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天才脳に育てたいならこれ! 脳のプロがわが子に与えたのは…【16万人の脳画像を見た脳医学者の子育て①】 

  • 2017.12.28
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2016年出版の『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文嚮社)が10万部を超えるベストセラーになった脳医学者・瀧靖之先生は、5歳の息子を子育て中のお父さん。16万人の脳の画像データ診断をした経験から、賢い子どもを育てる秘訣は「好奇心」にあると考え、自ら「好奇心を育てる子育て」を実践中です。

瀧先生によると、好奇心は脳の最高の栄養素。そして子ども時代だけではなく、生涯を通して健康な脳を維持して幸せに生きるための秘密兵器と言えるそうです。

どのような子育てをすれば子どもの脳が育つのか、仙台の東北大学加齢医学研究所にお邪魔して、瀧先生にお話をうかがいました。

■好き嫌いが生まれる前に、いろいろなことに触れて「脳の道路工事」を
─ 著書で人間の脳を道路工事に例えられていましたが、イメージがわきやすかったです。脳はまず工事をしてどんどん道路(ネットワーク)を拡張した後に、今度は使わない部分をどんどん壊していき、脳の効率を上げるんですね。

赤ちゃんの頃はあらゆる物に興味を持ちます。石や草など何を見ても反応している時期がありますよね? 脳内では道路工事(ネットワークづくり)をさかんに行って道路を拡張していきます。しかし、次第に興味を持つ対象が限定されていき、「使わない部分」が出てくるとそれを壊して、脳を効率的に使うようになります。

─ まだ個人的な好き嫌いが出ていない時期、つまり使わない道路が増えないうちに、いろいろなことに触れておくことが大切なのですね?

一度どこかで触れておくと、中学や高校で同じ経験をしたとき、それがすっと入ってくるんですよ。これはまさに親密度というか。物事って最初になんでも見たり聞いたりする時は障壁がありますが、小さい頃に一度触れておけば、成長してからもずっと楽に理解できます。

─ なるほど! 一度触れておけば、忘れているように見えてもどこかに残っているんですね。

そうです。だから子どもの頃にたくさんのことに触れておくことが大切です。

■好奇心を育てるには「図鑑」が一番という理由
─ 好奇心が賢い子どもを育てると考え、好奇心を育てるのに瀧先生は図鑑を特にすすめていらっしゃいますね。

図鑑のいいところは、いつ見ても新発見の宝庫であるところです。何歳になっても図鑑は好奇心を刺激してくれます。

─ 先生は赤ちゃんへのプレゼントにも図鑑をおすすめしています。

図鑑は動物や虫、鳥、星など身近な自然科学のテーマが多く、自然はどこまでも奥深いからです。

例えば、恐竜だって単に名前を覚えるだけではなく、ジュラ紀や白亜紀といった時代、その中で肉食恐竜がどうだったか、アジアからアフリカにわたったらしいとか…好きになるともう知りたいことはいくらでも出てくるんですよ。どうやって恐竜に羽毛が出てきて、そこから鳥類に進化したとか、もう無限です。

ゲームやスマホは面白いので一度はどの子どももハマりますが、自然は人間の作ったものより深いことにいずれ気づきます。ゲームにハマる前に自然科学に触れさせておけば、自然の面白さに必ず戻ってきます。

■子どもの脳を育てるのは、バーチャルとリアルが結びついた時のワクワク
─ 図鑑で見た電車を実際に見に行くなど、本の知識を実際に確かめる体験をすすめていらっしゃいますね。

大切なのは、バーチャル(本などで得た知識)をリアル(現実の体験)と結びつけること。電車図鑑を買って読んだ後は実際に電車を見に行く、深海魚図鑑を見たら博物館に行くなどです。

「これが本で見たあれなんだ!」とバーチャルだった知識がリアルな体験に結びつくと、子どものワクワクは大きくなり、「知ること」が楽しくなって、どんどん知りたくなります。

─ そして、バーチャルとリアルを結びつけるには、時には道具を使うのがいいんですね。どのような道具がいいのでしょう?

虫が好きな子どもには虫取り網、星が好きな子どもには天体望遠鏡などです。必ずしも必要なわけではありませんが、道具があることで子どもがより熱中することもあります。

子どもが図鑑で夢中になっているものをもっと楽しく体験させてあげたい。そのために何か道具が必要かな。そうやって親が一緒に考えてあげるのは、とてもいいことだと思います。

■まずは身近なテーマから、初めての図鑑選び

─ ちなみに、本屋さんに行くと図鑑がたくさん並んでいます。どうやって選べばいいでしょうか?

親でも子どもでも興味を持つものがあれば、どんな図鑑でもいいと思いますが、子どもって身近にあるものに興味を持ちますよね? 虫、動物、魚、植物など身近にあるものから始めるのがいいのではないでしょうか。

─ 子どもが生活の中でも出会いやすいものからですね?

そうですね。ただ子どもって不思議なものが大好きなので、恐竜とか深海魚とか、そういうものでも子どもが興味を持ったらいいと思います。ただ身近なものの方が親も関わりやすいし、バーチャルとリアルを結びつけやすいですよね?

─ ウェブでもいろいろな情報が見られますが、やはり紙の図鑑がいいのでしょうか?

ウェブはまだ年月が経っていないので難しいところですが…。パっと見ていろいろ調べられるところはウェブのいいところです。逆にいろいろなところにリンクで飛べるので、注意散漫になり、集中して見るのが難しい、というような意見もありますね。

─ ウェブは、子どもの好きなものへの気持ち、好奇心が育ちにくい面があるのですか?

まだはっきりとはわかってはいません。ただ一長一短なのは確かです。紙の図鑑は重すぎて出かける時に持って行けないから、そういう場面ではウェブの図鑑を利用すればいいと思います。だけど、目が疲れず、必要のないページに飛ぶ心配がない、注意散漫にならない、というのが紙の図鑑のいいところですね。

─ やっぱり好きなだけ集中する、というのがものすごく大事なんですね?

熱中体験は重要です。僕自身、家の隣の空き地で蝶取りをしていたのが、全ての原点になっていますから。

■子どもの好奇心を広げて伸ばすのが親の役目
─ 親は図鑑を子どもに与えて好奇心が芽生えるきっかけを作り、その後はどうすればいいのでしょうか?

例えば、恐竜が好きな子どもには恐竜だけで終わらせるのではなく、そこから爬虫類や鳥類に興味を向けさせたりしましょう。恐竜は鳥類が進化したもので、そこから脊椎動物や哺乳類へ…といったように、親が子どもの興味や知識を広げてあげるといいですね。子どもは物事をふかんして見られないので、そこは親が背中を少し押してあげましょう。

─ 先生のご両親も図鑑で好奇心を育てる子育てを実践されていましたか?

うちの親のいいところは図鑑を惜しまず買ってくれたことですね。「図鑑を買ってほしい」と言うと、それだけは買ってくれました。読み終わって次のが欲しいと言ったら、また本屋で買ってくれて。

それでどんどん知識が広がり、親の書斎にあった百科事典も見るようになり、もうボロボロになるまで読みあさりましたね。

─ 同じことを今、5歳の息子さんもなさっているんですか?

うちの息子も漢字をルビなしで読みます。それは、漢字の勉強をしたわけでもなんでもなくて、単に図鑑を読んでいると漢字が目に入ってくるから、嫌でも覚えちゃうんですよ。それこそ究極の勉強。私から見てもびっくりするような文章をルビなしで読みます。やっぱり好きだから覚るんですね。

─ 最初の頃は先生が読み聞かせをしていたんですか?

いやいや。ルビがある普通の図鑑を読んでいるうちに、大人が読む百科事典のような図鑑を一人で読み始めて。それこそ僕が父の書斎でやったみたいに、うちの息子も僕の書斎に入ってきて、本当はあまり折り目をつけて欲しくないような大切な本も勝手に持ち出して見ています(笑)。

─ そういう意味では「子どもには子ども用とは思わないで、興味を持ったらどこまでも」ですね。

子どもの興味、好奇心をどこまでも突き抜けさせるべきです。子ども用でごまかしてしまったら、「世の中こんなものか」と子どもも感じて面白くなくなってしまいます。ルビがあろうがなかろうが関係ないんです。うちの子もなんだか難しい本を買っていますよ。

─ 先生ご自身も子どもの時に読んだ図鑑が後の勉強に役立ったとか?

僕も幼稚園の時に図鑑を読みあさっていたので、中学生で惑星などの勉強になった時、「幼稚園の時に覚えたことを、なんでこんなに大きくなって、もう1回やるんだろう」って不思議なくらいでした。

受験勉強も、すでに小さい頃に覚えたこと、理解したことにいろいろ肉付けしていくだけですみます。数学はちょっと異なりますが、自然科学、歴史、地理などは子どものうちに頭へ入れておくと、その教科で出てくる言葉への親密性が高くなります。

─ うちの子はもう小学生ですが、今すぐ図鑑を買いたくなりました。

早ければ早い方がいいですが、何歳からでも大丈夫。遅すぎることはありませんよ。新しい情報に触れれば、脳は何歳からでも刺激を受けて成長します。

第一線で脳科学の研究をしながら、自ら「好奇心を育てる子育て」を実践されている瀧先生。脳はそれぞれのエリアの働きに適正な時期があり、好き嫌いが出る前にいろいろなことに触れておく大切さを実感しました。

今赤ちゃんを育てている方はぜひ、この「図鑑で好奇心を育てる子育て」を試していただきたいと思いました。2000円~3000円する図鑑は決して安くはありませんが、いろいろなことに好奇心を持てる子どもが育つのなら費用対効果は十分に感じます。

すでに子ども2人が小学生の筆者は、「もっと早く知っていれば」と後悔する反面、「何歳からでも遅くない」という先生の言葉を励みに、今日からできることを実践していこうと早速図鑑を購入してみました。

瀧靖之 プロフィール
1970年生まれ。医師。医学博士。 一児の父。
東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長・加齢医学研究所 教授。
東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めている。『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)は10万部を超えるベストセラーに。

編集協力:「#のびるこラボ」 株式会社ベネッセコーポレションが運営している、誰でも参加できるFacebookの公開グループ。「伸びる子」のヒミツを学者・保育士・専門家と一般の方々とで徹底解明していきます。幼児期に伸ばしたい一生役に立つチカラと自信を育むために親として何ができるか、考えるきっかけ作りをしていきます。

取材・文/まちとこ出版社 石塚由香子


(まちとこ出版社)

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