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【男から見た結婚のリアル】第6回 毛を逆立てているネコのスタンプが送られてきた

  • 2017.10.28
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気づいたらなんとなく結婚しましょうかということになっていたので、ぼくは彼女に対していわゆる正式なプロポーズというものをしたことがありません。
で、「プロポーズなしの交際とか結婚というのも、この世にあるんだなあ」と、しばし感慨にふけっていたら、彼女が「正式なプロポーズはいつでもいいからしてね」と、こうきたもんだ。

「通帳を見せてください」って…

先日、テレビ東京の「通帳を見せてください」という番組を見ていたら、ある日いきなり30万円引き出している彼氏の通帳を見た彼女が、「この30万円って、なにに使ったの? キャバクラ?」と言っていました(今時、キャバクラで30万円も使えないですよね…レミーマルタンの時代じゃないんだから)。
実際には、彼が彼女に交際だか結婚だかのプロポーズをしたときに、指輪だかなんだかを買った費用だったらしいのですが。

こういう彼氏がいるということは、「プロポーズはしかるべきお金をかけて、しかるべき手段を踏んでお願いします」と思っている女子がいるということで。
そういう女性がいる一方で、正式なプロポーズなしに結婚となったぼくは、「世の中には非常にものわかりのいい女性がいるもんだな」と、なかば彼女のことを尊敬していました。
結婚式やそのあとの生活を思えば、お金などいくらあっても足りないんじゃないかと思えるほどで、プロポーズが0円で済んだというのは、なんて合理的な考えの彼女なんだろう…もう少しお金をかけてもいいから、非合理的なプロポーズをしてもよかったかな。テレビ画面に映る他人の通帳を見ながら、ぼくはこう思っていました。
この、ぼくの気持ちを見事に見抜いたのが、ほかでもないぼくの嫁候補。通帳を見せるから、おれの表情を見るなよな、とも言えないしね。

毛を逆立てているネコのスタンプが返ってきました

彼女はしれっとぼくに言いました。
「できればサプライズ感のある正式なプロポーズをしてほしい」と。
だからぼくはある日、彼女とLINEで何気ないトークをしているときに「結婚してください」という文章を送りました。
何気ないトークのなかに「結婚してください」という一文を混ぜると、サプライズ感が出るプロポーズになりえると考えたからでした。
ソッコーで、毛を逆立てているネコのスタンプが返ってきました。ネコの絵に、ご丁寧に「シャー」という擬容語がついているスタンプでした。
少しばかり反省したぼくは後日、彼女への「おはようメール」のあとに「結婚してください」と送りました。
しばらくして「ケンカ売ってる?」という、非常にシンプルなお返事が返ってきました。とても静かな、神聖な朝の出来事でした。
ぼくにだけなんらか致命的な欠陥があるのか、世の多くの男たちにも共通する欠陥なのか、よくわからないのですが、ぼくにはサプライズを演出する方法がよくわからないのです。
わかるかわからないか、で言えば、おそらく「調べるとわかる」のだろうと思います。
ググればいくらでも答えが出てくる時代、「調べるとわかる」。

シャー!

でもどこかしら気恥ずかしいのです。
サプライズってたとえば、しんとしたレストランでいきなり明かりが消えて、ハッピバースデーが流れて、火を灯したろうそくが立てられたスイーツのプレートが運ばれてきて、多くの店員さんがテーブルの周囲を取り囲み、なんならそこに居合わせたお客さんもハピバを歌って、歌い終わって店内に明かりが戻ると、ぎこちない表情になっているお誕生日の人がいるあれのことでしょ? たとえばこれがサプライズでしょ?
こういうのを彼女は望んでいるのだろうか?
彼女が言う「サプライズ感のある『正式な』プロポーズ」って、なんだろう?
ハピバみたいに強烈なやつじゃなくとも、レストランで食事をしている途中に指輪を渡すことか?
と思ったところで、彼女はかなり強烈な金属アレルギーときたものだ。こっちが毛を逆立てているネコのスタンプを送りたいくらいだ。シャー!(ひとみしょう/文筆家)

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