に立ちたい。正しく目立つ女になるため。

 

美容ジャーナリスト/エッセイスト齋藤薫女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、『The コンプレッ クス 幸せもキレイも欲しい21人の女』(中公文庫)など多数。

美的2月号掲載
文/齋藤 薫 イラスト/緒方 環 デザイン/最上真千子

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