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キュウレンジャーにようかい体操第一! 「思わず見ちゃう」天才振付師の「子ども力」レッスン

  • 2017.11.27
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「ようかい体操第一」や「宇宙戦隊キュウレンジャー」、NHKの「いないいないばぁっ!」や「にほんごであそぼ」など、数々の子ども番組でヒットを生み出している、天才振付師ラッキィ池田さん。その驚きの発想術を、著書『「思わず見ちゃう」のつくりかた 心をつかむ17の「子ども力」』(新潮社)で明かしてくれました。

それによると、ヒットメーカーたちの発想術に共通するのは、「子ども力」にありとのこと。「子ども力」とは、子どものように自由な発想力を持って、やりたいことを突き通し、新しい扉を開ける力のことです。

永六輔さんや岡本太郎さん、秋元康さんなど、ラッキィ池田さんの周囲にいる、人の心をわしづかみにするすごい仕事を成しとげている人たちは、みな、その「子ども力」を持っているといいます。

本来、すべての子どもが持っているはずの「子ども力」。大人になっても失わず、上手に育んであげるために、親としてできることは? お話をうかがいました。

■子育てはすべてを楽しくリニューアルできる最高のチャンス

――著書を読んで、正直最初は、働く大人向けの内容だと思いました。でも、角度を変えてみると、子育てにも役立つヒントや大切なお話がいっぱいあって、子育て中の身としても非常に面白かったです。

ラッキィ池田さん(以下、ラッキィ):子育てって、すべてのことを楽しくリニューアルして面白く生きる最高のチャンスですよね。僕も含めて大人にとっては、今この社会にあるモノって、それがあることが当たり前だからあまり疑問を感じないけど、これから生まれて育つ子どもたちにとっては、すべてのことがはじめて。だから、すべてのことに「なんでだろう?」って疑問を持ちます。それを、ママとパパが一緒になって考えてワクワクしながら体験すると、非常に面白い発見がいっぱいあると思いますよ。

――親も、子どもと一緒になってワクワクすることが大切なんですね。

ラッキィ:例えば、僕の仕事関係の話でいえば、宝塚。ご存じでしょうけど、あの劇団は女の人しかいません。でもこれって、ちょっとひいた目でみると、すごく異常な世界じゃないですか? きっと子どもが見たら、「どうして女の人が男の役やってるの?」とか「なんで大きな羽根つけてんの?」っていう質問がいっぱい出てくると思うんですよ。

それを、「宝塚はそういうものなの」で片づけるんじゃなくて一緒に考えてみる。なぜ宝塚には男の人がいないのか? そもそも宝塚の魅力は何なのか? って一つ一つ。そうすると、宝塚の魅力が再発見できてもっと楽しめると思うんですよね。

――恥ずかしながら、私は「そういうものなのよ」で片づけちゃってた方かもしれません(汗)。

ラッキィ:ちなみに、僕が思う宝塚の魅力って、女が男を演じることによって成立する、一つのカオスの世界。ポンと飛べる瞬間っていうのが宝塚にはあって、どんなリアルな男の俳優がやっても、宝塚の男の俳優の嘘にはかなわないんですよ。

――なるほど…。私も宝塚は好きですが、「よくわかんないけど理由なしにかっこいい!」という程度で、そこまで深くは考えていませんでしたね(苦笑)。大人が子どもの疑問に対して、一言で片づけちゃう時って、自分でもよくわかってないことが多いような気がします。でも、それでは示しがつかないから、子どもの疑問にフタをしてごまかしてしまう。

ラッキィ:それはもったいないことですよ! これって、スマホに例えてみるとよくわかるんだけど、スマホって何かをインストールしないと何も開かないですよね? いろいろインストールすることによって、はじめて、映画が観れるようになったり音楽が聴けるようになったりする。これって、人間でも同じなんです。

――人も、どんどんインストールするってことが大切ということですか?

ラッキィ:例えば、感情についていうと、ある時「なるほどそうか! お年寄りってそこがさみしいところなんだ」って感情がインストールされた瞬間、すべてのお年寄りに声をかけられるようになったり。逆に、電車ではお年寄りに席をゆずる必要があるとインストールされてない人は、どんなお年寄りが近くにいてもまったく無関心だったりする。インストールする前ってゼロの状態なんで、とにかくわからないんですよ。

――まだ経験が少ない子どもは、インストールされていない状態と同じということ?

ラッキィ:そうです。子育てって、まずそれに自分も気づき、子どもと一緒にさらにインストールしていく最大のチャンス。例えば、子どもと一緒に公園に行って「今日は何があるんだろう? 何をして遊ぼう?」っていうことを一緒になって対等にワクワクする。そうすると、すべてのことが楽しくリニューアルされて、常に面白く生活できると思いますよ。

■好きなことはとことん! 親がコントロールしようと思わない

――でも、親(私?)って、一緒にワクワクするどころか、つい現実的になって、「子ども力」を削ぐようなことをしがちです。例えば、先日もママ友と話していて、子どもが「サッカーがもっとうまくなりたいから毎日練習する!」と言った時に、お母さんは「熱中するのはいいけれど、将来サッカーで食べていける人なんてほんの一部。少しはほかの勉強もしてほしいのに…」とこぼしていました。この気持ち、ちょっとわかる気もしますよね。

ラッキィ:大切なのは、その子がサッカーそのものをいかに楽しむかということ。その子はただ楽しいから打ち込んでいるだけであって、将来プロサッカー選手になってお金を稼ぐことが目的じゃないと思うんですよ。

たとえプロになれなくても、サッカーに打ち込んだ経験がある人は、テレビの試合観戦の楽しみ方ひとつとっても、ずっと豊かになるはず。「あのタイミングであのパスはすごい!」とか「このフォーメーションできたか!」とか、まるで自分がフィールドに入ったつもりで楽しめると思うんです。この感動は、やってない人には絶対わからないよね。

――確かに。私はサッカーをしたことがないので、日本でワールドカップが開催された時も、「日本が勝った」とか「あの選手、イケメン!」程度にしか楽しめませんでした。サッカー好きの友だちが、監督の采配や選手の動きを解説者のように語って大盛り上がりしているのが、正直うらやましかったです。

ラッキィ:好きなことは、本人が「やっぱり俺、もう無理だわ」って言うまで、好きにやらせればいいと思いますよ。たとえ、自分が下手なのを気づかないでずっとやっていたとしても、真剣にやることで必ず何か得るものがあると思いますよ。スポーツに限らず仕事でも趣味でもなんでもね。

――変に、親がコントロールしようと思わないことですね。

ラッキィ:演劇の世界でもそうなんだけど、演出家が俳優を全部自分の色に染めていこうとすると、その人のやりたいことをやってるだけになって、どんどん狭まって、結局つまらなくなっちゃうんですよね。それよりも、僕が好きなのは、セットも何もなくて、お面だけつけてやっているような、子どもの発表会みたいなの。観る側のイマジネーションをどんどんかき立ててくれるんですよ。これって、子育てでも同じことがいえるんじゃないかな?

■間違いを好んで求めよう! カオスの中でしか新しいモノは生まれない

――話はちょっと変わりますが、「子ども力」がなくなっているのは大人だけではなく、子どもにも感じています。例えば、最近では低学年の子たちですら、授業中にあまり手をあげないそうですよ。「こんなこと言ったらみんなに変に思われる」とか「間違えたら恥ずかしい」って。高学年になると、もっとそうなっちゃうみたいです。

ラッキィ:そういうクラスは、多分、先生が「間違い」ってことを決めつけがちなんじゃないかな? まずは、間違いを認めてあげることが大切。子どものキャパシティって、間違えをしていくことによって、どんどん広がっていくんだと思います。子どもが間違えたら、「その答えいいね! なかなかたどり着かない!」って、座布団1枚あげるくらいのことをやってあげましょうよ。

――なるほど。そうやってほめられれば、間違うことも全然恥ずかしくなくなりますよね。

ラッキィ:消去法で答えをどんどん消していっちゃったら、イマジネーションなんてわきませんよ。そしたら、どんどんつまんない社会になっちゃう。今、社会が成熟して、どんどん子どもが減って縮小していますが、それを打ち破るには、間違いを好んで求めることしかないと思うんですよね。

――著書にも、「振り付けを制作する過程で一番大切にしていることは、ERROR=エラー」「子どもの正義を呼び起こすのは、ERROR=エラー」とありましたね。

ラッキィ:子どもの間違いを好んで求めるって、親や先生からしたら面倒くさいことだと思いますよ。でも、そのカオスの中でしか新しいものは出てこないし、「いいこと(正解)」ばかりでは正義は育たないんです。だから、僕は、非常にエラーを大切にしています。失敗してもいいから、親も学校の先生も、子どもの好きにやらせてみましょうよ!(笑)。

――あんまり好きにやらせて、暴走したり学級崩壊したりしませんか?

ラッキィ:いえいえ、それが不思議と、必ずあるどっかの到達点で、崩壊せずに良い方向に向かってまとまるっていう瞬間が来るんですよ。親や先生がそこを信じてさえいれば。信じずに、「こいつらを世に出してはいけない」っていうふうにやってると、間違いなく学級崩壊しますけどね(笑)。

――大人の力量も試されますね。

ラッキィ:映画監督でも、ある一線を越える判断っていうのは非常に難しいんです。だから、みんな、その一つ下の成功を求めて、なんとなく無難なところにおさめちゃう。でも、それだと新しいモノは出てこない。それを打破するには、一回ぐちゃぐちゃにして、それを良しとしていく突破口が必要なんです。

――どんどん失敗してぶっ壊す…! なかなか勇気がいることですね。

ラッキィ:学校では難しいかもしれないけど、僕は、むしろ今は、そういうことができるチャンスの時代だと思っています。大企業も頭打ちで、何がどうなっていくのかわからない。みんな手探りで一つ一つ打破していっている状況ですからね。

これまでのやり方ではない方向に変えていく、すごくいいチャンスです。個々のエネルギーが伸びていく力が必要になって、既存のメディアに頼らず発表したり創作したり、会社をおこしたり、自由な世の中になると思うので、こんないい時代はないと思いますよ!

――今までのやり方にとらわれず、頭を柔らかくして、新しい方向へ…。

ラッキィ:大人が唯一子どもに勝っているのは、経験です。だから、ついそれを押し付けがちになるけど、自分たちのたかだか何十年の経験を、子どもに押し付けないでほしいですよね。だって、必ずしもそれが正解ではないのですから。

例えば、私たちの親世代に良しとされていた生き方が、今、通用していますか? もちろん、経験として話すのは良いですよ。でも、それよりも大人がやるべきことは、子どもと一緒になって考えていくことだと思います。これからの未来を創るのは、子どもたちにしかできないことなのですから。

子どものような自由な発想力や、大人の事情にとらわれずそれを突き通す力である「子ども力」。その重要性を説いた本は、これまでもあったかもしれません。でも、その「子ども力」の大切さをうったえるにあたって、ラッキィさんほど説得力のある人はいないと思いました。

なぜなら、実際にお会いしてお話を聞いて、ラッキィさんは存在そのものが「子ども力」の塊のよう。魅力的なお人柄で、さまざまな方面で生き生きと楽しそうにされています。ラッキィさんのお話を通して、なくしかけていた「子ども力」を、私も、ほんの少し取り戻せたような気がしました。

「思わず見ちゃう」のつくりかた 心をつかむ17の「子ども力」(新潮社)

「大人の事情」や「過去の慣例」にとらわれずヒットを生み出すには、子どものような自由な発想=「子ども力」が必要。小さな子どもから大人にまで通じる、この力の引き出し方・伸ばし方を綴った一冊。 振り付けを手がけたAKB48のプロデューサー秋元康、舞台「カンコンキンシアター」を主宰する関根勤、24年半の間ラジオ番組で共演した重鎮・永六輔などのヒットメーカーたちの「17の成功発想術」を紹介。

ラッキィ池田 プロフィール
1959年生まれ。80年代より独創的な発想の振り付けが各界の注目を浴び、これまでテレビ番組、CM、映画、舞台など数えきれないほどの作品を手掛ける。近年はアニメ『妖怪ウォッチ』の「ようかい体操第一」「ゲラゲラポーのうた」が子供たちに爆発的な人気となる。現在、NHK、Eテレ『いないいないばぁっ!』『にほんぼであそぼ』の振り付けをレギュラーで担当する他。作詞、雑誌連載、吉本総合芸能学院(NSC)講師など多彩なシチュエーションで活躍中。

取材・文 まちとこ出版社N


(まちとこ出版社)

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