志尊淳&町田啓太のコンビをいつまでも見ていたい! 『女子的生活』が描いた“他者との距離”

「あなたをより深く知ることは あなたとの心地よい距離を生み出す」

志尊淳演じるトランスジェンダーの主人公・小川みきの、“架空の格言”ナレーションから始まる『女子的生活』(NHK総合)。人が生きていくためにどう他者と距離をとっていくか、どうやって他者と一緒に生きていくのか、そしてどう自分自身を受け入れるのか。1月19日放送の第3話は、みきと町田啓太演じる後藤の姿を通して、多くの人が抱えるそれらの悩みにひとつの答えを提示したように思う。

みきが働くファストファッション会社のある商品が、デザインを盗用したものだと判明する。みきは元のデザイナーの許可をもらうべく住所を聞き出すと、そこはみきの地元・香住。心が「女性」であることを認めようとしない兄・敏生(鈴木裕樹)と父(本田博太郎)から逃げるように、距離をとって生きてきたみきにとって、決して戻りたい場所ではなかった。

仕事のため気持ちを押し殺し故郷に戻ってきたみきは、デザイナー・柳原(前田亜季)相手に巧みな会話術で交渉を進めていき、問題なく許可をもらう。柳原は、母(山村紅葉)から“こうあるべき”という理想を押し付けられ、その期待に応えることができず、「私なんか…」と繰り返す自分の存在意義を感じることができない女性だった。その姿を見て、かつて兄から受けた言葉がみきの脳内に鳴り響く。「お前さ将来どうすんだよ? こんなちゃらちゃらした服着てさ。恥ずかしいんだよ」。兄から罵倒され、存在そのものを否定される「幹生」としての回想シーンは、現在のキラキラ輝く強いみきの姿を見ているからこそ、いたたまれない辛さがある。

みきは柳原に「家族と距離を取ることで私は救われた。生きているのにお互い“思い出”みたいな存在になって」と語る。実際、距離を取ることで、「幹生」から「みき」として生きることができたわけであり、その選択は間違いではなかっただろう。近くにいるからこそ、ぶつかり傷つけ合ってしまうこともある。しかし、最も身近な他者である家族に、理解をしてもらえないまま離れることほど悲しいこともない。

モヤモヤした気持ちを抱えたみきが帰路につこうとするところに現れたのは後藤。「意味分からないんだけど」と言いながら、みきはホッとした表情を見せる。みきの心持ちと同様に、後藤が登場した瞬間、それまでの張り詰めた空気感から一瞬で画面の空気も和むから不思議だ。みきが相手が何を考えているのか、何を求めているのかを考え、他者との距離を十分すぎるほど測るのに対し、後藤はあるがまま、思うがままに、他者と距離を測るということをまったくしない。平穏な日々を送るためには、みきの距離感の測り方が必要と言えるだろう。しかし、適切な距離を保つ≒離れるということは、既存の関係性をそこで終えてしまうということでもある。後藤のように近づき過ぎてこそ、初めて構築できる人間関係もあるのだ。

少々勝手ともいえる振る舞いながら、相手の懐に踏み込むことで、後藤はみきの家で同居することになった。みきも後藤に感化されたこともあってか、偶然遭遇した父と兄にその本心をぶつける。家族と言えども、その心はぶつけてみないと分かり合うことはできない。みきは兄と仲直りをしたわけではなかったが、互いに遠ざける“思い出”としての存在ではなくなる(直後に誰よりも早く泣いている後藤の姿も最高だった)。数年ぶりにふたりが家族としてつながった瞬間だ。帰りゆくみきに父は声をかける。それまでの「幹生」から「みき」と。子の幸せを思う父の心、初めて「みき」として父に受け入れられた姿には、思わず涙してしまった。

それにしても、なんと志尊淳と町田啓太のコンビが魅力的なことか。互いの足りない部分を補うように、成長していくふたり。第3話最後のカニ鍋を食べるシーンの多幸感には、見ているこちらも微笑まずにはいられなかった。次週、早くも最終回、ふたりの姿を目に焼き付けたい。(石井達也)

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